ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【10】

ー大江戸学園:ツリー直通エレベーター前広場ー

エレベーターの扉が閉まるのをハッキリと確認し、逢岡想いは四方を見渡した。

前方は爆炎に包まれていて、左方の遠くでは髑髏フードと風雷コンビが戦っているのが分かる。しかし、他に居たはずの者たちは確認できない。

どこへ加勢しようかと一瞬悩んだが、視界の端に映ったものへと身体が動いた。

想「大丈夫ですか!」

魁人「ぅっ……」

意識はあるらしいが声が出ないのか小さく呻く姫川魁人。それでもどこかに傷を負っているらしく彼を中心に広がる水たまりには朱色が混ざっている。

想「どこに傷が……」

彼の身を起こそうと手を伸ばす想。

魁人「触るなッ!」

想「!?」

そう叫んだのは魁人だった。同時に口からは鮮血がこぼれて咳き込んだ。

魁人「がはっげほっ……」

想「し、しっかりしてください!」

再度手を伸ばすが、魁人はその手を払いのけていった。

魁人「触れ……ゲボっちゃ……駄目だ。ゲホ…、このっ……水は……龍剄……ゲホっ!」

咳き込み吐血しながら叫ぶ魁人。想は「水」そして「龍剄」という言葉を聞いて魁人から一歩下がる。

想「その水が……?」

魁人「くそっ……。奴は……紫龍の系譜……ぐっ。」

想「紫龍?なんなんですか!それは?」

魁人「紫龍の正体は……圧……」

想「圧?」

誰しもが遊んだ経験があるであろう、しゃぼん玉。

その時、気づかなかっただろうか、シャボン玉の水膜は高速で回転していて、その回転が止まると割れることを……これは「水は高速で動けば動くほど硬度を増す」という現象に起因していて鋼鉄の塊も寸断する水圧カッターなどもこの原理で作られている。

魁人「桁違いの……量の圧縮空気を……泡に封じ込めて……ある。もし……泡に触れたら……この様だ。」

爆ぜた泡は同じ水分を破裂させる。つまり、人間の体内に流れ続けている血液が破裂する。

想「そんな……技が」

魁人「ぐはっ……私の身体が回復するまで……時間がかかる。えーと、逢岡さん……でしたね?彼女を助けてあげてください。相手は……相当……手ごわい。」

魁人は爆炎の中を指さした。

想「しかし、アナタは!」

魁人「大丈夫…です。鬼は……この程度じゃ……くたばりませんから。それより、泡には……直接触れてはいけない……そして、あの技の弱点は…………」

想「……分かりました。すぐに戻ってくるので」

魁人「は……い。」

想は頭を下げ、その場から駆けた。




水玉フードの前に割って入った久秀は一定の距離をあけ、ダンジョーの能力をフル活用し火薬を発火させ続ける。

水玉フード「アッハーン!」

久秀に背を向け、ふざけた口調で笑(?)っている水玉フードのまわりにはブクブクッと大きな泡がいくつも湧きあがり爆炎は遮られている。

久秀「まったく……気色の悪い「女」ね。まっ、エレベータは行ったみたいだし。ダンジョー爆壁はもういいわ。」

ダンジョー『ジョー!』

広範囲に展開していた火薬が停止する。それと同時に爆炎も次第に収まり、後に残ったのは濃厚な火薬の匂いだ。

水玉フード「おんや、花火はおしまい?それじゃあぁ……ふたりで甘ーい、蜜の時間を楽しもうじゃないかぁ」

水玉フードジャケットを脱ぎ捨てて、女は両足を大きく開いた。そして、そのまま前屈をし、股から覗くような体勢になる。

久秀「あなた……下品よ。けど……そんなに相手をして欲しいなら根元までブチ込んであげるわ。」

久秀は火薬扇を持ってニタリッと笑った。

ダンジョー『ジョー…』
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