第拾弐夜『福太郎の不思議な日常』

ー廃ビル:職員室ー

古井戸「まぁ、どうぞ椅子にかけてください。いま、コーヒーか紅茶でもいれるから。」

ラム「深夜だからとっとと返してほしいんだけど」

福太郎「コーヒーで」

お仙『私はまだまだいけるゾ!血液もってこイ!』

古井戸「血液でもあるよ。」

福太郎「あるんですか?」

蔵人「うちは血液を主食にする妖魔も来たりするからね。ある程度のストックは用意されてる。飲む?」

福太郎「トマトジュースにしといてください」

ラム「キョンシーにうかつに血を与えるんじゃないわよ。」

お仙『血を飲んで叫びたかったの二』

福太郎「なんて?」

お仙『最高にハイってやつだぁァー!』

福太郎「はい」

お仙『はイ!』

ラム「コーヒー2つとトマトジュースでいいわ。それと用事があるならとっとと済ませていい加減ほんとに眠い…。」

古井戸「Ok。ちょっと待ってて」

お仙『子供はもうとっくにおねむの時間だしナ』

ラム「……」
ガスッ!!
お仙『ギッ!』

福太郎「殴りつつ札を貼りつけたぁ!」

古井戸「はい、コーヒーとトマトジュースね。」

福太郎「んっ、どうも。あんまり動じんひとやな。」

古井戸「いや、わりともうこういうこと日常になってるもんで。ミルクと砂糖は?」

ラム「もらうわ。」

福太郎「砂糖だけ」

お仙『……』

古井戸「さて、じゃあ、お疲れのところ悪いけどこの写真を見て欲しい」

古井戸はデスクの前のノートパソコンを福太郎たちに向けた。画面には独特の頭飾り(巻物?)をつけた色白のスレンダーな女性が映っている。

福太郎「んー、知的美人やな。眼鏡とか似合いそう。似合いそう。」

ラム「二回いわんでいい」

古井戸「彼女は文車妖妃(ふぐるまようひ、ふぐるまようび)という妖怪なんだが」

福太郎「鳥山石燕の妖怪画集にのっとる?」

蔵人「話が早い」

お仙『ふぐるまってなんダ?ジュルルルッ』

ラム「こいつ、もう動きだしてる。」

プロメ(仮)【文車(ふぐるま)とは、内裏や寺院、公家の邸宅などで使用されていた書物を運ぶために使われていた車で、失火などの非常時に備えるものです。石燕は「執着の思ひをこめし千束の玉章(たまづさ)にはかかるあやしきかたちをもあらはしぬべしと夢の中に思ひぬ」と記しており、古い恋文が変化した・恋文につもった執念がなったものであると解釈されています。】

古井戸「そう。で、文車妖妃のような妖怪は主食は書物や文なんだけど彼女はちょっと変わっていて、絵も食べるんだよ。」
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