第拾夜『福太郎の不思議な日常』

ー夢見長屋近く:廃病院ー

福太郎「ちなみに、ここから離れられるん?」

血まみれの女『……さぁ』

クロ「さぁってなんだよ」

血まみれの女『試したことないのよ』

幽香「地縛霊っぽいし無理じゃないの?」

お仙『どこまでは移動したことあるんダ?』

血まみれの女『一階の待合室』

福太郎「病院内やな」

幽香「何しに行ったの?」

血まみれの女『え、暇だし皆とおしゃべり』

福太郎「みんな?」

顔色の悪い男『おーい、さっき入ってきた人間ってどこに……』

福太郎「……」

顔色の悪い男『わー!!』

クロ「うるさい」

お仙『なんで幽霊が驚いてル』

顔色の悪い男『い、いや、普通にいたから……って、なにを普通に話してる!』

クロ「いや、普通に話せよ」

骨『なんだなんだ?』
にゅっ

首のない女『どしたの?』
ずるっ

福太郎「わー、いっぱい出てきたな」

お仙『あの首のない幽霊どうやって話してるんだろウ』

血まみれの女『何でもないの。安心して』

骨『そうかい……って、人間!』

首のない女『え、えーと!お化けだぞ!』

クロ「確かにお化けだけども……」

幽香「うじゃうじゃいるわね。」

福太郎「首がないとか、ここでどんなことがあったん?」

血まみれの女『ああ、その子は事故死で幽霊になったみたいよ。ここの病院とは関係ないの』

福太郎「ほななんでここに?」

首のない女『お墓とかって昔からいる幽霊さん達でいっぱいだから新参者って居づらいんですよ。それでフラフラしてるうちにここに辿りついて』

クロ「幽霊にも居づらいとかあるのか……」

幽香「成仏しなさいよ」

首のない女『頭が見つからなくて……』

福太郎「ようやく幽霊っぽい発言」

クロ「で、骨はなんなんだ。骨の妖怪か?」

骨『おじさんはここの病院の下に眠ってる幽霊だ』

福太郎「病院の下に?」

血まみれの女『ここの病院て何かお墓の跡地に作られたっぽいの』

福太郎「めちゃくちゃやな」

骨『そうそう。それで取り残されてるんだよ』

クロ「跡地ってことはどうにかされたんじゃないのか?」

骨『忘れられちゃったみたいでね。気がついたら怨霊になっちゃってて』

お仙『怨霊軽いナ』

骨『いやー、怨霊になったはいいけどもう病院は潰れちゃったし、誰を恨んでいいかわかんないからね。』

福太郎「怨念で病院潰したんでは?」

骨『いいや、違うよ』

顔色の悪い男『潰れたのは医療ミスのせいですよ。あ、ちなみに私は元ここの医者のひとりで首つりました』

福太郎「それはご愁傷様です」
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