ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました

ー大江戸学園ー

悠「ふあぁ…(毎夜、毎夜かつあげをとっちめたり、不良をとっちめたり、似非ヒーローゴッコして収穫まるでなしか…)」

新「あ、ねぇねぇ。悠」

悠「あー?」

新「なんだろ、あの人だかり?」

新が指さす。
確かに校門の前に生徒たちが集まっている。

悠「ふぁんだ(なんだ)?」

新とふたりで人だかりを覗いてみる。

新「何か、張り紙がしてあるみたいだよ」

悠「……天狗党?」

校門に堂々と張り付けてあったのは、なんと天狗党の檄文だった。

新「何て書いてあるの?」

悠「あー?見えないのか?」

新「ううん、漢字が多いんだもん。」

悠「……まぁいいや。えーと……天より下りし大天狗が学園の貧しき生徒たちへとこの檄文を送る。政(まつりごと)に当たる器ではない小人に国を治めさせておくと災いが起こるとは深く天下の人君、人臣に教戒されたところである」

新「えっと……どういう意味?」

悠「簡単にいうとだな、政治をする奴がよくないと国に悪いことが起こるってことだな」

新「うん、それはよくない」

悠「……」

新は難しい顔と本人が思っている顔をした。

新「続きは?」

おれは檄文をざっと流し読む。そして新のために噛み砕く。

悠「要約するとだ。俺たち天狗党が一部の者が富や権力を手にしている今の学園に鉄槌をくだしてやらぁ!みたいな」

新「え?天狗党って悪者じゃなかったの?」

悠「おれもそう思ってたけど。悪党も大義名分がほしいんじゃないか?」

新「たいぎめいぶん?」

悠「……自分たちの悪さから目をそらさせるために、誰かを悪役にしとくんだよ」

新「ふうん……」

しばらくすると役人が現れて、生徒たちをかき分けて檄文をひっぺがした。
人だかりがゆっくりとほどけて校舎の中へと吸い込まれていく。

男子生徒「俺も天狗党にはいって世直ししようかな…」

女子生徒「生活苦しいしね…」

悠「……」

一部ではあるが、天狗党のやり方に賛同する生徒が居ることに少し驚く。

新「ちょっと……怖いね。」

悠「あぁ。」

「大衆とはそういうものですよ」

悠「あー?」

振り返るとそこにはひとりの女子剣徒が立っていた。凛として姿勢がよく、眼鏡をかけた知性的な雰囲気女性だ。

「目の前の不満にばかり気をとられて、本当の大きな問題には気がつかない。」

悠「あんたは?」

雪那「失礼しました。三年に組、由比雪那(ゆにせつな)と申します」

悠「雪那さんか。おれは三年B組の小鳥遊悠。ここの生徒ではない」

新「あたしは…」

雪那「徳田新さんですよね?」

新「あれ?どうして知ってるの?」

雪那「あなたは意外と有名人なんですよ。」

新「そ、そうなんだ」

悠「そりゃお前、馬に乗って、学園をパカパカ走り回ってりゃイヤでも目立つ」

新「ああ…」
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