ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【10】

ー大江戸学園:ツリー直通エレベーター前広場ー

寅「オラァっ!」

悠「ぶべっ!!」

エレベーターのなかに放り込まれるおれ。そしてトドメでも刺すつもりなのか寅が押し潰してくる。

吉音「悠、おかえり!」

悠「お、おう……」

エレベーターにはぎちぎちでおれと寅、吉音と詠美、師匠が乗っている。

想「微力ながら私もお供します!」

十兵衛「まぁ待て、想。このエレベーターは一度に五人しか乗れん。私たちが屋上へと向かう。」

悠「逢岡さん、そいつらの援護してやってください。」

想「で、ですが……」

逢岡さんは吉音の顔を見る。

吉音「あたしたちは大丈夫だよ!想ちゃんはみんなを助けてあげて。」

想「分かりました。では後ほど、必ず!」

大きく頷くと、逢岡さんはエレベーターを死守するように背を向けた。

吉音「さあっ、行くぞーー!!」

詠美「執行部の管理パスが通ってよかったわ。パスを変えられていたらと心配したのだけど。」

詠美のアクセスキーでエレベーターを動かすことができた。数百メートルのエレベーターだ。いくら高速といっても数分はかかる。

おれ達は気持を押さえて、戦いに備える。

寅「……お前、あの敵と面識はあったのか?」

悠「いいや、強いて言うなら死の面に一回襲われただけだ。」

吉音「あの気持ち悪いのって……人間なの?なんかお化けみたいな顔してたよ?」

悠「さぁな……拳二曰く、虎城(フーチェン)って奴らしいけど。おれもわけわかめだよ」

詠美「アレもエヴァの手下なのかしら……。」

悠「……いや、多分だけど天。九頭竜天の手の者だと思う。龍剄を使ってたし」

吉音「りゅうけいって……確かたまに悠がパーンってするやつだよね。」

悠「パーンって…」

寅「龍剄っていえばあの場に居た他の奴らも妙なことして来やがったな」

悠「髑髏柄のフードを被ってたやつは多分、蒼龍剄系統の技だったと思うんだが……水玉フードの奴は分からなかった。しかも、魁人が……」

寅「あの男なら死んじゃいないだろ。雲水のオヤジが遣わした奴だぞ」

悠「だよ……な。逢岡さん、大丈夫だろうか」

吉音「大丈夫!想ちゃんは強いもん!」

悠「……だな。」

詠美「そういえば、あの男の人は?悠を守ってくれた」

悠「あれは……ゴリラです」

詠美「ゴリ……えっ?」

悠「ゴリラです。あんな適当なパンチで人を吹き飛ばせる生き物はゴリラなんです」

寅「お前、無理矢理にでも好感度下げようとしてねぇか?」

悠「拳二があんなカッコいいなんて認めない!あれはゴリラなんだよ!」

寅「アホか」

吉音「でも、カッコ良かったよね。」

悠「駄目よ!駄目駄目!」

寅「ウゼェ…」

詠美「結局誰だったの…」

寅「ヤクザだ」

詠美「ヤク……え、えぇ……どういうこと?」

寅「こいつのツレだよ。コイツはそういう奴らとのツレが多いんだよ」

悠「そ、そんなことねーし。おれのツレは皆気さくでイイ奴ばっかりだし!」

寅「前後に札付きの悪って言葉が付くだろ」

悠「……ツ、ツカネーヨ」

詠美「カタコトになってるし目が泳いでるわね。」
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