第零夜『変わり始めた僕の日常』
そして狭い部屋の中で濃厚なメンツによる対談が始まった。俺と紫がちゃぶ台を挟んで対面し、悠はちょうど間に座った。揺光はなぜかべったりと悠の背中に抱きついている。押し付けられた胸が凄い迫力だ。それを気にした様子なく悠がいった。
「じゃあ、えーと、出来るだけ穏便に事を進めたいので……お願いします。まぁ、ただおれもどうしてこんな事になってるか分からないし、超常現象に対するトラブルはまったくの専門外なので悪しからず。それを踏まえて聞きますが紫さんはどうして福太郎を殺そうとする?」
直球的に聞ける悠にキュンとした。対面する彼女はあっけらかんと言う。
「あら、別に私は殺そうなんて思ってないわよ。別に今は人間食べなくても美味しいものは多いし」
今はってことは今までは食べていたのだろうか……怖くて聞けない。俺はいった。
「せやけど昨日いいましたやん。このままやったら消えるって」
「アレはアナタが幻想郷に来ちゃうわよって忠告よ」
「「幻想郷?」」
俺と悠が声を揃えた。俗にいう異世界というやつだろうか……?八雲紫は続ける。
「「異世界」ではないは、アナタ達の住むこの世界と陸続きに存在する世界よ。ただし結界で隔離してあるから、通常は外部から幻想郷を認識することも行き来もできない。その逆に内部から幻想郷の外の世界を認識したり行き来したりも出来無いけれどね。そしてその結界で隔離された幻想郷では「空想の生き物」とされている妖怪・妖精・神霊がいて、もちろん人間も済んでいるわ」
紫は一度そこで説明を切った。質問はあるかと目配せしてくる。俺はとうぜんの疑問をいった。
「せやけど、八雲さん来てるやん。それにルーミアもやし、揺光さんもここにおるやん」
【妾は幻想入りせずとも現代で生きて居れるからの。あっちの住人とはあまり関係ない。八雲紫は旧友で、この者の能力はそういう境界を操れる力を持っておるのじゃ。福太郎は気がついておらぬ様だがこの部屋は今幻想郷と繋がっておる。】
「えぇ……無茶苦茶やん。」
紫と揺光はクスクス、コンコンっと声を揃えて笑った。どうやら彼女らにとって無茶苦茶は褒め言葉らしい。悠がいった。
「それで……なんで福太郎が幻想入りとやらになる可能性があるんだ?動物と話せたりするからか?」
「そうじゃないわ。そのまえに幻想郷の歴史について話しとくわ。」
彼女がいうには、幻想郷は元から隔離されていたわけではなく、多くの妖怪が暮らしていた土地に、それを退治する事を家業としていた人間がやって来て住んでいた辺鄙な土地であった。
しかし、500年以上前、人間の文明の発達と人口の増加により妖怪の勢力が人間に押され気味だったため、境界を操る程度の能力を持つ妖怪(八雲紫)が「妖怪拡張計画」を立案・実行して「幻と実体の境界」という結界を張ったという。
これにより単なる山奥であった幻想郷は、結界の作用により「幻となったものを自動的に呼び寄せる土地」へと変化し、外国を含む外の世界で勢力の弱まった妖怪が幻想郷へ来ることになった。そして明治時代頃に人間の科学文明の発達により妖怪等が迷信と認識され、外の人間により否定されたことで妖怪は弱まり滅亡の瀕し、幻想郷も崩壊寸前だった。
そこで幻想郷の妖怪の賢者が取った策が、幻想郷と外の世界の境界に「非常識」と「常識」を分ける論理的な結界を張り、幻想郷を「非常識の内側」の世界とすることで、外の世界の幻想を否定する力を逆に利用して幻想郷を保つというものだった。この「常識の結界」である博麗大結界が張られたことで、幻想郷は外部から隔離された閉鎖空間となり、今日にまで結界は保たれている。
しかし問題が何一つ無かったわけではなく、結界が張られた後は幻想郷を維持するために、人間と妖怪の間に数や勢力のバランスが必要になった。そのため人間はこれ以上妖怪が減っても増えても困るため妖怪を完全に退治しなくなったし、妖怪もこれ以上幻想郷の人間が減っても増えても困るため幻想郷の人間を襲うことはほとんどなくなった。しかしその代償として幻想郷の妖怪たちは存在意義を失ったことで次第に気力も衰え弱体化してしまった。そしてある時、幻と実体の境界の結界の力で流れ込んできた外の世界の吸血鬼が幻想郷を支配しようと暴れまわり、力を失っていた幻想郷の妖怪たちの多くが吸血鬼の傘下に入ってしまった。
騒動自体は幻想郷で最も力のあった妖怪により力技で吸血鬼が叩きのめされ、契約を結び和解することで決着したが、これはマズイと考えた妖怪たちが大結界を管理する博麗の巫女に相談し、 妖怪が力を失うことの無いように決闘が行える、妖怪が人間を襲い易く、人間が妖怪を退治し易く、同時に人間の数も妖怪の数も減らさずに済む平和的な決闘のルールが考案され、人間も妖怪も気軽に戦えるようになった……。これが彼女の説明する幻想郷の歴史だった。
話しを聞き終えて俺はいった。
「つまり「妖怪は人間を襲い、人間は妖怪を退治する。ただし殺しはしない」っていうルールを作って、幻想郷を維持しとるわけやな」
「そういうこと。理解が速くて助かるわ」
微笑む八雲だが、ひとつ分からない事がある。今の話しと俺の幻想入りがどう関係してくるのだろうか?
