ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【10】
ー大江戸学園:ツリー直通エレベーター前ー
踏み壊されていく風太郎……。雷太郎にとって風太郎は相棒でありもうひとりの自分のようなもの、そんな大事な相方が壊されていくのを黙って見ているのは何よりも苦痛だった。
王蟲「お前……動くなよ。」
雷太郎「っ…」
飛び出しそうになる身体に言葉のブレーキ。
王蟲「コイツを壊し終わったらきっちりとお前も壊してやる。だから、動くな。ヘタに動いたら……分かるだろ?」
風太郎「ぐっ……あぁ!!」
峨嵋刺はわざと風太郎の声が漏れるように足を揺らした。
雷太郎「くそっ!」
握った拳から血がにじみ出すほどの悔しさ……。
風太郎「ぁ…………ぃ……らぁ……」
王蟲「あ?なんだ?悲鳴ならもっと大きく上げろよ」
風太郎「ら……雷っ!!」
助けを求める風太郎の悲痛な叫び……。それを聞いた雷太郎の行動は早かった。峨嵋刺めがけて拳を突き放つ。
王蟲「馬鹿……がっ?!」
何のことはない峨嵋刺は雷太郎の拳を顔面で受けたのだ。回避も防御もせずに普通に殴り飛ばされた。
なぜ?王蟲ほどの残忍で力のあるものなら踏みつけている風太郎を踏み台にして避けることは用意。骨を踏み砕くという当初の目的も果たせて一石二鳥の筈。
だったが、それがどちらも出来なくなってしまった理由、それは風太郎の存在だ。蹴り伏せ動くことも出来なくなっていたはずの男が峨嵋刺の足を押さえつけたのだ。結果、峨嵋刺は風太郎を踏めば踏むほど捉えられてしまう。逃げるタイミングを完全に挫かれ雷太郎の打撃が直撃……。
衝撃に負けじと倒れそうになるのを何とか耐えた。しかし、次の瞬間、胸ぐらをつかみ上げられた。
雷太郎「今のは風に龍剄を撃ちこんだ分。これは風を踏みつけた分だ!」
殴り飛ばした横面に、もう一度同じ衝撃。
王蟲「ぐぁっ……き、貴様ぁ!!」
雷太郎「ふんっ!」
胸ぐらを掴まれ逃げることが叶わぬ峨嵋刺に雷太郎は頭突きをお見舞いする。
王蟲「このっ!!」
負けじと同じように頭をぶつけ返す峨嵋刺。何度も硬い物がぶつかる音が響く。
風太郎「ぐ……ぁぁ……!」
その音を聞き風太郎は身体を起こす。真空の砲弾を受けて無事だったのか?もちろん、無事ではない。彼を奇跡的に守ったのは師からの贈り物、カーボンナノチューブアラミド繊維入り防弾インナー。対龍剄を想定した防護服を着ていたことが幸いした。ただし、ダメージは深い。致命的な傷を負わなかっただけで、身体は瀕死だった。
そんな彼を起きあがらせたもう一つの要因、それは雷太郎との絆だった。
峨嵋刺にはわからなかっただろう。悲痛の助けを呼ぶ悲鳴のように叫んだ「雷」というたったひとこと……。
風太郎は助けを呼んだのではない「雷太郎。今がチャンスだ。このクソ蟲野郎をぶん殴ってくれ。」その想いを込めた叫びだった。その意味を雷太郎は瞬時に理解把握。頼んだ通り雷太郎は峨嵋刺を殴り飛ばしてくれた。
自らの満身と油断からやられてしまった自分のふがいなさを雷太郎が補ってくれている。そう考えるだけで瀕死の身体も動かせる力が湧いてきたのだ。
起きあがった上半身にさらに力を込めて起きあがる。片膝をついて、足をあげて、必死に身体を立ち上げた。ちょっと力んだだけで尋常じゃない痛みに加え腹部からの出血とせり上がってきた血が唇からこぼれた。
力が抜けて膝が折れかけたが誰かか肩を貸してくれる。誰かはもちろん、分かっている。
雷太郎「風…」
風太郎「はは……雷、ごめん。ありかとう。」
雷太郎「イケるか?」
風太郎「もちろんだよ。ふたりで」
雷太郎「ああ、ふたりで倒すぞ。」
王蟲「死にぞこないが……そんなにふたり仲良く死にたいなら。吹き飛ばしてやるよ」
