第拾弐夜『福太郎の不思議な日常』

ー集合墓地:あやかし屋ー

福太郎「この前、人面犬を見たで」

悠「マジで。どんなかんじ?」

福太郎「ややイケメンでキモかった」

悠「ある意味怖いなソレ」

骨女『あ、福太郎さんと悠さん』

悠「よう骨子……というか、どうした皆して表出て」

ろくろっ首「いや、ちょうど噂しとってんよ~」

福太郎「なんの?」

抜け首「なんのってアンタのや」

悠「福ちゃんの?」

絡新婦「よくは知らぬが犬の妖怪が福太郎を襲うと騒いでいるらしいぞ」

福太郎「あらまぁ…」

二口女「あらまぁ……っとは余裕じゃね」

福太郎「余裕いうか……なんで襲われるん?」

悠「雌犬の妖怪にだったらおれも襲われたい」

絡新婦「食い殺されてしまえ!」

その時、背後で何かが動く気配がした。

福太郎「へっ?」

悠「危ない!」
ドンッ!
福太郎「うおっ!」

『ガアアッ!』
『ガブッ!』
『ジャギッ!』

福太郎を突き飛ばした悠の腕に三つの頭が喰いついた!

「「「『悠(くん、さん)!!』」」」

悠「い、い……たくないわ。」

福太郎「へ?」

悠「頭が三つに身体がひとつの犬……ケルベロス!!」
プラーンッ…
『がるる』
『ぐるる』
『がうう』

福太郎「せやけど……ちっさ!しかもチワワにポメラニアンにトイプードル頭!」

「「「『可愛い!』」」」

悠「え、なにこれケルベロスじゃなくて新種?新種の犬?」

福太郎「いやー、頭みっつある新種は無いやろ。っていうか、痛ぁないん?」

悠「ぜんぜん。亘理の噛みつきに比べたらまるでこそばゆい。とりあえず、離れなさい」
ググッ

チワワ頭『きゅうん』
トイプー頭『わぅん』
ポメ頭『くぅん』

悠「これが福ちゃんを襲うって豪語してた妖怪犬か」

福太郎「そーなん?」

チワワ頭『ワオン』
トイプー頭『キャンキャン』
ポメ頭『オンオーン』

福太郎「えー……」

骨女『どうしたんですか?』

福太郎「何でも、人面犬が自分が馬鹿にされた復讐に呼ばれた死角らしいで。この子ら。」

悠「どっからツッコんだらいいんだか……。でも、どう考えてもこいつらに襲われてもホッコリするだけだろ。」

ろくろっ首「実は炎を吐けるとか」

抜け首「牙に毒が仕込んであるとか」

チワワ頭『ワオン』
トイプー頭『キャンキャン』
ポメ頭『オンオーン』

福太郎「ふんふん……。毒はあるっぽいで」

悠「え、おれ噛まれたんだけど」

福太郎「かゆうなるって」

悠「……あ、言われてみればちょっとかゆい」

骨女『ムヒ有りますよ』

悠「助かるわ。っか、どうするこれ?」

福太郎「んー……」

骨女『うちで飼いましょうか?』

福太郎「ええの?飲食店やのに」

骨女『店の中に入れずに看板犬としてここにつないでおくってことで』

福太郎「ほんならよろしゅう。」

悠「よかったな。飼ってくれるって」

チワワ頭『ワオン』
トイプー頭『キャンキャン』
ポメ頭『オンオーン』
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