ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕

ー大江戸学園:スカイタワー頂上ー

悠「ふぅっ……!」

短く息を吐く。同時に左拳と右拳を放つ。ダッダッと打撃の音がほぼ重なって二度啼いた。しかし、敵は微動しかしない。

人は時に戦法を文字にあらわすことがある。例えば剛、例えば柔など……。小鳥遊悠は歪みひん曲がった戦い方をするものの例えるならば剛の者だろう。

しかし、敵は柔でもなくば剛でもない。寅のような鋭く重い蹴りも仕掛けて来なければ、摩耶のような受けからの重カウンターも使わない。

のらりくらりと攻撃をいなし、適度に反撃を仕掛けてくる。まるでこちらを包みこんでくる靄、霞……。

こちらが止まればあちらも止まる。いっそ刀を抜いてしまおうかと思考する。その時だった……。

白フード「抜かせはせんよ」

悠「……なんだちゃんと喋れるの、か」

おれは抜こうと思った刀から目を逸らす。

白フード「……小鳥遊悠。九頭竜さんが目にかけているとはやはり思えないな。」

悠「九頭竜「さん」?お前……天じゃないのか?」

白フード「いつ、私が天と名乗った?」

悠「何……じゃあ、天はどこだよ」

白フード「……そんなことはお前が知る必要はない。今、お前が成すべきことはなんだ?」

悠「おれがやるべきことは……お前を追っ払ってエヴァを倒すことだ!」

地面を踏みこみ前に出る。距離を詰めてインファイトの打撃なら防げないだろう。

白フード「甘いっ!」

悠「ぶわっ?!」

奴の懐に飛び込む寸前、壁、いや、分厚い綿にでもぶつかったようにおれは押し返されてしまう。

白フード「ふんっ!」

弾き返飛ばされたおれに風の拳をぶつけて追い打ちを仕掛けてくる。相変わらず威力は殴られてる程度でもしっかりと痛みを与えてくる。

悠「くそっ……。けど、ちょっと分かってきたぞ。風衝壁(バリアー)だな。」

空気を押しつける際に生まれる衝撃波で自分の前面に風の壁を作る龍剄。だが、おれの使う龍剄とはまるで質が違う。そもそも奴は衝撃波を生む動作を取っていない。

白フード「龍の鎌首は九つといわれていたのは、もはや過去のこと……生き物が進化するように、龍も新たな龍へと進化を遂げる。私の龍は雲、雲龍の剄……。」

雲……なるほど、どういうtrickなのか、分かんないけど、奴はほぼノーモーションで雲龍剄を発し、おれの打撃を遮り衝撃を奪った。

奪いきれない打撃だけをカードすればこっちの攻撃を完全に防いでるようにも見えるってわけか……いや、実際に防いでいるのだが……。

しかも、そこそこの威力の弾針剄や威力こそないが連射のきく風の拳……。攻防のバランスがかなり取れている……。飛びぬけて強い技が無い分……やりづらい。

悠「ちぃっ!」

怯んではいられない打撃を放つ。

しかし、意識すればハッキリと奴に着弾する前に分厚い雲に飲まれ衝撃を奪われる感覚。そして、あまつさえ拳を掴まれてしまった。

白フード「こんな……こんなものか!」

おれの鼻っ柱に拳がめり込む。そんなに強くないからといっても殴られれば痛い。顔面の鼻の中央となれば相当だ。よたつきつつ、流れ出る血を拭う。舐めやがって……。

悠「なら、見せてやるよ。こっちも龍をな!すぅぅぅっ……。」

空気を取り込む。肺いっぱい腹いっぱいに空気を取り込む、更に全身に酸素を供給し一気に圧をかける。ズキンっとした痛みと共に関節という関節にエアクッションが発生……。

翠龍の毒、発動。

白フード「来い!悠!」

悠「だあぁぁぁ!」

繰り出す拳がズパンっと雲の鎧を貫いたのを感じた。今までのように衝撃を殺し切られていない。

白フード「くっ……!」

敵は生身のガードに出るが重さ加わったのにその身が揺れた。雲龍剄というものはなかなかだがコイツ自体の身体能力はハッキリ言って低い。

毒に飲まれる前に……叩き伏せる!
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