第拾弐夜『福太郎の不思議な日常』

ー妖怪園:研究室ー

福太郎「ほな、遠慮なく……んっ、見た目通りけっこう重いな」

お仙『鈍器かナ?』

リュカ「いや、ぶん投げた方が効果ありそうよ。」

ラム「いや、違うでしょ」

福太郎「もうちょい軽うて細い方が使いやすそうなんやけどね。」

そうつぶやくと鉄製のペンがキュッと細まって軽くなった。

お仙『あれ、なんか形変わった?』

栞「万能ツールですからね。」

福太郎「えっ?」

栞「さっそくですが、どうぞ試し書きをしてみてください。早く、ほら、今すぐ!」

今までになかった勢いで白紙を押し付けてくる。

福太郎「え、ええー……何をどう描けば」

栞「なんでもいいんですよ!とにかく早く描いてください!」

ラム「待て待て、なにかおかしいわよ。」

お仙『骨付き肉を描いてくレ』

福太郎「骨付き肉……こんな感じかな。」

漫画で原始人がもっていそうな骨付き肉を簡単に描いた。

ラム「待てってんでしょ!」

栞「今です、ペンの背をノックしてください!」

福太郎「こう?」

ボールペンのように背の部分をノックするとカチッと音がしたと同時に今書いた骨付き肉が紙から現実に出現した。

ラム「なっ……!」

お仙『肉ダ!』

リュカ「たしかに肉だね。」

福太郎「……えー、なにこれ、えーー。」

栞「スゴイでしょう?そのペンの正式名は夢想実現・萬念筆(むそうじつげん・まんねんひつ)。如意機と呼ばれる万能兵器のひとつです。」

福太郎「へー……まったくわからんけど、凄いもんっていうんは理解したで」

ラム「いやいやいやいやいやいや!」

福太郎「どないしまして?」

ラム「スゴイとかいうレベルじゃないでしょ!描いたものを実際に生み出すって並の宝具や呪具、いいえ、伝説レベルの物でも不可能よ!!」

栞「天河鎮底神珍鉄・如意金箍棒(てんがちんていじんちんてつ・にょいきんこぼう)の属するものですからね。その他一般のものとはまるで違いますよ。」

お仙『いま、チンチンっていったカ?』

リュカ「てんがちんていじんちんてつ・にょいきんこぼう……あ、たしかに「ちん」が二回ある。」

福太郎「なんですのそれ?」

栞「神域と辺境を分ける天ノ河が長年妖気や邪気をせき止めていく中で川底に沈殿した特殊な珍鉄を用いて伊斯許理度賣命が作ったツールです。まぁ、めっちゃレアな装備品とでも思ってくださればわかりやすいですね。」
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