第拾壱夜『福太郎の不思議な日常』

ー夢見長屋:庭先ー

福太郎「何気に落ち葉が溜まっとるね。」

クロ「そうだな」

お仙『てゆーか、ここって誰か掃除してるのカ?』

福太郎「んー……たまに肉塊になったりんねさんなら何度か片付けたけど」

クロ「それ、ちげーよな。」

福太郎「今さらやけどこー、ここの庭ってなにげに立派よな。」

クロ「まぁ、そうだな。」

福太郎「ほら、ドングリとか落ちてた」

お仙『わーい、ドングリ、ドングリー!』

クロ「子供か!」

福太郎「おや?」

クロ「今度は松ぼっくりでも落ちてたか……」

福太郎「いや、あれ見て」

クロ「あ?」

大ハムスター『……』
カンカン!
ベシベシ!
中ハムスター『……』

お仙『ハムスターがちゃんばらしてるように見えル』

クロ「奇遇だな。私もだ。」

福太郎「アレってもしかして妖怪?二足歩行しとるし」

クロ「経立(ふったち)の一種かな」

福太郎「ふったち?」

クロ「経立っていうのは年経た獣が人間みたいな奇妙な行動をすることだ。猫や狐なら尻尾が割れて妖怪になってるんだが……」

お仙『クロの尻尾は割れてないナ』
わしゃわしゃ
クロ「触んな!」
ガッ!
お仙『ぐふァ』

福太郎「獣以上妖怪未満てところか」

クロ「よく悪さをする猿や狼の経立の話はよく聞くがハムスターの経立は初めて見る。どこかのペットが逃げ出していつの間にか住み着いたかな」

ハム次郎『あぁっ!』

ハム一朗『はっはっ、どうだ兄ちゃんの毛皮は分厚いだろう』

ハム次郎『さすが一番の年長者、一朗兄ちゃんは凄いや!』

ハム子『兄様たち、食糧集め手伝ってくださいましよ~』

ハム一朗『ああ、スマンスマン。』

ハム子『はぁ、自分で食料を調達しなければならないなんて、回転車で足を滑らせてローリングしていたあの時代が懐かしいですわ……』

ハム一朗『そんなこたぁーねーよぉー。あー運動後のドングリと朝露マジうめぇー。自然サイコー』

ハム子『一朗兄様、もうすこし危機感を持ってくださいまし。大自然は危険と隣り合わせなんですよ?』

蛇『シュルルル』

ハム次郎『ににににに、にいちゃ、兄ちゃん!何か来た!』

ハム子『キャー!ほら、来ましたわ!危険来ましたわ!!』

蛇『シャァ~』

ハム次郎『兄ちゃんどうしよう!?』

ハム一朗「え?なに?……なぁーんだ、ただの蛇じゃねーか」

蛇『フシュルルル!』
60/100ページ
スキ