ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕

ー大江戸学園:頂上ー

エヴァ「その間の抜けた問答は何だ……戦いの最中だぞ!?今、お前らは破滅の危機にあるのが理解できていないのか?こんな骨董品のタヌキジジイ一匹、お前の敵じゃない!キュウビ、アイツからやってしまえ!」

キュウビ『コォォーーンッ!』

悠「くるぞっ!」

各種能力は封じられ、反応も鈍くなっているキュウビ。

しかしそのパワーは健在だ。まともに攻撃を受ければただでは済まない。

詠美「悠っ!」

タケチヨの衝撃波を纏った詠美さんが突っ込んでくる。

刀を構え、おれとイエヤスを背に立ちはだかった。

エヴァ「馬鹿が!自分からやられに来たか!」

詠美「切り札を、奪われるわけにはいかないっ!」

キュウビの尾が叩きつけられる。っが、詠美は一歩も引くことなく、その攻撃を正面から受け止めていた。

両足はしっかりと地を踏みしめており、崩れ落ちそうな気配もない。

エヴァ「なにィ……?」

詠美「か……軽いわね」

吉音「すごい!詠美ちゃん、すごい!」

エヴァ「なぜ……そんな細い身体でキュウビの攻撃を受けられる?!キュウビ!手加減はいらないわ。その小娘を全力で叩きのめしなさい。」

キュウビ『くォォオ……オォォオオオオオンッ!』

キュウビは九本の尾全てを使い、詠美を滅多打ちにしはじめた。上から、前から、右から左から、長く大きな尾が詠美の身体を打つ。

しかし詠美は倒れない。

タケチヨの衝撃波シールドがあるとはいえ、すべての攻撃をまともに受けつつ、しかし揺るがない。

詠美「全力で……この程度なの?」

エヴァ「どういうこと……」

イエヤス『ふふん。ワシの前で別嬪さんを傷つけようなど、見逃してはおけんからのぅ』

エヴァ「狸!お前の仕業か!?一体何をしているっ!」

イエヤス『なんにもしとらん。強いて言えば大人しくしているように宥めておるだけじゃ。ワシは荒事が好かんのでなぁ』

エヴァ「宥める……?剣魂を大人しくさせている、といでもいうの……?」

イエヤス『ワシに逆らえる剣魂などおらんわ。たとえそれが十匹分連結された異形の者であろうともな。そのキュウビとやらも今はレギュレーション内に収まり、制御系統も正規のものに戻っておる。』

エヴァ「でたらめだっ!旧式に最新鋭が劣るはずがない!キュウビ、もう殺しても構わないわ。どうせ島が沈めば同じ運命なんだから。お前の全力をクズどもに見せてやれェッ!」

キュウビ『コォォーーーンンン!!』

埒が明かないと見たか、キュウビは詠美から間合いを取りなおした。

揺らめく九本の尾が、絡みあい、渦を巻くようにひとつへと束ねられていく。

巨大な花の蕾のようなそれが、高々と頭をもたげ、標的を詠美へと定めた。

詠美「…………」

しかし詠美はその場を動かない。キュウビの攻撃を誘っているかのように。

キュウビ『クォォォオオオオオオッ!!』

詠美「はぁぁああっ!!」

容赦なく迫るキュウビの尾、それに詠美さんは、真っ向から刀を突き上げる。

キュウビ『ギュアアアアアア!!』

その激突は、詠美の方が上手だった。キュウビの尾には、刀身の中程まで深々と突き刺さり、空中に縫い止められる形で静止していた。

エヴァ「きっ、貴様ァァっ!」

詠美「この徳河詠美、甘く見ないことね……おお……おおおおっ!!」

詠美の全身から闘気が噴き上がる。
刀を握る手に更に力が込められ、キュウビの尾を引きずるようにして振りまわす。

そして最後に、尾を貫いたままで、切っ先が床へと突き立てられた。

キュウビ『ギュッ!ギュォォ!』

キュウビがもがくが、詠美がガッチリと抑え込んだ刀は抜けない。

尾を切り離せば抜けだすことも可能だが、ひとまとめにされている今それもかなわない。
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