第壱夜『福太郎の不思議な日常』

ー廃寺ー

福太郎「……えーと、一番近くの寺がここだったんでお酒を祀らせてもらいます。コックリさん、失礼しました。」

【待てい!】

福太郎「え?」

【足りぬ】

福太郎「足りぬって……。」

【これからも持て】

福太郎「えー……そんなん約束とちゃいますやん。さほど重要な質問したわけでもないですのに」

【祟るぞ】

福太郎「酷い脅しやなぁ」

ごごご……
【文句があるのか!】

福太郎「んー……あんまり、こーゆー真似はしたあないんやけどなぁ。今回切りにしてくれん?」

【駄目だ!一度契約をしたならしっかりと供物を捧げい!!】

福太郎「契約はしてないんやけど……クーリングオフで」

【無いわ!!】

ボン!
揺光【もう善いじゃろ。交渉は決裂。】

【!?】

福太郎「揺光さん……危ない妖怪とかちゃいますの?供物とかいうとるし神さんの使いとか」

揺光【それをいったら狐は神の使いじゃろ。まぁ、妾は神なんかよりも上位な存在じゃがな。コンコン♪】

福太郎「ほなまぁ、殺さん程度に連れて来てくれます?」

揺光【もう捕らえておる】

ゴォォォっ!!
【ぎゃぁぁぁっ!!】

福太郎「いやいやめっちゃ火柱あがって悲鳴聞こえてますよ?!」

揺光【ただの演出じゃ。死ぬほど痛いだけで傷も付かんし動けなくなるだけじゃ。】

福太郎「死ぬほど痛いん?」

揺光【当然。傷はつかんが火で包んどるわけじゃからな。】

【ごめんなさい、ごめんなさい!許してください!勘忍してください!ごめんなさい、ごめんなさい!】

揺光【どうする?もっとあぶるか?】

福太郎「もう許したげて」

揺光【ふむ……。】

ぽふん!
【ごめんなさい、ごめんなさい】

福太郎「いやー、なんやごめんな。ちよっとやりすぎたね」

犬の霊【ごめんなさい、ごめんなさい】

福太郎「アカン、完全に怯えとる……っていうか、犬?」

揺光【低級な動物霊のようじゃな。】

福太郎「まぁ、狐狗狸やから犬でも間違いはないってこと?」

揺光【犬神なんかがその代表じゃな。しかし……コイツからは呪力のじの字も感じん…やはり低級霊じゃな。野放しにしとると同じことを繰り返す。やはり焼き払らっておくか】

福太郎「まぁまぁ、そこまでせんでも……反省しとるんやろ?」

犬の霊【反省しています!ほんとうに反省しています!】

福太郎「ほな、このお酒はあげるけん、もうこんな事したらアカンよ」

犬の霊【あ、ありがとうございます】

揺光【甘いのぉ……。】

福太郎「まぁまぁ、ええやないですのん。揺光さんにもなんかごちそうしますから」

揺光【では、狐饂飩が良いのあと稲荷寿司】

福太郎「……あぶらあげってことやね」

揺光【別に酒をつけても全然構わんぞ。コンコン♪】

福太郎「ほな、お銚子二本つけさせてもらいます」

揺光【コンコン♪気前がよい男は善いのぉ】
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