第拾弐夜『福太郎の不思議な日常』

ー???:???ー

氷柱女を捕獲(保護)したあと、大型車に乗りこむと古井戸医師が是非自分が担当している部署でお礼がしたいということで眠いながらについていくことにした。

福太郎「ここどこですの?」

古井戸「詳しい場所は教えられないんだごめんね。」

お仙『これうちの近くにある廃ビルじゃネ?』

福太郎「んー……あ、せやな。前は通るけど敷地内に入ったんは初めてやから分からんかったわ。」

古井戸「……」

ラム「なにカッコつけてるんだが」

『狭い…』

氷柱女いりのガタガタとポリタンクが揺れている。

古井戸「ああ、失礼。とりあえず皆さんも中へどうぞ」

福太郎「入ってええんですか?」

古井戸「大丈夫。ただし、右端のドアから……」

お仙『ならば私は左を選ぶゾ!』
ガッ!ガッ!ガッ!

ラム「いらん手間を増やすな!」

古井戸「ほかの扉は開かないようにしてあるんだよ。はい、こっちからどうぞ」
ガチャッ

福太郎「どうも……えっ?」

外見とは裏腹に中はものすごくキレイで電気もついている。それに外に居た時はひとの気配どころか何の音も聞こえていなかったのに人や妖怪でにぎわっている。

古井戸「驚いた?妖術と魔術でカモフラージュしてあるんだよ。」

福太郎「はぁ、なるほど」

お仙『フクタローみてみろ、一反木綿ダ!一反木綿が飛んでるゾ!』

一反木綿『バカヤロー!』

福太郎「ええ、いきなり怒られた…」

お仙『一反木綿じゃないのカ?』

一反木綿『くそダセェ呼び方すんじゃねぇっていってんだバカヤロー!』

福太郎「ほんならなんて呼べばええんです?」

一反木綿『40フィートコットンよ』

お仙『何でもかんでも英語にした方がイイって考えのがダサイと思うゾ』

作業着の女性「はいはい、梅雨時期は選択するチャンスが少ないんだからちゃっちゃと洗わせてください。」
ガシッ
一反木綿『バカやろ、丁寧に扱いやがれ!』

一反木綿は作業員らしき女性に丁寧に折りたたまれて連れていかれた。おそらく洗濯されるのだろう。

福太郎「ここはいったい?」

古井戸「説明するのは難しいんだけど、妖怪とかを見学できる妖怪園、妖怪が治療目的でくる妖怪病院、妖怪の生態を研究してる施設が一緒くたになっている場所かな」

お仙『妖怪を見世物にしているのカ?』

ラム「そんな言い方はやめなさい。ここに妖怪たちは自分から望んでいるのよ。いつくのも自由だし、出ていくのも自由。」

古井戸「とうぜん、ルールもあるしそれを含めて本妖(本人)の意思に任せているけどたまに自分の意思とは関係なく休んでるうちに気体になって出ていっちゃう人もいるけどな。」

福太郎「んっ、それが氷柱女さんなんやね。」
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