第拾弐夜『福太郎の不思議な日常』

ー池袋界隈:運動公園ー

お仙『氷柱女ゲットだゼ!』

勢いよく抱きしめるように飛び着いたお仙だったが空気をかいたように氷柱女はをすり抜けてしまった。

氷柱女「ふふふっ」

低く笑いながら氷柱女の姿が再び闇の中に霧散していく。

ラム「まずっ……もっとスプレー吹いて!」

福太郎「はいよー。」

塗りつぶすように冷却スプレーを吹くとスクリーンに投影されたようにまたぼんやりと氷柱女の姿が映った。

氷柱女「ふふふっ……何か御用かえ?」

ラム「あなたを迎えに来たのよ。ここで動けなくなってるんでしょ?」

氷柱女「迎え?ああ、迎えかえ。別に動けぬわけではないのだが……帰ったほうが良いのかえ?」

ラム「ここでヘンなイタズラを続けてもらうよりは帰ってもらって普通にしていて欲しいのだけど」

氷柱女「ふむ……仕方ないか、仕方ない。では帰るとしようか」

ラム「なら、とりあえずここに入って。連れて帰るから」

なにかデカい荷物を運んでいたと思ったら大きなポリタンクだった。キャップを開けると冷たい空気が流れたので恐らくはいったのだろう。

福太郎「これ、蓋してもええんですか?」

ラム「ええ、大丈夫よ。ああ、でも、少し水は入れといて。ちょっと連絡入れてくるから」

福太郎「はいよー。ところで、お仙?」

お仙『……』

福太郎「あれ、お仙ちゃーん?」

なぜか動かないお仙を触ってみるとカチンコチンに凍っている。

するとポリタンクの中から声が響いた。

氷柱女「妖でよかったわえ。人間だったら即死だったわえ。」

福太郎「うわぉ…」

ラム「お待たせ。他のところは撤収を始めたから私たちも離れましょう。……どうかしたの?」

福太郎「お仙が冷凍保存状態で」

ラム「ああ、気体状態の氷柱女に飛び込んだものね……。まぁ、今日は夜でも気温が高いしそのうち溶けるでしょ。担いで運んで」

福太郎「アッハイ」

冷凍キョンシー女子を担ぎ、ポリタンクをもって最初の大型車まで何とか辿り着いた。

古井戸「いやぁ、ご苦労様でした。」

ラム「私は今回はなにもしてないわ。礼を言うなら福太郎にいいなさい」

古井戸「いや、本当にありがとうございました」

福太郎「いえいえ、ところで、悪いんですけどちょっと暖房いれてもらってええですか?うちの子がまだカチンコチンで」

お仙『今だれかチンチンっていったカ?なぁ、ラム!チンチンっテ!』

ラム「……」

福太郎「ラムさん、ストップ。どういう道具かわからへんけど明らかに妖怪系に大ダメージを与える鈍器的なもんは置いてください。」
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