ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕

ー大江戸学園:直通エレベーター前ー

ただ、走る。

その言葉を聞いたとき、左近の背筋には冷たいものが走った。今から何かが起こる。直感がそういっていた。

崇は軽く手足を振ると、壁を背にとび跳ねた。それが左近が見えていた最後の映像だった




グングニルの槍というものをご存じだろうか?

ドヴェルグの鍛冶、イーヴァルディの息子達によって作り出され、オーディン、トール、フレイに品定めされた後、オーディンへ渡された。 この槍は決して的を射損なうことなく、敵を貫いた後は自動的に持ち主の手もとに戻る。

また、この槍を向けた軍勢には必ず勝利をもたらすという……。


キングのとった行動は至ってシンプル。目標に向かって一直線に走る。緩衝材がわりにタンスを詰めた壁は崇のひと蹴りで粉砕、そのスピードは竜巻のミキサーも貫き、後に残るのは踏みぬかれた地面という結果だけ……。

音を追い抜き、風を置き去り、肉眼では捉えきれる不可視の神速、それはまさに……オーディンの槍(主神の一撃)。

キングのみが見える、景色は全ての時が止まっているかのような状態だった。

進行方向上にいるひとの群れを飛びし、浮かんでいる瓦礫を弾き、敵と思われる二人の男の首目がけ打撃を放った。

最大速度から繰り出された一撃を受けて大男は後方へと弾きとんでいく。

そこでようやく、崇の時と世界の時がリンクし元に戻る。

崇「むっ…」

禍「があぁぁ!?」

天「ぐぉっ!?」

吹き飛んでいった男達の悲鳴。

崇「ほう、現時点での俺の最大速度の一撃を受けてまだ息があったか。」

ジエドオブドラゴンの振動が消えたことで動けずにいた久秀達がいった。

想「今、一体何が……」

久秀「さぁね、でも、状況が変わったらしいわ。」

目の前にいたはずの強敵が遥かかなたに吹き飛んでいて別の男が対峙している。

雷太郎「なんでもいい動けるなら」

風太郎「まだ、再起がはかれる」

久秀「じゃあ、行ってきなさい。私たちはコイツらをどうにかしておくから」

伊万里「うっうぅ…」

魁人「ぐぅぅ…」

想「酷い傷です。すぐに治療しないと」

久秀「手足に穴があいてるけど、致命傷を受けなかったのは幸いしたわね。」

想「そのようですね。すぐに止血しましょう。」



王と天はついに対面を果たした。

崇「さて、お前が……天か?二人とも同じ顔しているが」

天「痛っっ……殴られたんや久々やわ」

禍「このガキゃ…。」

雷太郎「天!」

風太郎「禍!」

崇の背後から雷太郎と風太郎が追いかけてくる。

禍「雑魚がまだ生きがるか……死にさらせ」

天「待ちや。禍」

禍「あ?」

天「アンタ。虎狗琥崇くんやろ?」

崇「そうだ。お前が天か?」

天「せやで、俺が天、こっちが禍。ワイのクローンや。」

崇「クローン…?」

天「ま、そんなことより……どうやろ、俺らもう帰ろうとおもっとるんや。見逃してくれんかな。本来、悠君と遊ぶつもりやって、崇君とは遊ぶつもりちゃうかったんよ。」

禍「あ?!」

崇「……好きにしろ」

雷太郎「は?!」

風太郎「え!?」

天「話がはやーて助かるわ。ほんなら……またなぁ」

禍「くっ……虎狗琥。テメェは俺が殺してやる。楽しみに待ってろ。」


~~


ー大江戸学園:ねずみ屋ー

崇「という感じだった。」

悠「待て!どっから突っこめばいいんだコレ!」

崇「なにが不満だ?」

悠「不満っーか、えーと、まずなんで逃がした」

崇「俺は道玄に天が居たら止めてくれと言われていただけだ。なにより、あの時は足手まといが居たしな」

雷太郎「……」

風太郎「……」

魁人「面目ない」

崇「冗談だ。」

悠「わかんねぇよ……。お前の冗談」
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