峨嵋刺の両こぶしの髑髏が不気味に輝きだした。
踏み壊されていく風太郎……。雷太郎にとって風太郎は相棒でありもうひとりの自分のようなもの、そんな大事な相方が壊されていくのを黙って見ているのは何よりも苦痛だった。
王蟲「お前……動くなよ。」
雷太郎「っ…」
飛び出しそうになる身体に言葉のブレーキ。
王蟲「コイツを壊し終わったらきっちりとお前も壊してやる。だから、動くな。ヘタに動いたら……分かるだろ?」
風太郎「ぐっ……あぁ!!」
峨嵋刺はわざと風太郎の声が漏れるように足を揺らした。
雷太郎「くそっ!」
握った拳から血がにじみ出すほどの悔しさ……。
風太郎「ぁ…………ぃ……らぁ……」
王蟲「あ?なんだ?悲鳴ならもっと大きく上げろよ」
風太郎「ら……雷っ!!」
助けを求める風太郎の悲痛な叫び……。それを聞いた雷太郎の行動は早かった。峨嵋刺めがけて拳を突き放つ。
王蟲「馬鹿……がっ?!」
何のことはない峨嵋刺は雷太郎の拳を顔面で受けたのだ。回避も防御もせずに普通に殴り飛ばされた。
なぜ?王蟲ほどの残忍で力のあるものなら踏みつけている風太郎を踏み台にして避けることは用意。骨を踏み砕くという当初の目的も果たせて一石二鳥の筈。
だったが、それがどちらも出来なくなってしまった理由、それは風太郎の存在だ。蹴り伏せ動くことも出来なくなっていたはずの男が峨嵋刺の足を押さえつけたのだ。結果、峨嵋刺は風太郎を踏めば踏むほど捉えられてしまう。逃げるタイミングを完全に挫かれ雷太郎の打撃が直撃……。
衝撃に負けじと倒れそうになるのを何とか耐えた。しかし、次の瞬間、胸ぐらをつかみ上げられた。
雷太郎「今のは風に龍剄を撃ちこんだ分。これは風を踏みつけた分だ!」
殴り飛ばした横面に、もう一度同じ衝撃。
王蟲「ぐぁっ……き、貴様ぁ!!」
雷太郎「ふんっ!」
胸ぐらを掴まれ逃げることが叶わぬ峨嵋刺に雷太郎は頭突きをお見舞いする。
王蟲「このっ!!」
負けじと同じように頭をぶつけ返す峨嵋刺。何度も硬い物がぶつかる音が響く。
風太郎「ぐ……ぁぁ……!」
その音を聞き風太郎は身体を起こす。真空の砲弾を受けて無事だったのか?もちろん、無事ではない。彼を奇跡的に守ったのは師からの贈り物、カーボンナノチューブアラミド繊維入り防弾インナー。対龍剄を想定した防護服を着ていたことが幸いした。ただし、ダメージは深い。致命的な傷を負わなかっただけで、身体は瀕死だった。
そんな彼を起きあがらせたもう一つの要因、それは雷太郎との絆だった。
峨嵋刺にはわからなかっただろう。悲痛の助けを呼ぶ悲鳴のように叫んだ「雷」というたったひとこと……。
風太郎は助けを呼んだのではない「雷太郎。今がチャンスだ。このクソ蟲野郎をぶん殴ってくれ。」その想いを込めた叫びだった。その意味を雷太郎は瞬時に理解把握。頼んだ通り雷太郎は峨嵋刺を殴り飛ばしてくれた。
自らの満身と油断からやられてしまった自分のふがいなさを雷太郎が補ってくれている。そう考えるだけで瀕死の身体も動かせる力が湧いてきたのだ。
起きあがった上半身にさらに力を込めて起きあがる。片膝をついて、足をあげて、必死に身体を立ち上げた。ちょっと力んだだけで尋常じゃない痛みに加え腹部からの出血とせり上がってきた血が唇からこぼれた。
力が抜けて膝が折れかけたが誰かか肩を貸してくれる。誰かはもちろん、分かっている。
雷太郎「風…」
風太郎「はは……雷、ごめん。ありかとう。」
雷太郎「イケるか?」
風太郎「もちろんだよ。ふたりで」
雷太郎「ああ、ふたりで倒すぞ。」
王蟲「死にぞこないが……そんなにふたり仲良く死にたいなら。吹き飛ばしてやるよ」
峨嵋刺の両こぶしの髑髏が不気味に輝きだした。