第拾壱夜『福太郎の不思議な日常』

ー某所:某トンネルー

福太郎「寒、暗、こわ!」

クロ「楽しそうだな、おい」

福太郎「いやいや」

ラム「事故が多いのはこの薄暗さも原因の一つなんでしょうね。」

福太郎「確かにトンネル言うてもちょっと暗すぎるような気がしますね。」

ラム「節電ってのを建前に電気代をケチってるんでしょうね。」

福太郎「事故が起きたら意味ない気がするんやけど……おっ、車来た」

ゴォォ……

クロ「この音トラックか。」

ラム「……」

ぶわっ!!

福太郎「……あれ?」

クロ「何かが走り去っていったのに見えなかった、な。」

ラム「どうやら事故ったトラックが今でも走ってるのね。残留思念となって……」

福太郎「危険度は?」

ラム「……多分、大丈夫ね。本当に危ないのなら半実体になってこっちにツッコんできてるだろうし」

クロ「おいおい!!」

福太郎「ちなみにラムさんの目的は?」

ラム「ええと、あった。そこよ」

クロ「ん?」

福太郎「なんもないように見えますけど」

ラム「あるじゃない。ほら、そこのブロック」

福太郎「ブロックって、このコンクリートブロック?」
ソッ…

ラム「触っちゃダメよ」

福太郎「え?」
バッ、揉み
クロ「……誰の何処を掴んでる」

福太郎「あれ……おかしいな。このブロックに触ろうとしたはずやのにクロの胸に手が」
揉み揉み
クロ「もむな!」
ゲシッ!

ラム「乳繰り合うんならどっか他所でしてもらえないかしら?」

クロ「乳繰り合うか!!」

福太郎「もしかして、そのコンクリ何かあるんですか?」

ラム「これは要石よ。ここが霊道になっているから、これで塞いでるの。でも、誰かに動かされたりしたら困るから対人の結界も張ってあるのよ」

福太郎「ああ、それで伸ばした手が剃らされたと」

クロ「本当にそらされたんだろぉなぁ?」

福太郎「当たり前ですやん。おれがセクハラするときはもっとこうわざとらしくやるよ!」

クロ「すっきーを見てたら確かによく分かるが……やるな!!」

ラム「はい、退いて退いて。結界を上書きするから」
スッ

福太郎「筆と……水?」

ラム「水じゃないわ。お神酒よ。」

クロ「くんっ……ん?ホントに酒か?臭いがしない」

ラム「特別せいよ。これで呪字をこのブロックに書いていくの。」

福太郎「いつもの鶏血と墨まぜたもんやないんですね。」

ラム「アレは妖怪とかには聞くけどこういう霊道の封印には向かないのよ。けど、このお神酒も封印に適してるわけじゃないの。このお酒は一度神様にささげたもので、その効力で邪を寄せ付けないようにしているだけ。」

福太郎「ほー、なるほどなー」
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