第拾壱夜『福太郎の不思議な日常』

ー福太郎の部屋ー

福太郎「ただいまー」

揺光【お帰り】

福太郎「あら、揺光さん」

揺光【久しいのぅ。一杯やらせてもらっとるわ。】

福太郎「はぁ、そら構いませんよ。」

クロ「すこしは構えよ…」

福太郎「クロたちがおったから不法侵入って訳やないし」

メリー「でも、気がついたら居たんだよ」

揺光【こんこん♪】

福太郎「ぬらりひょんみたいですね。」

揺光【昔、一度だけあったことあるわ】

福太郎「マジすか」

お仙『頭長かっタ?』

揺光【妾が見たぬらりひょんはナマズみたいなやつじゃったな】

クロ「ナマズって……からだが?」

揺光【いいや、顔じゃ】

福太郎「」それ、ぬらりひょんなんですか?

揺光【本人はそういっておったからのう。まぁ、それより一杯】

福太郎「ああ、どうも。なんのお酒で?」

揺光【米焼酎「大蛇の血脈」じゃ】

福太郎「なんやゴツイ名前ですね。」

揺光【地獄の鬼が作った酒じゃ。】

クロ「地獄にいってきたのか……」

揺光【最初は秘湯めぐりをしておったんじゃが……気がついたら地獄の温泉に浸かっておった。】

お仙『あるあル』

クロ「ねーよ」

揺光【身体がふやけるほど浸かって、酒を飲み、また浸かるを続けていて少々飽きたので戻ってきたわけじゃ】

福太郎「優雅な隠居生活みたいですね。」

揺光【こんこん♪まぁ、ほぼ隠居の身じゃからな。】

福太郎「悠のところには?」

揺光【あっちは寝込みを襲おうと思っての。】

福太郎「あらあらまぁまぁ」

揺光【こんこん♪】

福太郎「このお酒、すっげー辛口っすね。」

揺光【地獄の酒は大抵辛口じゃ。ああじゃが、最近は葡萄酒も作りだしたそうじゃがな】

福太郎「ワインすか」

揺光【うむ。もとは西洋地獄から輸入していたらしいが、最近は自分のところで作りだしたんじゃ】

クロ「え、地獄ってそんな感じなの?」

揺光【そりゃ日本の地獄があれば西洋の地獄もある。】

お仙『なんか楽しそウ』

揺光【死んで裁かれに行くわけでなければ、なかなかの観光名所じゃ。】

メリー「地獄があるなら天国もあるの?」

揺光【あるぞえ。】

福太郎「あるんや」

揺光【あっちも確かに極楽じゃがいかんせん刺激が少ないからのう。】

クロ「そりゃまぁ、天国だから極楽だわな」

福太郎「地獄で楽しいところは?」

揺光【針山から血の池まで、どこでも亡者が苦しんどるぞ】

お仙『まさに地獄』
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