ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕

ー大江戸学園:エレベーター前広場ー

想「そんな……クローンだなんて」

久秀「あり得ない訳じゃないわよ。そういう技術はもう充分確立されているわ。」

天「ホンマやで。まぁ、ワイのがカッコええけどな」

禍「同じ顔やろ。」

天「あはははっ!」

禍「あはははっ!」

魁人「哀れなものですね。」

天「はん?」

魁人「消えていたと思えば……クローンだなんて馬鹿げた事を……。」

天「凡人に天才の考えは分からんわな。」

伊万里「何いってやがる。狂人が、テメーの足が動かねぇからそいつを創ったんだろ」

天「……足が動かん?誰の?」

そういった天は車いすからゆっくりと立ち上がった。自分の足で立って、歩いたのだ。

魁人「……!」

伊万里「……!」

天「ふふっ、まだちょっと時間あるな。禍。遊んだり。」

禍「なに驚いとんねん。油断大敵で人生終了しとけ。」

一瞬の隙に禍が距離を詰め、伊万里めがけて大振りの蹴りを放った。しかし、伊万里はその蹴りをガードした。ただ、威力も相当なのだろう蹴りを受けた部分の服の布が吹きとんでいる。

伊万里「なめやがって!」

禍「はんっ!」

禍は伊万里目がけ腕を上から下へと振り下ろす。それだけで衝撃波が伊万里を襲った。しかし、その衝撃を炎が焼き払う。

伊万里「テメーの風は強い!だが、火は完全には消しされねぇ。その火はお前の風に煽られて全てのものを怒りと憎しみで焼き尽くす劫火となる!!」

魁人「マズイ。みなさん、伊万里から離れてください。」

魁人の叫びに久秀達は飛び退いた。離れても伝わってくるほどの熱気。大技を仕掛けるつもりだろう。

伊万里「橙竜の煉獄(ドラゴンオブインフェルノ)!」

伊万里を中心に炎の柱が立ち上がったが一瞬で消える。否、吹き消されたというのが正しいだろう。

天「くっはあ~~……たまらへん……!!ひっさしぶりやあ~~。まるでワイのためにあつらえたみたくピッタリやないか」

伊万里「馬鹿な……俺の炎を……いともたやすく消しさる風……」

禍ではなく、仕掛けたのは天。蹴りの形で止まっている天の足からくるぶし辺りまでのズボンはボロボロに吹き飛んでいて、そこから覗いているのは生身の足ではなく、無機質に輝く機械製の足。義足というにはどこか大型四足獣の足を象っているような荒々しく恐ろしいものだった。

天「やっぱり此処に来て正解だったな。コアシステムちゅーんを組みこんだら更に性能あがっとるやん」

禍「自分ばっかり遊んでズルイなぁ。俺にもやらせてや。」

鳥が翼を広げるように両手を挙げる禍。そして、羽ばたくように振り下ろすと天と同等、否、それ以上とも思える真空の弾丸が硬直中の伊万里を襲う。

着弾寸前、伊万里は突き飛ばされた。

伊万里「うわっ……魁人、てめっ!」

魁人「ふん、らしくない。俺に借りを創るなんて……。立て、奴らをぶっ飛ばすぞ」

伊万里「……ふん、お前とこうするのも久しぶりだな」

魁人と伊万里は互いの背を合わせて敵と対峙する。

魁人「天、紅蓮なる鬼が」

伊万里「禍、橙竜の劫火が」

「「貴様らを焼き尽くす!!」」

禍「阿保が!何が燃やしつくすじゃ!そんなもんワイが吹き消したるわぁぁ!!」

禍が二人の間に割って入るように飛びかかると踏みしめた地面が割れる。砕け跳ねた無数の破片が魁人と伊万里を貫いた。

しかし、その残像を置いて、魁人と伊万里は禍を左右から挟む形で立っている。

魁人「これだからあなたと組むのは嫌なんですよ。伊万里。いつも楽しむ間もなく戦が終わってしまう」

伊万里「禍……テメェが天のクローンでも、この竜と鬼の炎は消せねぇっ。」

魁人「獄炎よ!」

伊万里「劫火よ!」

魁人と伊万里は禍に無数の無数の無数の無数の無数の打撃と蹴りを浴びせる。そう、それはまるで二人以外の時間が止まったかのように一方的な攻撃。

天「アホぉ!!!!」

「「この穢れた魂を地獄の劫火で清めたまえ!!」」

大気が地がその摩擦によって燃えあがるようなあらゆる方向から撃たれ続ける物体が、時を止めたかのように為す術もなく立ち尽くすしかないような……超々高速連打。

禍「ぐおあっあああああ!!」
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