ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました

ー新宿:武家屋敷ー

以前騒ぎがあったのとは別の武家屋敷。
しかし、そこに集まる者たちには見覚えがある。
座敷の上座に居並ぶのは忘れようもない奇怪な天狗面達である。

その中央にはどさくさのうちに姿を消した首領の天狗御前の姿があった。

男子生徒「つまらないものではございますが、お納めくださいませ。」

天狗面らの前に跪いたその生徒は恭しく菓子折りを差し出した。

天狗党幹部B「うむ。受け取っておこう」

男子生徒「では何卒よろしくお願いします」

天狗党幹部C「千里屋。殊勝な心がけ、御前の覚えもめでたかろうぞ」

御前「うむ」

千里屋「ははぁ」






千里屋の退けた後、天狗達は土産の菓子折りを開く。ふたを開けるとごく普通の和菓子が並んでいた。
しかし……。

天狗党幹部C「くくく…」

天狗のひとりがおもむろに箱を裏返す。

天狗党幹部B「ふふふ、千里屋の奴め、張り込みましたな」

御前「くくく、天狗党の力がわかって来たということよ」

天狗党幹部C「放火を恐れて、先に寄付をしてくる者が増えましたな。」

天狗党幹部B「計画の資金も着々とたまっております。全ては予定通りにございます」

御前「それはそうと以前の狼藉者たちだが、奴等が何者かはわかったのか?」

天狗党幹部C「は、もちろんぬかりなく。おい?」

天狗党員「は、ご報告させていただきます。まず入れ墨の女ですが、北町の長屋に住んでいる渡世人で、長屋の住人からは遊び人の金さんと呼ばれているようです北町辺りの賭場や茶屋に顔を見せては、ふらふらとしています。気っぷの良さから周囲の評判は悪くないようです。もうひとりの女ですが、名は徳田新。一応剣徒ではありますが特に役職にはついていない浪人者のようです。白馬を乗り回しては、住人の依頼を受ける便利屋のようなことをしていて、近隣ではそれなりに名が知られているようです」

御前「ふん。渡世人や浪人者風情が俺に刃向かうなど生意気な。女などみなおとなしく俺の前にかしずいておればいいのだ」

天狗党幹部B「世直し成就の暁には思うがままでございましょう」

天狗党幹部C「江戸の大奥の復活でございますな」

御前「くくっ」

天狗党幹部B「では残りの男の身元を問おう」

天狗党員D「はっ。男の名は小鳥遊悠。つい最近になってこの大江戸学園にきた者で、現在は南町で茶屋を開いているようです。この男についてはまだ不明点が…」

御前「余所者か。なるほどまだこの学園のルールに慣れておらんようだな。一度しっかり教えてやる必要があるな」

天狗党幹部B「はい。すでに手筈は整えております」

御前「さすがだな」

天狗党幹部B「恐れ入ります」

御前「見せしめにたっぷりと懲らしめてやるのだ。はははっ!」

そして、夜に響く悪党の笑い声…。
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