ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕

ー大江戸学園:頂上ー

詠美「今よ、キュウビにとどめを!」

悠「おうっ!」
吉音「おうっ!」

吉音と、今し方刀を抜き放ったばかりのおれとで、左右から一気に詰めよる!

キュウビは度重なる弱体化で視野まで狭くなっているのか、おれたちに気づくことなく悶えている。

エヴァ「何をしているキュウビ!攻撃が来てるぞ!」

キュウビ『ギッ!?』

マゴベエ『ピュイィィイーーッ!!』

エヴァの声でこちらに気づくも、その瞬間にマゴベエの突撃が、キュウビの顔面に突き刺さる。容赦な立てられた爪が引っ掴み、視界と聴覚を奪った。

悠「もらったぁあーっ!」

吉音「父さまと母さまの仇!かぁくごぉーっ!」

マゴベエに張り付かれたキュウビは、それをむしり取ろうともがき、おれ達に対して完全に無防備だ。

ここで決めるっ!

キュウビ『クォォォォオオオオーーーーンンンン!!』

キュウビの眼前で、おれと吉音が交差する。抜いた刀が、左右からキュウビの胴を切り裂いた。

奇しくもそれは、十兵衛師匠がつけた傷をなぞるような切り口だった。

まるで血しぶきのように光の粒が噴き上がる。尾を縫い止められたままのたうち回るキュウビ。

その身体が、傷口付近から侵食されるように消滅していく。

吉音「成敗ッ!」

キュウビ『ォギャァァァアアアアアア!!』

断末魔の叫び。バッと全身が弾け飛び、風に吹き流されて、学園島の空へと溶けていった。

吉音「詠美ちゃん!大丈夫っ!?」

キュウビの消滅を見届けた吉音が、詠美へと駆け寄る。キュウビが消滅して刀は床へと突き刺さったままで、詠美はそれを支えに立っている様子だった。

詠美「ええ。タケチヨが……守ってくれたから」

タケチヨ『ヒ……ヒュイィ』

やや疲労らしきものは見えるが、すぐに身体を起こし、笑みを見せてくれた。どうやら心配することはないようだな。

イエヤス『ヒョヒョ。当然よ。ワシがちゃあ~んと守ってやったからのぅ』

詠美「まぁ……おそらくそうなのでしょうね。一応感謝しておくわ」

イエヤス『であればその証しを見せてくれんとのぅ。』

悠「あ?」

イエヤスが、緩みきった顔で詠美ににじり寄っていく。

イエヤス『例えば、熱い熱いちゅーなどでな。ぬふふふ』

悠「……お疲れ様。しばらく休んでろ。」

イエヤス『なんと!?ぬぉぉぉおおぉ……』

刀を鞘に収めると、イエヤスがキュウビ同様に消滅した。コイツには似合いの展開だ。

エヴァ「クソガキどもがァァァ!ふざけたことしてくれてんじゃねぇぞぉっ!」

おっと……そういやまだアイツが残っていた。ついさっきまでの余裕もどこへやら。剣魂がやられるなり取り乱して怒鳴り散らすのは、由比さんのリピート再生でも見ているようだ。

悠「怒鳴り散らしても、あんたが負けた事実は変わらないぞ」

エヴァ「負けたぁ?なに言ってんだ?島ぁ、あたしの手の中に有るのは変わらねぇだろがよぉ?」

例の爆破プログラムのことか……。どんなものかは知らないが、走りはじめたら一時間で爆発だという。それを止めるのは至難だ。

十万人以上を人質にとられていては、日本だって動く可能性が高い。

悠「……」

白フード「愚かだな……。」

いつのまにか白フードがおれの横に並ぶ。コイツも爆破に巻き込まれるのはごめんらしい。そもそもコイツはどういうの立場なんだか……。

エヴァ「何度も言うけどさぁ、あたしはこの学園が大好きなの。だからどんな事をしたって自分のものにしたいし、あたし以外の誰かのものだと思うと虫唾が走るワケぇ。わかる?」

吉音「そんなの、ただ勝手にうらやましがってるだけだよ!」

エヴァ「ええ。だから否定なんてしていないでしょう。あたしはワガママなの。どれだけ恋焦がれても、手に入らないものならば……吹っ飛ばした方がマシだっ!」

その言葉を聞いた瞬間、身体が飛び出していた。エヴァの手が懐へ伸びるのが、スローモーションのように見える。

エヴァが日本に対して優位に立てる理由があるとすれば、爆破プログラムを握っている以外にはない。

そしてそれを保つためには、いつでも自分の意思で、起動できる状況でなければならない。

エヴァの手が、手のひらに収まるほどのタブレット状の危機器を取りだした。携帯端末か?
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