第弐夜『福太郎の不思議な日常』

ー福太郎の部屋ー

クロ「くんくん……」

福太郎「ん?」

クロ「なんだろ」

福太郎「どないしてん?」

クロ「もの凄く微かだけど腐臭がする」

福太郎「腐臭?はて、なんや腐るもんとっとったっけ?」

クロ「いや、そういう感じの腐臭じゃなくて……なんていうか人間の死臭だ」

福太郎「死臭て……すっきー、まさか隙間に死体とか入れてへんよな?」

すっきー『そんな気持ちの悪い事しねーっす!!』

福太郎「……ようよう、まさか人間食べたりとか」

ようよう「おいおい、兄さん、こんな乳飲み子に何言うんだよ」

福太郎「っと、なると……メリーちゃんはちゃうか」

すっきー『ちょ、なんでっすか!!』

福太郎「いや、メリーちゃんはもう悪いことせーへんやろ。したら、どれだけ怖い目に遭うか本人が一番自覚しとるやろうし」

メリー「ぶるぶる……食べられる、食べられる……」

クロ「なんか分かんないけどトラウマってるぞ」

すっきー『よっぽどアレが怖かったんすね』

クロ「なにがあったんだよ」

ドダダダダッ!!

福太郎「わっ……なんや今の音」

クロ「外からだな」

福太郎「ちょっと見てくる」

クロ「うっ……(何か血の匂いがする)」



ー福太郎の部屋の前ー

福太郎「えっ?」

外に出て辺りをうかがうと一階へと繋がる階段にラインが引かれている。真っ赤なペンキを塗装用の刷毛で荒々しくなすりつけたように雑な赤いペイント。それを視線で追っていくと女性が転がっている。うつ伏せに倒れて足はあり得ない方に曲がって、頭の位置から血の溜まりが
広がっていっている。凄惨な事故現場に出くわしてしまったようだ。

悠「おいおい……なにしてんすか」

突然後ろから声がして自分も落ちそうになった。手すりをしっかりと引っ掴んでふり返ると見知った顔。

福太郎「ゆ、悠……」

悠「あっ。福ちゃん、ちぇきー」

福太郎「まさか……悠が?服が血まみれゃし」

悠「へっ?……いやいや、違うぞ!待ってくれ、福ちゃん!はっきりいっとくおれはつき落としてない。勝手に足滑らせて落ちたんだ。それに突き落としたなら血まみれになってるのがおかしいだろ!」

福太郎「せやったら救急車呼ばな」

りんね「あ、あのー大丈夫なんで気にしないでください」

福太郎「アカンやろ……って、うぇっ!?」

りんね「あー、もしかしてお隣さんですか?私富士見りんねっていいます。」

ふり返ると下で倒れていた女性は頭がぱっくりと割れて流血しているが満面の笑みで丁寧にお辞儀をしている。

福太郎「え、えーと……御堂福太郎ですよろしゅう」

りんね「はい、よろしくお願いします♪」

福太郎「悠、一応説明してもらえる?」

悠「あー、おれも不明なことが多いけど」

福太郎「きっと、俺のが今超混乱しとるから」

悠「それでも超クールだな」

福太郎「驚き過ぎてこんな感じになっとるだけやって」

悠「さて、でもどこから説明しようかな」

りんね「あっ、だったら、私のお部屋にどうぞ。お茶入れますから」

福太郎「え?」

悠「……」

りんね「どうぞ、どうぞ、遠慮なく」
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