第拾弐夜『福太郎の不思議な日常』

ー夢見長屋:福太郎の部屋ー

プルルッ

お仙『コタツは天国ダ。』

クロ「頭だけ出してんじゃねぇ!」

福太郎「独占しとるなぁ」

プルルッ

メリー「でも、こたつ出しちゃうとお部屋がコタツで占領されちゃうよね。」

福太郎「けど、寒さには勝てんしね。」

お仙『寒いと死んじゃうからネ。』

クロ「お前は死んでるだろ」

プルルッ

すっきー『あのー』

福太郎「ん?」

すっきー『さっきから何かなってませんか?』

福太郎「何かが?」

お仙『うおぉぉン!うぉぉぉン!』

クロ「やかましい!」

お仙『私は人間発電所ダー!』

福太郎「焼肉食べてないのに?」

クロ「お前が行くのは火葬場だロ」

お仙『私が人間だったら号泣してるレベルダ』

リュカ「妖怪である今なら?」

お仙『死してなおも輝ク!!』

リュカ「やんや、やんや」

クロ「一回死んで甦ったらこんな感じになるのか?」

福太郎「残念ながら死んだ経験はないんで……」

プルルルッ

すっきー『あのー、だから何かなってますって……』

メリー「電話?」

福太郎「携帯はここにあるけど、なっとらんで」

クロ「うちに固定電話は無いしな」

リュカ「子機ならあるよ」
プルルルッ

福太郎「へー、子機あるんや…」

クロ「いや、なんでだよ?!」

リュカ「ベランダに引っかかってた」
プルルルッ

お仙『落し物じゃネ?』

クロ「二階のベランダに電話の子機を落とすか!!」

お仙『上の人ガ』

クロ「ここは二階建てだっ!!」

福太郎「もしもし?」

クロ「でるのかよっ!?」

『もしもし?』

福太郎「どちらさんでしょうか」

『ああ、繋がった。私です』

福太郎「私」

『私、私』

福太郎「みんな、詐欺の電話かもしれん」

クロ「は?」

福太郎「私、私やって」

お仙『私、私詐欺!』

クロ「いいから名前聞け」

福太郎「アッハイ。お名前を伺えますでしょうか?」

骨子『骨子でありんす』

福太郎「んっ、骨子さん?」

骨子『はい、あやかし屋からかけています』

福太郎「ええと、この子機は?」

骨子『捨てられていた電話が付喪神化したものです。その子機も妖怪なんですよ。』

福太郎「マジで?」

骨子『マジです。せっかくなのでもらってください。メール機能などはありませんが、電波が届かないことはないし電話代もかかりませんよ。』

福太郎「へー、ほんなら動力は何なん?」

骨子『……それじゃあ、またいらしてくださいなんし』

プッ、ツーツー

福太郎「なんや不安な切られかたしたなぁ」
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