ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【10】

ー大江戸学園:地下コアルームー

文「桃子さん!決闘終わったんですか?」

桃子「おお、そっちも無事だったか」

広間の一角の別室から文が飛び出してきた。その後ろから続いて出てきたのが数名の生徒たちが、監禁されていたという剣魂の保全、開発チームなのだろう。

文「キュウビが完成したら用なしとばかりに、ここに押し込められていたそうです。特別危害を加えられるようなことはなかったようですが……」

桃子「ん、あんた、写真の男だな……。文の兄貴か?」

光臣「ああ。俺が五十嵐光臣さ。なんでも必死に学園中探しまわってくれたそうじゃないか。兄冥利に尽きるってもんだねぇ」

文「……」

へらへらと締まりなく笑う光臣に、桃子は露骨に顔を歪めた。

桃子「何を喜んでんだよ。アンタ自分が何をょしてたのかわかってねーのか?」

光臣「ああ、あれかい。キミも正義の味方ってやつかい?」

桃子「ああ?」

光臣「俺たちは技術を開発しただけだ。ヨリノブやキュウビが暴れたどうこうと、それを俺達のせいにされても困るよ」

光臣に同調し、他のメンバーもうんうん頷く。

桃子「……」

光臣「剣魂は単なるツールだろう?ツールに善も悪もない。使う人物次第さ。俺たちはただ、技術発展のために全力を尽くしただけ。それを責められるいわれはないよ」

文「兄さん、そんな言い方をしなくても……」

桃子「……音信不通になっていたのは、監禁されてたわけじゃなく、単に喜んで自分から閉じこもってたせいかよ」

光臣「まぁ、ある意味ではそういってもいいかもね。開発中は至れり尽くせりだったね。朝から晩まで、研究だけに没頭していられたしね。」

桃子「…………文には悪いが、あんたはあたいが一番苦手なタイプだ。ちょっと好きになれそうにない。」

光臣「なんだ、君こそ、そんな言い方をする必要はないんじゃない?ま、聞き慣れてるからどうってことはないけどね」

いくら話をしても無駄だと悟った桃子は、小さく舌打ちをし、中央の柱の方へ向き直った。

桃子「解放してやったんだ。恩は返してもらうぞ」

光臣「恩?」

桃子「将軍を助ける方法を教えろ」

光臣「何だって?そんなことをしたらキュウビが止まってしまうじゃないか」

桃子「止めるんだよ!」

光臣「嫌だね。データの収集が全然できてない。今は稼働データを集めるべきだ」

桃子「な、何をばかなことをいってんだっ!」

文「兄さん……お願いです。助ける方法を教えてください。あの剣魂のせいでたくさんの人が困ってるんです。」

光臣「だが、ようやく初代の技術に追いついてきたばかりで……」

文「兄さん!島が沈んでみんな死んでしまっては意味がないでしょう!?」

光臣「わ、わかったよ……そんな顔をしないでくれ。俺だって文を悲しませたりたくないんだ」

文「それじゃあ……!」

光臣「でもなぁ……残念ながら俺たちじゃコアを操作することはできないんだ。」

桃子「な、なんだとぉ!?ここまでもったいつけときながらっ!!」

光臣「俺達はもう用済みなんだろ。そんなのに自由にさせないように、パスコードを変えておくのはセキュリティとして当然のことじゃないか」

桃子「ぬぐ……じゃ、さっさとそいつを破れよ!」

光臣「そんな簡単に言わないでくれよ。うからん、さて何日かかることか」

桃子「そ、そんなにまってられるわけ無いだろ!」

文「兄さん、何か言い方法はないんですか?」

光臣「う~ん、さてねぇ……」

シオン「何をくだらんことで悩んでいる。」

桃子「シオン……」
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