第壱夜『福太郎の不思議な日常』

ー池袋西口公園ー

福太郎「はぁー……あつぅ……梅雨入りしたいうのにカンカン照りやなぁ。ふー……ん?」

「あっちで、紅さんに喧嘩売った奴がいるらしいぞ」

「マジか、見物だな」

福太郎「喧嘩?」

ざわざわ……
ざわざわ……

紅「よいしょっ!」

ドゴッ!
「ぐぇっ……!!」

紅「弱っ……ま、勝ちは勝ちだからもらってくぞ」

「ぐうぅぅっ!!」

紅「一、二、三……おー、結構リッチじゃん。よーし、みんな、リッカの店でカットフルーツ買占めようぜ」

「「「おーっ」」」

「しっかし、バカだねアイツ」

「普通突っかかる相手の力量くらいわかるよなー」

「チッ……クソどもが……」

福太郎「……」

「おい、そこのお前」

福太郎「……ん?もしかして俺?」

「あぁ、金ねぇか。全額奪われて金がねェんだよ。出しな。ついでにタバコもよこせ」

福太郎「カツアゲ?」

「そうだよ」

福太郎「んー……タダでやんのもなんやしインジャン……ジャンケンする?」

「……殺すぞ?」

ぺし!
福太郎「あいた……ん?」

眼鏡の女性「持ってろ」

福太郎「え、あ、はい」

眼鏡の女性「負けた男がくだらない真似して情けなくないのか」

「なんだと、このアマぶっ飛ば……」

眼鏡の女性「うるさい」

ドゴォォォッ!!
「ぐぎゃ……っ!」

福太郎「うっわ……見事なハイキック。」

眼鏡の女性「失礼した。余計な真似をしたか?」

福太郎「ん、いやいや、助かりました。おおきに、せやけど、なんで助けてくれはったん?」

眼鏡の女性「私は無視してたんだが……私の仕事の総責任者のダメ息子が助けてやってくれと言ったのでな」

悠「ミッシェルちゃん、全部聞こえてるんだけど」

ミッシェル「聞こえるようにいったんだ」

福太郎「あ、悠」

悠「よう。本屋の帰りか?」

福太郎「んっ、ちょっと古書店いっとたんよ。そっちは……デート?」

悠「そう、デート」

ミッシェル「誰かとデートの予定があるのか?」

悠「分かっててそういう返ししてるんだよね」

ミッシェル「私はヒマじゃないから早く仕事を済ませたいんだが……。」

悠「へいへい、あっ、福ちゃん。あとで遊びに行くわ」

福太郎「んっ、えーと、ミッシェルさん」

悠「ミッシェル「ちゃん」」

福太郎「ミッシェルさん、助かりました。どうもです。」

ミッシェル「うむ、気にするな。ただ、勝てもしない相手に無駄に喧嘩売ることは感心しないぞ。そういうことをしているといつかしっぺ返しをくらう」

悠「ほら、ミッシェルちゃんていわないから機嫌損ねた」

福太郎「ホンマですか?」

ミッシェル「覚悟があるなら言うといい」

福太郎「やめときますわ」

ミッシェル「懸命だ」

悠「チッ」

ミッシェル「行くぞ小僧」

悠「あれ、地味に小さなやり返ししてきてる?」

福太郎「……どういう関係なんやろか。」
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