ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕

ー大江戸学園:旧工場施設ー

作業場に足を踏み入れた二人の前に広がるのは無数の木偶人形が流れ作業で組まれていく、壮大な現場だった。

久秀「なかなか圧巻ね」

雲山「コレだけの木偶が短時間で作られていくとは……」

久秀「言ったでしょ。木偶自体は簡単に組み上げられるの。」

雲山「しかし、ワンループでいったいどれだけの数が作られてるんだか」

久秀「あっちに発出されてるみたいだし、自分の目で確かめた方が早いんじゃなくて?」

雲山「そうだな。ドアは……」

久秀「ノブ回す?」

雲山「蹴破る」

前蹴りでドアを吹き飛ばそうとした……が、作業音に負けず劣らずな轟音と衝撃が走るが扉は健在。

久秀「あら……」

雲山「むっ。固い、な。」

更に二度、三度と蹴りを繰り出すが扉はびくともしない。

久秀「……あ」

雲山「なんです?」

久秀「これ……うん、やっぱり。扉じゃないわね。」

雲山「はい?」

久秀「正確に言うと、壁に扉を張りつけてる。手の込んだイタズラね。」

雲山「…………」

久秀「ただ、こういう場合はイタズラっていうよりは……」

雲山「ん?」

久秀「足止め?」

次の瞬間、背後から風を切る音。巨大な鉄の塊が雲山の背中に激突する。

雲山「ぐっ!!」

久秀「あらあら…」

雲山は背中で揺れる鉄の塊をひっつかんで引き千切ると木偶人形が増産されていくレーンへと投げ飛ばした。

雲山「ふっ……ざけやがって!」

久秀「頑丈ね。」

雲山「まぁ、このぐらいはな」

久秀「ちなみにコレだけの罠が仕掛けられてるってことはこっちが本命臭いけど、向こうは大丈夫かしら?今頃感電死したり、ミンチになってたりとか。」

雲山「魁人もついている。問題ないだろう。あいつは俺より雑ではない」

久秀「あら、信頼してるのね?」

雲山「これでも鬼の一派は一枚岩だ」

久秀「……ひとついい?」

雲山「なんだ?」

久秀「本性がむき出しになってるわよ」

雲山「……コホン、だいじょうぶだ。」

久秀「まぁ、なんでもいいけど、あっちに行ってみましょう。はい、先に進んで」

雲山「あぁ……。ところで、俺……私からもひとついいか?」

久秀「なに?」

雲山「私が先頭で進むことに異論はないのだが……キミはさっきから実は罠を看破しているんじゃないのか?」

久秀「半分はね。」

雲山「なら、できれば私がアクションを起こす前に一声かけてくれないか?」

久秀「善処するわ」
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