ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【10】
ー大江戸学園:ツリー直通エレベーター内ー
悠「……」
吉音「心配?」
悠「まさか……ただ、爆音が聞こえなくなったなって思っただけだ」
十兵衛「……ごふっごふ」
不意に師匠がせき込んだ。
悠「師匠、大丈夫ですか?」
十兵衛「少しむせただけだ」
悠「師匠……」
おれは師匠の背中をさする。
おれの手のひらにはべっとりとした生温かいものが触れれるのを感じた。
寅「おい、それ……」
悠「師匠!」
十兵衛「心配するな、掠り傷だ」
こんな状態でおれと仕合っていただなんて。
悠「……」
十兵衛「お前に授けたその刀、返してもらわねばならなかったのでな」
悠「……この傷で戦うのは無理ですよ。奴らを倒すのは寅に任せて師匠は休んでいてください」
寅「ふん、確かに俺だけで充分だな。とっとと終わらせてお前と決着をつける」
悠「藪蛇……いや、藪寅だった」
十兵衛「ふふふ、勇ましいことをいう」
悠「師匠……」
そのときだった。
吉音「きゃああっ!?」
急にエレベーターに衝撃が走る。
悠「な、なんだ!?」
寅「……拳二のおっさんが殴り過ぎてタワーが傾いたか?」
悠「ありえ……る。」
詠美「しまった!罠だわ!この衝撃は……ケーブル!?あらかじめ切れ目を入れられていたようだわ!」
寅「なんだと!」
悠「それじゃこのエレベーターは……」
吉音「落ちちゃうの!?」
十兵衛「心配するな」
悠「えっ!?」
十兵衛「私がお前達を屋上まで必ず送り届けてやる」
悠「い、一体何をするつもりだ、師匠!?」
師匠は鞘を杖に立ち上がると、エレベーターの天井を刀で突き破った。
十兵衛「ケーブルが切れるなら、私がケーブルになってやるさ」
詠美「そ、そんなこと……!」
十兵衛「はっはっは!この程度のこと出来ずに十兵衛は名のれん」
師匠はエレベーターの天井に登るとケーブルを掴んだ。
悠「師匠の身体は今!」
十兵衛「このまま何もしなければ、全員まっさかさまに落ちてしまうんだぞ?」
悠「だけど、師匠が!」
十兵衛「行くぞ、うぉおおおお!!!」
肉の焦げる嫌な臭いがした。
吉音「じ、十兵衛師匠!あ、あたしも手伝う!」
十兵衛「来るな吉音!お前はこの後の戦いに力を残しておかねばならん!」
吉音「う、うう……でも、でも!」
悠「早く、早く着いてくれ!」
おれ達は必死の思いで祈り続けた。
吉音「着いたっ!」
悠「みんな、すぐに出るんだっ!」
詠美「分かってる!」
おれ達はエレベーターのドアの開く途端に外へと飛び出した。
十兵衛「ふうぅぅ……」
悠「師匠!手をっ!!」
十兵衛「ふふ、少し疲れたな。ちょっと休ませてもらうことにしよう。」
悠「し、師匠?」
十兵衛「後は任せたぞ、悠」
がくんとエレベーターが震えた。
悠「駄目だ!師匠、早く手をぉ!!!」
十兵衛「ふふ。どうも肩が外れてしまっているようでな」
悠「そっちに行きます!寅、手伝ってくれ!」
寅「おう。」
十兵衛「ばかもの。それじゃ意味がないだろうが」
師匠は困った笑顔をした。
十兵衛「さらばだ、悠」
悠「嫌だ!師匠!師匠!!」
十兵衛「悠、お前は私の……」
視界の最後に入ったのは師匠の笑顔だった。
悠「師匠ーーーーっ!!!」
永遠に思えるような時間の後に、遠くにエレベーターの客室が叩きつけられる音が響いた。
悠「……」
吉音「心配?」
悠「まさか……ただ、爆音が聞こえなくなったなって思っただけだ」
十兵衛「……ごふっごふ」
不意に師匠がせき込んだ。
悠「師匠、大丈夫ですか?」
十兵衛「少しむせただけだ」
悠「師匠……」
おれは師匠の背中をさする。
おれの手のひらにはべっとりとした生温かいものが触れれるのを感じた。
寅「おい、それ……」
悠「師匠!」
十兵衛「心配するな、掠り傷だ」
こんな状態でおれと仕合っていただなんて。
悠「……」
十兵衛「お前に授けたその刀、返してもらわねばならなかったのでな」
悠「……この傷で戦うのは無理ですよ。奴らを倒すのは寅に任せて師匠は休んでいてください」
寅「ふん、確かに俺だけで充分だな。とっとと終わらせてお前と決着をつける」
悠「藪蛇……いや、藪寅だった」
十兵衛「ふふふ、勇ましいことをいう」
悠「師匠……」
そのときだった。
吉音「きゃああっ!?」
急にエレベーターに衝撃が走る。
悠「な、なんだ!?」
寅「……拳二のおっさんが殴り過ぎてタワーが傾いたか?」
悠「ありえ……る。」
詠美「しまった!罠だわ!この衝撃は……ケーブル!?あらかじめ切れ目を入れられていたようだわ!」
寅「なんだと!」
悠「それじゃこのエレベーターは……」
吉音「落ちちゃうの!?」
十兵衛「心配するな」
悠「えっ!?」
十兵衛「私がお前達を屋上まで必ず送り届けてやる」
悠「い、一体何をするつもりだ、師匠!?」
師匠は鞘を杖に立ち上がると、エレベーターの天井を刀で突き破った。
十兵衛「ケーブルが切れるなら、私がケーブルになってやるさ」
詠美「そ、そんなこと……!」
十兵衛「はっはっは!この程度のこと出来ずに十兵衛は名のれん」
師匠はエレベーターの天井に登るとケーブルを掴んだ。
悠「師匠の身体は今!」
十兵衛「このまま何もしなければ、全員まっさかさまに落ちてしまうんだぞ?」
悠「だけど、師匠が!」
十兵衛「行くぞ、うぉおおおお!!!」
肉の焦げる嫌な臭いがした。
吉音「じ、十兵衛師匠!あ、あたしも手伝う!」
十兵衛「来るな吉音!お前はこの後の戦いに力を残しておかねばならん!」
吉音「う、うう……でも、でも!」
悠「早く、早く着いてくれ!」
おれ達は必死の思いで祈り続けた。
吉音「着いたっ!」
悠「みんな、すぐに出るんだっ!」
詠美「分かってる!」
おれ達はエレベーターのドアの開く途端に外へと飛び出した。
十兵衛「ふうぅぅ……」
悠「師匠!手をっ!!」
十兵衛「ふふ、少し疲れたな。ちょっと休ませてもらうことにしよう。」
悠「し、師匠?」
十兵衛「後は任せたぞ、悠」
がくんとエレベーターが震えた。
悠「駄目だ!師匠、早く手をぉ!!!」
十兵衛「ふふ。どうも肩が外れてしまっているようでな」
悠「そっちに行きます!寅、手伝ってくれ!」
寅「おう。」
十兵衛「ばかもの。それじゃ意味がないだろうが」
師匠は困った笑顔をした。
十兵衛「さらばだ、悠」
悠「嫌だ!師匠!師匠!!」
十兵衛「悠、お前は私の……」
視界の最後に入ったのは師匠の笑顔だった。
悠「師匠ーーーーっ!!!」
永遠に思えるような時間の後に、遠くにエレベーターの客室が叩きつけられる音が響いた。