第拾壱夜『福太郎の不思議な日常』

ー集合墓地:あやかし屋ー

福太郎「まいど」

首無し女『あっ』

福太郎「あらまぁ」

骨女『いらっしゃいなんし』

福太郎「ども、首無しさん、ここに来とるんや」

首無し女『はい、彷徨ってたらちょうどここの前を通り過ぎたので寄ってみました』

福太郎「彷徨っとるんや」

首無し女『ええ、でも、以前のように無気力じゃなくて前向きにですよ。前がどっちかわかりませんけど!』

福太郎「なかなかの自虐ネタやね」

二口女『しかし、頭がないのに飲み食いできるのが奇妙だね』

福太郎「後頭部で飲み食いできる人も大概やと思いますよ」

二口女「でも、私ゃ口あるし」
グパッ

骨女『殿方の前で大口開けるのは下品ですよ?』

福太郎「こう大口開けられたらお茶とか流し込んでみたぁなるよな。」
どばどば
二口女「あー、おいしい。ちょ、熱っ!一気に流し込み過ぎ!」

首無し女『後ろの口で飲みながら話せるんですね』

骨女『でも、逆に後ろの口で話すことはできないそうです』

福太郎「そうなん?」

二口女「いや、実はできないことはないんでけどね……なんか自分の声じゃないように聞こえるから」

福太郎「同じ人物でも口がちゃうかったら別の声になるんかな」

骨女『自分の声を録音して聞くと違う感じに聞こえるのと同じじゃないですか?』

福太郎「ああ、なるほど」

首無し女『同時に喋ることはできるんですか?』

二口女「できるよ」『できるよ』

福太郎「おお、ほんまや。ほんなら別々に別のこと言うんは?」

二口女「それはできないね。」『考えてる頭はひとつだからね。』

福太郎「なるほど、いったん区切ってかわりばんこではいけるんやね。」

骨女『面白いですね。』

福太郎「ちょっとした芸とか出来そうやな。」

骨女『例えば?』

福太郎「腹話術」

首無し女『ああ、前の口は閉じて後ろの口で話すんですね。』

福太郎「そうそう」

骨女『腹話術じゃないですね。』

福太郎「でも、一芸やろ?」

二口女「それだったら大食いとかの方がいいかね」

福太郎「二口さんは確かに食べる方やけど、大食いではないし。ガチの大食いは本気でおにぎり100個も200個も食べるで」

二口女「えー……」

骨女『そういうお知り合いが?』

福太郎「できそうな人やったら何人も知っとるよ」

二口女「そういう人間の方が妖怪っぽい気がする。」
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