ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【10】
ー大江戸学園:ツリー直通エレベーター前広場ー
十兵衛「来たな、悠」
聞きなれた厳しくも優しい声にはっとして見やる。
悠「師匠!!無事でしたか!」
ツリー頂上へと向かう直通エレベーター。
そのたったひとつの扉の前にあの荒々しいシルエット。
そう。現れたのはおれの師匠、柳宮十兵衛だった。
師匠の制服はところどころほころび、眼帯も付けていなかった。明らかに激しい戦いを行ったのだと分かる。
しかしその傷ついた姿と反して、その姿勢は揺らぐことはなく、凛として立つ。
いや、普段よりも豪として見えるほどだ。
十兵衛「無事?……フッ、お前に心配してもらうようなことはないが」
悠「えっ、あの化け物とたったひとりで勝ったっていうんですか?」
キュウビにはおれ達がみんなでかかって全く歯が立たなかった。師匠はあの怪物とひとりで戦ったのだ。そして今、こうして当たり前のようにおれ達の前に立っている。
十兵衛「ふふ。じゃれかかっているイヌとちょっと遊んでやっただけだ。お前たちの手柄を横取りするようなことはせんよ」
腕組のまま師匠は鼻を鳴らした。
いつもと変わらない無敵の師匠だった。
悠「は、はぁ……」
師匠が無事だった安堵と、その無双っぷりへの呆れでため息が出た。
吉音「十兵衛さん、味方だったんだね!疑ってごめんなさい。」
十兵衛「味方か……同じ方向を向いているうちはな。私は学園の守護者。学園を悪しき方向へと導こうとするのなら誰の敵ともなる。」
吉音「わ、分かった……」
詠美「十兵衛さん、エヴァは……」
十兵衛「ああ。このツリーの屋上だ」
悠「何だってあんなところに……」
十兵衛「あの女は日本政府に莫大なこの城金と逃走用のヘリを要求している。人質は学園の生徒十万人の命だ。」
詠美「どこまで卑劣なの!」
吉音「絶対に逃がさないぞ!」
悠「では師匠。エヴァを追います」
もうひとときの猶予もない。おれは師匠の腋を抜けて、エレベーターの扉へと向かおうとした。
師匠の剣が踏切の遮断機のように、おれ達の行く手を塞いだ。
十兵衛「稽古をつけてやろう、悠。この試練乗り越えることができれば、免許皆伝としよう」
きょとんとするおれに師匠は普段と何も変わることのない様子でおもむろに稽古を始めようとする。
詠美「十兵衛さん、今はそんなことをしている場合じゃ……」
悠「そうですよ、師匠。冗談はヨシコちゃんですよ」
久秀「アンタも大概よ?」
十兵衛「いいや、冗談ではない。ここを通すわけにはいかん」
おれ達の抗議にも師匠は表情一つ変えない。
悠「師匠!」
十兵衛「愚か者。この試練越えられぬようならエヴァを倒すことなど到底かなわぬのだ。むざむざ弟子を犬死させること出来ぬ親心が分からんか」
たしかに……。ついさっきまるで歯が立たなかった敵に、このまま闇雲に再戦して、賞賛があるかと問われれば返す言葉もない。
悠「……どうあってもこのままでは道を開けてはくれないのですね?」
十兵衛「そうだ」
師匠が一度言いだしたら聞かないのは弟子のおれが良く知っている。時間がない事は師匠だって分かっているはずだ。
それなのに稽古をつけようという師匠。其処に何か考えがあるに違いない。
師匠を信じるしかない。
おれは振り返って皆の顔を見た。皆もその意図を悟って、不安げながらうずいてくれた。
悠「……分かりました。最後の稽古、お受けします」
十兵衛「うむ」
吉音「悠……」
十兵衛「来たな、悠」
聞きなれた厳しくも優しい声にはっとして見やる。
悠「師匠!!無事でしたか!」
ツリー頂上へと向かう直通エレベーター。
そのたったひとつの扉の前にあの荒々しいシルエット。
そう。現れたのはおれの師匠、柳宮十兵衛だった。
師匠の制服はところどころほころび、眼帯も付けていなかった。明らかに激しい戦いを行ったのだと分かる。
しかしその傷ついた姿と反して、その姿勢は揺らぐことはなく、凛として立つ。
いや、普段よりも豪として見えるほどだ。
十兵衛「無事?……フッ、お前に心配してもらうようなことはないが」
悠「えっ、あの化け物とたったひとりで勝ったっていうんですか?」
キュウビにはおれ達がみんなでかかって全く歯が立たなかった。師匠はあの怪物とひとりで戦ったのだ。そして今、こうして当たり前のようにおれ達の前に立っている。
十兵衛「ふふ。じゃれかかっているイヌとちょっと遊んでやっただけだ。お前たちの手柄を横取りするようなことはせんよ」
腕組のまま師匠は鼻を鳴らした。
いつもと変わらない無敵の師匠だった。
悠「は、はぁ……」
師匠が無事だった安堵と、その無双っぷりへの呆れでため息が出た。
吉音「十兵衛さん、味方だったんだね!疑ってごめんなさい。」
十兵衛「味方か……同じ方向を向いているうちはな。私は学園の守護者。学園を悪しき方向へと導こうとするのなら誰の敵ともなる。」
吉音「わ、分かった……」
詠美「十兵衛さん、エヴァは……」
十兵衛「ああ。このツリーの屋上だ」
悠「何だってあんなところに……」
十兵衛「あの女は日本政府に莫大なこの城金と逃走用のヘリを要求している。人質は学園の生徒十万人の命だ。」
詠美「どこまで卑劣なの!」
吉音「絶対に逃がさないぞ!」
悠「では師匠。エヴァを追います」
もうひとときの猶予もない。おれは師匠の腋を抜けて、エレベーターの扉へと向かおうとした。
師匠の剣が踏切の遮断機のように、おれ達の行く手を塞いだ。
十兵衛「稽古をつけてやろう、悠。この試練乗り越えることができれば、免許皆伝としよう」
きょとんとするおれに師匠は普段と何も変わることのない様子でおもむろに稽古を始めようとする。
詠美「十兵衛さん、今はそんなことをしている場合じゃ……」
悠「そうですよ、師匠。冗談はヨシコちゃんですよ」
久秀「アンタも大概よ?」
十兵衛「いいや、冗談ではない。ここを通すわけにはいかん」
おれ達の抗議にも師匠は表情一つ変えない。
悠「師匠!」
十兵衛「愚か者。この試練越えられぬようならエヴァを倒すことなど到底かなわぬのだ。むざむざ弟子を犬死させること出来ぬ親心が分からんか」
たしかに……。ついさっきまるで歯が立たなかった敵に、このまま闇雲に再戦して、賞賛があるかと問われれば返す言葉もない。
悠「……どうあってもこのままでは道を開けてはくれないのですね?」
十兵衛「そうだ」
師匠が一度言いだしたら聞かないのは弟子のおれが良く知っている。時間がない事は師匠だって分かっているはずだ。
それなのに稽古をつけようという師匠。其処に何か考えがあるに違いない。
師匠を信じるしかない。
おれは振り返って皆の顔を見た。皆もその意図を悟って、不安げながらうずいてくれた。
悠「……分かりました。最後の稽古、お受けします」
十兵衛「うむ」
吉音「悠……」