第拾夜『福太郎の不思議な日常』

ー集合墓地:あやかし屋ー

骨女『はい、お茶とお団子です』

幽香「どうも」

骨女『はい、こちら、ぬるめのお茶とお団子を崩したものです』

首のない女『ありがとう』

クロ「なんだかなぁ」

お仙『なかなかの見物じゃないカ』

クロ「何処がだよ」

福太郎「あれで食べれるんやなぁ」

首のない女『しかも食べながらしゃべれます』
ズズズッ

クロ「流し込んでるだけだからな。」

幽香「頭がないのに喋ってるってのもアレだけどね」

福太郎「俺らに憑いてきたけど平気なん?」

クロ「その字はやめとけ」

首のない女『浮遊霊ですから』

幽香「見た目はド悪霊なのに」

骨女『ストレートな方ですね』

クロ「あれは別格だからな」

首のない女『でも、私はポルターガイストとか呪いとかかけられませんから』

クロ「それだけインパクトあるのにか?」

首のない女『はい』

骨女『なら、逆に出来ることは?』

首のない女『……』

福太郎「……」

首のない女『あ、ひとつありました。大したことじゃないんですけど……』

福太郎「なになに?」

首のない女『力を入れると首から血があふれ出ます』
ドバドバ…

お仙『おお!悪霊っぽイ!』

クロ「いや、めっちゃ服とか床とか汚れてるんだが」

首のない女『汚れてもすぐに消えるから平気ですよ』
すぅ…

福太郎「消えるインクみたいやな」

首のない女『これであの病院にきたひとをよく驚かしました』

クロ「それも驚くが、首のない幽霊の時点で大驚きだよ」

お仙『肝試しだと最強だナ』

福太郎「恨みとかは?」

首のない女『あると思うんですけどねぇ。だから、こうして迷ってるわけですから』

クロ「軽いな」

骨女『なくなった頭が見つかれば成仏するんじゃないですか?』

福太郎「そうなん?」

首のない女『さぁ』

クロ「本人がこれだからなぁ」

幽香「消滅ならさせられるわよ」

クロ「意味がだいぶん違うから」

福太郎「こういう場合は頭よりも、殺人犯を見つけたらちゃう?」

クロ「あー……それはあるかもな」

幽香「いつごろ殺されたの?」

骨女『これまたストレート…』

首のない女『覚えてません。いつ死んだとか、誰に殺されたとか……ただ、十年は前の事のはずです。』

福太郎「その理由は?」

首のない女『私があの病院で、さまよい出したのが十年前ぐらいだからです。首吊りさんが教えてくれました』

福太郎「なるほど…」
87/100ページ
スキ