ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕

ー新宿:茶屋小鳥遊堂ー

久秀「……居ない。まったく、こんな朝っぱらからどこほっつき歩いてるのかしら……。ふむじゃーの中は空っぽ。着けられたままの食器……吉音が来て、出かけたってところかしら。」

「もし」

久秀「あら、お客さん?悪いけどまだ開店してないわよ」

楓子「おや、そうでしたかやよ。」

久秀「あらら、何処かで見た顔ね。ええと……」

楓子「雪之承楓子ですやよ。師匠の……」

久秀「あぁ、その奇抜な語尾。悠のSPさんね」

楓子「はいやよ」

久秀「何か御用?」

楓子「はっ、真桜嬢が携帯を放置して何日も家をあけるなと半分キレ気味だったのでお声をかけに来ましたやよ。」

久秀「へぇ…アナタも大変ね。」

楓子「いえ、随分と楽をさせていただいてますやよ。」

久秀「ふーん……じゃあ、暇なのね。」

楓子「いえ、ですから師匠を……」

久秀「ちょっと付き合いなさい。私と一緒に居ればそのうち悠に会えるわよ。多分」

楓子「なるほど、ならばご一緒しましょうやよ」

久秀「……素直ね。」

楓子「どうもですやよ。」




ー大江戸城:お堀周辺ー

寅「そういえば……アレはどうした?」

雲山「あれ?」

寅「灯」

雲山「あぁ、ここに来る前に家に寄ってきたが留守だった。また、小鳥遊堂もひとの気配がなかったな」

寅「ふーん……って、ずぶ濡れで動きまわってたのか…」

雲山「ひと目には着かなかった。だが、出来ることならどちらかの家でシャワーぐらいは浴びたかったな。」

寅「……アホだろ」

雲山「むっ…確かに少々無計画だったかも知れん」

寅「あぁ、そこは素直に認めるんだな…」

雲山「しかし、寅がここにいたんだ。なにも問題ない」

寅「……いや、まぁいいけどさ。ところで俺はいつまでブリッジ体勢でアンタに腰かけられてればいい」

雲山「あと、十分」

寅「…………」

雲山「いっておくが嫌がらせではないよ。」

寅「わかってるが。効果あるのかコレ」

雲山「人間の弱点は各種あれど、その中でも首は狙われやすい。しっかりと筋肉を柔らかくしておかないとならない」

寅「……理には適ってるんだな?」

雲山「そんなところだ。安心しろ、これでも私は親父殿よりは教えるのは上手かつまともなはずだ」

寅「鬼のおっさんだったらどんな事をするんだ」

雲山「殴り合う」

寅「いや、スパー以外でだよ」

雲山「だから殴り合う」

寅「……は?」

雲山「あの親父殿がことこまかい鍛錬を考えたり説明すると?あの人がやることは殴り合いだけだ」

寅「……なるほど、悠が無駄にタフなのがよっく分かった。」

雲山「彼もだけど風雷コンビもよく弟子を続けられてると思うよホント。」
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