第拾壱夜『福太郎の不思議な日常』

ー福太郎の部屋ー

服の神『いやはや、お邪魔させていただく』

ラム「……」

クロ「……」

お仙『……』

すっきー『……』

メリー「……」

福太郎「福の神さんですよね。」

服の神『うむ、服の神じゃ。』

ラム「ひとつ質問させてよろしいかしら。」

服の神『なんじゃね?』

ラム「貴殿の気配は確かに神族なる聖なる気を感じます。ただ、なんというか……」

服の神『なんじゃ?』

お仙『神様ってデニムとか着てんの?』

すっきー『ストレートに聞いたっすね?!』

服の神『そりゃ、服の神じゃかから、普段からお洒落に決めとるさ』

福太郎「そういうもんなんです?」

服の神『そういうもんじゃ』

クロ「……なんかおかしくね?」

ラム「そうね、どうもおかしい気がするわ」

福太郎「それで……端的に聞きますけど福をいただけるんでしょうか。」

服の神『ほっほっほ、お若いのは正直かつストレートじゃな。もちろん授けよう。さて、どんな服が良いかな』

福太郎「どんな……とは?」

服の神『おお、例えば交通事故にあわん服、風邪にかからん服、安眠できる寝間着、対刃、弾のベストなど様々じゃ』

クロ「前半はともかく後半は何だ」

服の神『ささ、なにが良いかな?』

福太郎「皆なにがええと思う?」

クロ「いや、何がっていうか……えーと、「福」の神だよな?「幸福」の「福」」

服の神『ん?わしゃ「衣服」の神。「服」の神じゃ』

福太郎「……あ、そちらの服の神さんでしたか。」

服の神『うむ。幸福を呼ぶ服の神は出不精じゃから、こんな賑わっとる日には、きやせんよ』

福太郎「福の神まさかの出不精」

お仙『それでいいのか福の神……』

服の神『ああいう、神はある意味疫病神や貧乏神より危険じゃからな』

ラム「どういうことですか?」

服の神『福の神というのはもたらす運や幸や福が桁違いなんじゃ。どのぐらいかといえばもし福は内といって家の中に招けどもすれば、三日もせんうちに大金持ちになれるぐらいじゃ』

お仙『福の神パネェ』

服の神『すれ違うだけで一生遊んで暮らせるようになるじゃろうな』

福太郎「ああ、せやから出不精に?」

服の神『それもあるが、本人があるミスをしてしまったんでな。』

クロ「ミス?」

服の神『真実かは知らんが、福の神がとある国を散歩していたところ、ひとりの赤子とであった。もともと子供好きな福の神は、赤子の顔を覗きこもうとした。するとその赤子がおっそろしくブッサイクな赤子だったらしくてな。驚きすぎて顔を見た拍子にヘッドソバットをかましてしまったそうじゃ』

クロ「色んな意味で飛んでもねぇな、おい。」

服の神『すれ違うだけでも福を得るのにヘッドソバットで直接触れたんじゃ超絶な運を手にしてしまったそうじゃ。』

福太郎「ほー……そんでその子は?」

服の神『さぁのぉ……まぁ、少なくとも一国の王ぐらいにはなっておるんじゃないかのう。自分の運に飲み潰されていなければじゃが』
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