ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕

ー大江戸学園:スカイタワーー

カク『バォオオオオオオン!!』

悠「うわっ!?」

下から聞き覚えのある咆哮が突き上げてきた。びりびりと身体の表面が痺れ、刀から散る火花が激しくなった。

光姫「スケ!お前もじゃ!」

スケ『ガオォォオオオオオッ!』

光姫さん!それにスケとカクも!
視線を地上に向ければ、たくさんの人影がこちらを見上げ、口々に何事かを叫んでいた。

その中でも、二匹の巨大な剣魂を従えた光姫さんは一際目立っている。

衝撃波に続き、今度は身体が浮き上がるような感覚が襲ってきた。

これはスケの重力波……それを反転させて放出しているのか?

吉音「と……まれぇぇえええっ!!」

援護を受けて息を吹き返したのか、吉音の腕と表情に力が戻った。落下速度が目に見えて減速し、一旦は大きくなった散る火花も、逆に小さく収まっている。

朱金「ハナサカッ!スケに力を!」

ハナサカ『ワンワンワォォン!!』

ハナサカの強化能力を受け、重力波が厚みを増した。落下どころか、まるで下から押されているかのような感覚だ。

真留「ガラッ八、お前たちも行くのです!」

ガラッ八『ギョギョッー!!』

ガラッ八やセン・リツらをはじめ、飛行可能な剣魂のみんなも下から押し上げてくれる。

個々では微々たるねのでも、これだけの数が集まれば十分な力になる。人の顔がはっきりと判別できるような距離にまで降りる頃には、もう刀のブレーキングも必要のない、巨大な風船にでも乗っているかのような、ゆったりとした降下速度になっていた。

ゆっくりと地上に降り立ったおれ達を迎えてくれたのは、とりどりの大きな歓声だった。

光姫「ふうぅ……危ないところじゃったのぅ。どうやら、エヴァとキュウビは倒せたようじゃな」

悠「はい。もう戦う力は残ってないようだったので、上に残っている詠美達だけでも大丈夫だと思います。そうだ、爆破プログラムの起動装置なんですが……」

崇「心配するな、ここにある」

悠「……え、崇ぃ?!」

崇が手を開くと、そこには見覚えのあるタブレット状の端末が。

光姫「お前達より先に落ちてきた。流石に壊れておるようじゃが」

いくらか欠けているところはあるものの、原形を残しているのは恐るべき耐久性だ。

悠「いや、じゃなくて……なんで、なんで崇がいる?」

崇「話すと長くなる。」

悠「えぇ……」

朱金「おう、暴れてやがった低級剣魂もみんな消えちまったぜアレもキュウビが操ってたっぽいな」

悠「そうか。街を守ってくれてたんだな、ありがとう」

朱金「オレたちだけじゃねぇよ。奉行所や火盗も一丸となって戦ったんだ。そいつらのこともねぎらってやってくれ。」

悠「ああ。誰かじゃない、全員で守りきったんだな」

吉音「モココさんたち大丈夫だったの?」

真留「はい。無事に将軍を救出して、今は刀舟斎先生養生所にいると情報が入っています」

吉音「そっかぁ、よかったよかった。みんな助かったんだね」

吉音がようやく安堵の表情を見せてくれた。

悠「あっ、そうだ。魁人達は?!」

崇「あいつ等も治療中だ。」

悠「そうか……。って、だから、なんで崇が知ってる」

崇「話せば長くなる」

悠「またそれかよ!まぁでも、皆無事なら良いか…」

本当はひとり、十兵衛師匠が姿を消したままになってるのだが、今はそれを悲しんだりすることはない。

あの人が落命するなんて展開は全く想像できない。きっとまた妙なところにひょっこり現れるはずだ。

光姫「朱金のいうように、学園の全員が結束したからこそ得られた勝利じゃ。あまり認めたくないが、共通の巨大な敵というのはある意味有用な存在じゃのぅ」

悠「可能な限り、そんなのが役に立つ場面がないようにはしていきたいところですが」

吉音「あっ、ヘリコプターが来たよ。本土からのかな?」

悠「どうだろう。エヴァを捕える作戦を持ってきたと思いたいところだけど……まぁいずれにせよ最悪の展開になる前に解決できたのはよかったな」
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