ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕

ー大江戸城:堀周辺ー

寅「はぁはぁ…」

雲山「うむ。見事だ。」

寅「はぁはぁ……」

雲山「形だけとはいえ九割、鬼角の動きを真似られている。その分なら、完成も近いでしょう。」

寅「あぁ……そうかい……はぁはぁ。」

灯「いやぁ、見ていて迫力があるね。カウンターの打ち合い」

寅「ダメージが……有るのは……俺だけだがな」

灯「途中から胃液しか吐いてなかったしね。」

雲山「いや、私の身体にもしっかりとダメージはある。」

寅「そうは……見えねぇ。はぁ……ちょっと休憩だ」
ドサッ

雲山「休憩?終わりではないのかい?」

寅「九割が……完成してんなら、あと一割だろ。休んだら再開する。……もう吐くモノもねぇしな」

灯「吐かないようにする、という道は?」

寅「避けるなり、受けるなり出来たらそうしてっての…」

雲山「しかし、鬼角は地に足をつけ身体を固定せねば真価は発揮しない。いくら会得できたからといってすぐに使えるものではないと覚えておいてください。」

寅「わかってる。カウンターはあくまで返し手の技だ。俺は自分から攻める方があってる。」

雲山「自分にあった闘い方をするのが一番です。」

寅「……アンタさぁ、やりあってるときと普段の時とで喋り方変わるよな」

雲山「……恥ずかしながら、私もあの父の子だ。感情に熱を持ち始めるとどうも言葉使いが粗暴となる」

灯「喋りやすいようにしゃべればいいのに」

雲山「そういうわけにもいかない。」

寅「なんでだよ」

雲山「私の見た目で粗暴なしゃべり方をすると……怖いだろ?」

寅「そりゃまあ、な。特にあっちのと並んでたら明らかにヤカラと令嬢だ」

雲山「ハッキリ言ってくれる」

灯「あははっ、ヤカラだって」

雲山「そっちも令嬢と呼ばれていることに対しては?」

灯「あはっ」

雲山「……」

寅「そういや……アンタらが追ってきたやつ」

灯「風魔君?」

寅「それ、どんな奴なんだよ」

灯「どんな……そうだね、まさに忍者らしい忍者かな。とにかく気配の出し入れが上手いのと罠を仕掛ける」

寅「罠?」

灯「一番怖いのが首つりかな。一瞬にして吊りあげられる。」

雲山「えげつないな」

灯「背後と頭上には要注意。あとは足元」

寅「足元?」

灯「頭上からの攻撃に気を取られ過ぎるといきなり足元すくわれる。本当にそのままの意味で。首吊り、足吊りのコンボが一番ひどいかな。」

寅「そういう小技はともかく腕っ節はどうなんだ」

灯「葛(かずら)を多用する独自体術」

寅「かずら?」

灯「ええと、関節技みたいなものです。簡単な当て身も使ってはいますけどね。簡単なものをみせようか?」

寅「……回復してきたところだ。見せてもらおうか。どうしたらいい?」
スタッ…トットッ

灯「普通に殴りかかってきてくれたらいいですよ。」

寅「なら……遠慮なくッ!」
ビュッバッ!
灯「……」
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