第拾弐夜『福太郎の不思議な日常』

ー妖怪園:研究室ー

栞「まずはたくさんの絵をありがとうございました。」

福太郎「いえいえ」

栞「お返ししますね。」

福太郎「はい?」

間神は独特のヘアセットの櫛のようなものを抜くと長い髪が後ろに下がった。そしてシャララッという音ともに後頭部から何かが出てきた。

栞「まずは一枚目」

福太郎「これは……」

差し出された物は自分が描いた絵。だが、バリバリと食べていたはずだ。

リュカ「もしかして食べた絵を印刷できるの?」

栞「間違いではありませんね。私の能力みたいなものです。」

話しているうちに2.3.4……っと今日もってきて食べていた絵のコピーがすべて終わったらしくさっき抜いた櫛のようなものを髪に添えて巻き上げると一瞬で元に戻った。

お仙『巻物みたいな髪型だナ』

福太郎「んっ、それか。」

リュカ「なんでも印刷できる?」

栞「私が食べたことある書物やや細かいことを言えば紙なら出せますよ。広辞苑とかみたいなのだとちょっと首が凝りますが」

福太郎「こういう風に一枚紙でなく本としても出せるんや。」

栞「食べたものに限りますけどね。」

お仙『ならいくらでも転売できるナ!』

ラム「そういうことをいうんじゃない!」

栞「そうなんですよね。そういうこともできるから私は要注意怪異に指定されているんですよ。」

福太郎「そうなん?」

栞「考えても見てください。書物でなくとも紙ならいくらでも複製できるんですよ?つまり、私は完全に完璧な偽札すら作れるんです。」

福太郎「んー、なるほど。」

栞「まぁ、偽札といっても私が食べて出したらそれも本物なんですけどね。」

リュカ「私、超高級な土と肥料が欲しいんですよ。肩もみましょうか?」

お仙『お金くださイ!』

栞「こんなにもわかりやすくまっすぐなたかりは初めてですよ。」

ラム「ぶっ飛ばされたくなかったらアンタらは黙ってなさい」

栞「違法金は渡せませんが福太郎さんにぜひ受け取って欲しいものがあります。」

福太郎「んっ?」

栞「これです。」

彼女はどこか古めかしい木製の小箱を取りだしてテーブルに置いた。

福太郎「これは?」

栞「どうぞ開けてみてください」

お仙『よいしョー!』
パカッ!

ラム「アンタが開けるんじゃない!」

リュカ「なにこれ……鉄製の……筆?ペン?」

福太郎「んー……?」

栞「さぁ、どうぞ手に取ってみてください。」
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