「じゃあ、えーと、出来るだけ穏便に事を進めたいので……お願いします。まぁ、ただおれもどうしてこんな事になってるか分からないし、超常現象に対するトラブルはまったくの専門外なので悪しからず。それを踏まえて聞きますが紫さんはどうして福太郎を殺そうとする?」
直球的に聞ける悠にキュンとした。対面する彼女はあっけらかんと言う。
「あら、別に私は殺そうなんて思ってないわよ。別に今は人間食べなくても美味しいものは多いし」
今はってことは今までは食べていたのだろうか……怖くて聞けない。俺はいった。
「せやけど昨日いいましたやん。このままやったら消えるって」
「アレはアナタが幻想郷に来ちゃうわよって忠告よ」
「「幻想郷?」」
俺と悠が声を揃えた。俗にいう異世界というやつだろうか……?八雲紫は続ける。
「「異世界」ではないは、アナタ達の住むこの世界と陸続きに存在する世界よ。ただし結界で隔離してあるから、通常は外部から幻想郷を認識することも行き来もできない。その逆に内部から幻想郷の外の世界を認識したり行き来したりも出来無いけれどね。そしてその結界で隔離された幻想郷では「空想の生き物」とされている妖怪・妖精・神霊がいて、もちろん人間も済んでいるわ」
紫は一度そこで説明を切った。質問はあるかと目配せしてくる。俺はとうぜんの疑問をいった。
「せやけど、八雲さん来てるやん。それにルーミアもやし、揺光さんもここにおるやん」
【妾は幻想入りせずとも現代で生きて居れるからの。あっちの住人とはあまり関係ない。八雲紫は旧友で、この者の能力はそういう境界を操れる力を持っておるのじゃ。福太郎は気がついておらぬ様だがこの部屋は今幻想郷と繋がっておる。】
「えぇ……無茶苦茶やん。」
紫と揺光はクスクス、コンコンっと声を揃えて笑った。どうやら彼女らにとって無茶苦茶は褒め言葉らしい。悠がいった。
「それで……なんで福太郎が幻想入りとやらになる可能性があるんだ?動物と話せたりするからか?」
「そうじゃないわ。そのまえに幻想郷の歴史について話しとくわ。」
彼女がいうには、幻想郷は元から隔離されていたわけではなく、多くの妖怪が暮らしていた土地に、それを退治する事を家業としていた人間がやって来て住んでいた辺鄙な土地であった。
しかし、500年以上前、人間の文明の発達と人口の増加により妖怪の勢力が人間に押され気味だったため、境界を操る程度の能力を持つ妖怪(八雲紫)が「妖怪拡張計画」を立案・実行して「幻と実体の境界」という結界を張ったという。
これにより単なる山奥であった幻想郷は、結界の作用により「幻となったものを自動的に呼び寄せる土地」へと変化し、外国を含む外の世界で勢力の弱まった妖怪が幻想郷へ来ることになった。そして明治時代頃に人間の科学文明の発達により妖怪等が迷信と認識され、外の人間により否定されたことで妖怪は弱まり滅亡の瀕し、幻想郷も崩壊寸前だった。
そこで幻想郷の妖怪の賢者が取った策が、幻想郷と外の世界の境界に「非常識」と「常識」を分ける論理的な結界を張り、幻想郷を「非常識の内側」の世界とすることで、外の世界の幻想を否定する力を逆に利用して幻想郷を保つというものだった。この「常識の結界」である博麗大結界が張られたことで、幻想郷は外部から隔離された閉鎖空間となり、今日にまで結界は保たれている。
しかし問題が何一つ無かったわけではなく、結界が張られた後は幻想郷を維持するために、人間と妖怪の間に数や勢力のバランスが必要になった。そのため人間はこれ以上妖怪が減っても増えても困るため妖怪を完全に退治しなくなったし、妖怪もこれ以上幻想郷の人間が減っても増えても困るため幻想郷の人間を襲うことはほとんどなくなった。しかしその代償として幻想郷の妖怪たちは存在意義を失ったことで次第に気力も衰え弱体化してしまった。そしてある時、幻と実体の境界の結界の力で流れ込んできた外の世界の吸血鬼が幻想郷を支配しようと暴れまわり、力を失っていた幻想郷の妖怪たちの多くが吸血鬼の傘下に入ってしまった。
騒動自体は幻想郷で最も力のあった妖怪により力技で吸血鬼が叩きのめされ、契約を結び和解することで決着したが、これはマズイと考えた妖怪たちが大結界を管理する博麗の巫女に相談し、 妖怪が力を失うことの無いように決闘が行える、妖怪が人間を襲い易く、人間が妖怪を退治し易く、同時に人間の数も妖怪の数も減らさずに済む平和的な決闘のルールが考案され、人間も妖怪も気軽に戦えるようになった……。これが彼女の説明する幻想郷の歴史だった。
話しを聞き終えて俺はいった。
「つまり「妖怪は人間を襲い、人間は妖怪を退治する。ただし殺しはしない」っていうルールを作って、幻想郷を維持しとるわけやな」
「そういうこと。理解が速くて助かるわ」
微笑む八雲だが、ひとつ分からない事がある。今の話しと俺の幻想入りがどう関係してくるのだろうか?