第零夜『変わり始めた僕の日常』
「ほむ……いや、ふむ、紫が結構偉い妖怪だっていうのは分かった。」
悠がそういうと八雲は急に隙間(というものらしい)に上半身を突っ込んだ。消えた上半身は悠の胸元に現れしなだれかかる。
「そうなのよ。私は偉いし凄いのよ。揺光よりも……ねっ。」
美女妖にサンドイッチ状態の悠だが、揺光は気にいらなかったらしくモフモフの尻尾が鞭のように八雲を打とうとした。しかし、間一髪のところで八雲の上半身は元の位置に戻った。後に残った悠に尻尾が直撃する。バチンっと竹ぼうきの先を思い切りぶつけたような音がした。あの尻尾見た目とは裏腹に痛いらしい。悠はちゃぶ台に突っ伏してピクピクと言葉も吐かずに悶絶していた。
そんな可哀想な悠を無視して八雲はいった。
「福太郎に忠告したのはアナタが幻想に近い存在になっているからよ。人との関わりを持たずに自身の生を放棄しようとする。本来ならそういう人間は幻想流しにして野良妖怪に食われるか、野垂れ死にさせてもいいんだけど……アナタの事を大事に思う存在があった。ひとつはその猫、もうひとつは悠よ。まぁ、まさか悠が関係してるなんて予想も出来なかったけど……」
俺は頭をかいた。誰にも迷惑をかけずに生きて来たつもりが、こんな近いところで一匹とひとりに支えられていたらしい。突っ伏していたまま悠がいった。
「じゃあ、もういいんじゃないか。おれは福太郎のことを友達と思ってるし、消えられたら悲しい。十分必要としているだろ」
誰かにこんな風にいわれたのは初めてかもしれない。俺は何もいえずに事の成り行きを見守った。八雲は腕を組んで俺を見つめる。
「……そうね。今の状態なら彼が消えることはとりあえず無いわ。けど、アナタの背負った業は無くならない。何のことかは分かるわね」
俺は頷いた。
「悔い改めろってこと?」
「そうね。それもいいかもしれないけど、身体で業を清算してもらおうと思ってるの」
「……身体で清算?」
「都市伝説って知ってる?昔でいう怪談を現代風にいうと都市伝説っていわれてるでしょ?そういう存在もね最近幻想郷に流れつつあるの。人が伝えなくなってしまってるから。都市に広がった伝説があるからそういう怪奇が現代にも存在できる。人々から忘れ去られれば消滅する……もちろん、幻想郷にはやって来れるわ。だけど、さっきもいったとおり幻想郷もバランスが大事なの……」
都市伝説……確かにネットなんかでは沢山そんな物もあるが大半はデマや作り話と皆割切って知っている程度だろう。それに下手したらそこに突っ伏している男の方がよっぽど動く生の伝説だ。俺はいった。
「はぁ……いうてる事はわかるんやけど、それがなんですのん?」
彼女は微笑む。つき合いは短いが何か良からぬことを考えている笑顔だと俺の中の誰かがささやいた。
「アナタに都市伝説を生かし続けて貰いたいの。世界に噂を広めろとか、都市伝説の異形をを真似て人を襲えとは言わないはアナタが都市伝説を見つけて記憶して心にとどめるの。そうしただけで都市伝説は存在し続けれるから」
「ちょ、ちょっと待ってください。俺は霊感とかそういうもんないで?」
「それは大丈夫。アナタは霊感は無くても「対話」できる力を持っているもの。結構貴重な能力よ。それ、もし話しをする気持ちがあれば言語を超えてあらゆるものと対話できる。対話って凄いことなのよ?言葉には言霊が宿る。対話を繰り返していけば……とてつもない霊能力者になることも夢じゃないわ」
いきなりスケールがでかくなってしまった。俺にそんな大役が務まるだろうか……。悩んでるとまだ突っ伏したままの悠がいった。
「具体的には何をしたらいい?」
「そうね。都市伝説の調査をして、絵に描いて簡単な説明をつけて頂戴。それを幻想郷に持ってきて頂戴。稗田の者に記録させるから」
つまり、こっちで都市伝説を調べて資料にして、あっちの誰かに渡す。作業……ここで今日何度目か分からない疑問が浮かんだ。
「質問、どうやってこっち(幻想郷)に来たらええん?」
「それに関しては夜中の二十三時五十九分から一分だけ。こっちとあっちをつなぐ道が繋がる出入り口を作ってあげる。そうね……あ、この絵がいいわね。」
八雲は俺が描いた絵の中からトンネルの入り口を描いた風景画を選びぬいて、何か紙(カード?)をその絵に貼り付けると紙はずぶずぶと絵の中にめり込んでいった。そして、その絵を壁にかけていった。
「はい、出入り口完成しました。これでバッチリよ」
