ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【10】

ー大江戸学園:スカイツリー頂上ー

唯「きゃあっ!!」

キュウビの尾のひとつが唯の間近へと振り下ろされた。その風圧だけで唯の華奢な身体は簡単に吹き飛ばされてしまう。

由真「唯っ!!」

姿勢を崩した唯の上にさらにもう一撃が落ちてくる。

悠「うおぉぉぉっ!」

唯「きゃあああっ!」

おれは猛然と突進し、間一髪で唯を尻尾の落下点から突き飛ばす。砕けたコンクリートの欠片がふたりの頭上に降り注ぐ。

エヴァ「ふん、何だか知らないけど、おかしなマネはさせないわよ?」

キュウビの尾は再びおれたちひとりひとりに狙いを定めて、それぞれ個別の生き物のように鎌首をあげる。

由真「……封印をかける隙がない。」

結花「だめ、尾の数が多過ぎるわ……」

結花さんのいうとおりだった。キュウビの尾の数がおれたの人数を凌駕している限り、隙は生まれない。

悠「寅、気合の残像は?!」

寅「駄目だ。あれは目で見てる分に効果はあっても意思のない尾に効果はねぇ」

吉音「よぉし、ならあたしが囮になって……」

詠美「無駄よ。私たちの力じゃひとり一本の尾を相手にするので精いっぱい。あの女もそれを分かってる。マークを外すようなことはしないわ」

吉音「うぐ……ぐぐ」

詠美「しかも……」

エヴァ「ふふふふ。あんた達は7人。そしてキュウビの尾は9本。これ、どういうことかわかるわよねぇ?」

おれたち全員、ごくりと息を呑んだ。剣魂の能力を吸収するキュウビの前にマゴベエやタケチヨは剣魂は使えない。

隊を分けたのは失敗だったのか。

いや街にもコアにも隊は必要だった。それにあのフード集団……援軍を呼ぶにもエレベーターは使えない……。

悠「ちっ……」

エヴァ「さて……誰から潰してほしい?やっぱりちんけな刀を振りまわすネズミを潰して憂いを絶ちましょうかぁ」

結花「くっ……」

エヴァ「キュウビ!!」

キュウビ『コォォーーンッ!』

由真「ひっ……!?」

キュウビの尾のうち三本が一挙に由真へと振り上げられる。

悠「ヤバッ!」

三本まとめての一撃なんて由真ひとりで受け止められるものではない。

けれど救いに行くにもおれ達もそれぞれ別の尾がけん制する。

エヴァ「まずは一匹目、と♪」

由真「きゃあああっ!!」

結花「由真ぁ!!」

唯「由真姉ぇ!!」

「「「うおあああっ!!」」」

三つの影が飛び込んで、由真を突き飛ばした。

エヴァ「何?」

平和「お待たせしたでござる!」

信乃「ど、どうにか間にあったようですね」

つばめ「はい~」

由真「あ、あなたたち!?」

吉音「お、大江戸探偵団!」

詠美「ど、どうやって……ここまで?」

平和「えっと、それはですねぇ……」

秘密同心:い「はぁはぁ……わ、我らが……送り届け申した」

ボロボロの覆面の男たちが、エレベーター穴からごろりと倒れた。

信乃「このひと達が私たちをおぶってここまで登って……」

吉音「す、すごい……」

詠美「秘密同心、あなたたちがどうして?」

秘密同心:ろ「わ……我らが主……柳宮十兵衛さまの命にござる!」

悠「師匠が?師匠は生きてるのか!?此処を登ってきたんだろう?師匠の姿は!?」

秘密同心:は「…………」

秘密同心:い「……拙者らが……命を受けたのは……この騒動の起る前にて」

秘密同心:ろ「悠殿らと……魔物との一戦、始まりし時……援軍を運び届けよと……」

悠「そう……か。」
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