第壱夜『福太郎の不思議な日常』

ー真神堂(古書店)ー

福太郎「まいど」

老人「……あぁ。らっしゃい」

福太郎「まーさん。これら、引き取って欲しいんやけど」

まーさん「……あのなぁ、ウチで買った本をウチに売りに来るな」

福太郎「あはは。」

まーさん「……笑い事じゃないぞ。」

福太郎「じゃあ、貸出制にしてくれたり」

まーさん「……出来んにするぞ」

福太郎「んー……ちょっとそれは困るなぁ」

まーさん「……ちょっとか」

「ジジ殿、掃除終わったぞ……っと、客か」

福太郎「ども。」

まーさん「……客かどうかわからん」

福太郎「お客やがな」

まーさん「……やれやれ返品でいいんだ」

福太郎「いや、流石に返品はせーへんよ。買い取りで」

まーさん「……全部で1000円だ」

福太郎「買った時は5000円やったのに」

まーさん「……文句あるか?」

福太郎「んー……いや、ないです」

まーさん「……我(なれ)がいうのもなんだが、お前はもー少し自分の性格を見直せ」

福太郎「あははは」

まーさん「……すまないが、これも整理しといてくれ」

「わかった。ここにお茶置いておく」

福太郎「あ、おかまいなく」

まーさん「せっかく出したんだ飲んで行け」

福太郎「ほな、遠慮ぅなく……あれ?」

まーさん「……どうした?」

福太郎「バイトさんなんかおったけ?」

まーさん「……いいや、ごく最近から住み込みで働きだした奴だ。」

福太郎「住みこみて、ここで?」

まーさん「……そうだ」

福太郎「そんなにする仕事あるん?」

まーさん「……基本は掃除、あとは在庫確認……それと爺の介護だな」

福太郎「介護が必要(いる)ようには見えへんけど」

まーさん「……そいつは嫌味か?」

福太郎「まさか、純粋な気持ちでいっとるよ」

まーさん「……ふん、どうだか」

「ジジ殿は介護不要。私が世話になってる」

福太郎「君、名前は?」

「名前……」

福太郎「ん?」

「えーと……東野圭吾?」

福太郎「有名作家でしかも男名?」

圭吾(?)「いまのは間違勘違いだ」

福太郎「せやろね……。っというか、聞いたらマズイ系?」

まーさん「……栞(しおり)」

福太郎「ん?」

まーさん「……そいつは栞だ」

栞「そう……しおりが私の名だ」

福太郎「栞さんね……まぁ、俺ここではよう世話になっとるし、よろしゅう」

栞「あぁ。しおり……栞か」

福太郎「ワケアリさん?」

まーさん「……お前の性格よりワケアリじゃない」

福太郎「てきびしぃなぁ……」

まーさん「……ふんっ」

福太郎「さて、お茶も飲み終えたしお暇しますわ」

まーさん「……ふん、またな。」

福太郎「おっと、すんません」
トッ…
メフィスト「いえいえ、大丈夫デス。」

まーさん「……アンタか」

メフィスト「ドーモ、新しい本が手に入ったとか……」
92/100ページ
スキ