うちの中に異次元の入口が完成してしまった……。っというか、もう働かせることは決定済みらしい。
悠がそういうと八雲は急に隙間(というものらしい)に上半身を突っ込んだ。消えた上半身は悠の胸元に現れしなだれかかる。
「そうなのよ。私は偉いし凄いのよ。揺光よりも……ねっ。」
美女妖にサンドイッチ状態の悠だが、揺光は気にいらなかったらしくモフモフの尻尾が鞭のように八雲を打とうとした。しかし、間一髪のところで八雲の上半身は元の位置に戻った。後に残った悠に尻尾が直撃する。バチンっと竹ぼうきの先を思い切りぶつけたような音がした。あの尻尾見た目とは裏腹に痛いらしい。悠はちゃぶ台に突っ伏してピクピクと言葉も吐かずに悶絶していた。
そんな可哀想な悠を無視して八雲はいった。
「福太郎に忠告したのはアナタが幻想に近い存在になっているからよ。人との関わりを持たずに自身の生を放棄しようとする。本来ならそういう人間は幻想流しにして野良妖怪に食われるか、野垂れ死にさせてもいいんだけど……アナタの事を大事に思う存在があった。ひとつはその猫、もうひとつは悠よ。まぁ、まさか悠が関係してるなんて予想も出来なかったけど……」
俺は頭をかいた。誰にも迷惑をかけずに生きて来たつもりが、こんな近いところで一匹とひとりに支えられていたらしい。突っ伏していたまま悠がいった。
「じゃあ、もういいんじゃないか。おれは福太郎のことを友達と思ってるし、消えられたら悲しい。十分必要としているだろ」
誰かにこんな風にいわれたのは初めてかもしれない。俺は何もいえずに事の成り行きを見守った。八雲は腕を組んで俺を見つめる。
「……そうね。今の状態なら彼が消えることはとりあえず無いわ。けど、アナタの背負った業は無くならない。何のことかは分かるわね」
俺は頷いた。
「悔い改めろってこと?」
「そうね。それもいいかもしれないけど、身体で業を清算してもらおうと思ってるの」
「……身体で清算?」
「都市伝説って知ってる?昔でいう怪談を現代風にいうと都市伝説っていわれてるでしょ?そういう存在もね最近幻想郷に流れつつあるの。人が伝えなくなってしまってるから。都市に広がった伝説があるからそういう怪奇が現代にも存在できる。人々から忘れ去られれば消滅する……もちろん、幻想郷にはやって来れるわ。だけど、さっきもいったとおり幻想郷もバランスが大事なの……」
都市伝説……確かにネットなんかでは沢山そんな物もあるが大半はデマや作り話と皆割切って知っている程度だろう。それに下手したらそこに突っ伏している男の方がよっぽど動く生の伝説だ。俺はいった。
「はぁ……いうてる事はわかるんやけど、それがなんですのん?」
彼女は微笑む。つき合いは短いが何か良からぬことを考えている笑顔だと俺の中の誰かがささやいた。
「アナタに都市伝説を生かし続けて貰いたいの。世界に噂を広めろとか、都市伝説の異形をを真似て人を襲えとは言わないはアナタが都市伝説を見つけて記憶して心にとどめるの。そうしただけで都市伝説は存在し続けれるから」
「ちょ、ちょっと待ってください。俺は霊感とかそういうもんないで?」
「それは大丈夫。アナタは霊感は無くても「対話」できる力を持っているもの。結構貴重な能力よ。それ、もし話しをする気持ちがあれば言語を超えてあらゆるものと対話できる。対話って凄いことなのよ?言葉には言霊が宿る。対話を繰り返していけば……とてつもない霊能力者になることも夢じゃないわ」
いきなりスケールがでかくなってしまった。俺にそんな大役が務まるだろうか……。悩んでるとまだ突っ伏したままの悠がいった。
「具体的には何をしたらいい?」
「そうね。都市伝説の調査をして、絵に描いて簡単な説明をつけて頂戴。それを幻想郷に持ってきて頂戴。稗田の者に記録させるから」
つまり、こっちで都市伝説を調べて資料にして、あっちの誰かに渡す。作業……ここで今日何度目か分からない疑問が浮かんだ。
「質問、どうやってこっち(幻想郷)に来たらええん?」
「それに関しては夜中の二十三時五十九分から一分だけ。こっちとあっちをつなぐ道が繋がる出入り口を作ってあげる。そうね……あ、この絵がいいわね。」
八雲は俺が描いた絵の中からトンネルの入り口を描いた風景画を選びぬいて、何か紙(カード?)をその絵に貼り付けると紙はずぶずぶと絵の中にめり込んでいった。そして、その絵を壁にかけていった。
「はい、出入り口完成しました。これでバッチリよ」
うちの中に異次元の入口が完成してしまった……。っというか、もう働かせることは決定済みらしい。