ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【10】
カウントダウンは進む。
ツリーに向かった悠たちがエヴァを打ち倒すことを信じつつ、光姫は生徒たちを誘導していた。
島の中心部に位置する発電施設から少しでも遠ざけようと、彼女は生徒たちを出来るだけ島の外縁部へ避難させようとしていた。
また同じころ、越後屋山吹も商人たちを先導、商船を流用して生徒たちの避難を助けていた。
それでも数万の生徒の避難は簡単ではなかった。
しかも剣魂の檻より放たれた未調整剣魂の襲撃は避難誘導をより一層困難なものにしていた。
避難する生徒を守るため、朱金を中心とする旧奉行所勢が防衛線を引いて戦ってはいたものの、雲霞の如き剣魂の数に苦戦を強いられていた。
ー大江戸学園:広間ー
由佳里「横四列ずつに並んですすんでくださーい」
銀次「剣魂は奉行所の連中が防いでくれてるから安心してくれ。とにかく焦らずに避難場所に向かうんだー」
由佳里「この中にー、剣徒の方がいらっしゃいましたらー、奉行所の皆さんをー、手伝ってあげてくださーい」
ヤシチ『クマー!クマー!』
銀次「お嬢、こんだけの人数だ。スケ・カクの印籠を使って、いうこと聞かせた方が早いんじゃないか?」
光姫「いや、それは出来ん。スケ・カクは剣魂の迎撃方に回しておる。呼び戻せばそこの防衛線が薄くなる。突破されでもすれば一層厄介なことになる。それに、この状況で生徒らを力で押さえつけるのは得策ではない。徒に不安を煽り、パニックをより大きくするだけじゃ」
銀次「……分かった。お嬢のいうとおりかもしれねぇ」
女子生徒D「光姫様……学園は、私達はどうなってしまうんでしょうか?」
光姫達の元に不安げな顔をした女生徒が声をかけてきた。
光姫「安心せい。今、吉音や詠美たちがツリーへと向かっておる。あやつらなら邪悪を討ち、学園に平和を取り戻してくれる。」
由佳里「こうして避難しているのはあくまで念のためです。すぐに家に戻れますからね!」
女子生徒D「は、はい!」
男子生徒H「け。戦いに行ったんじゃなくて、先に逃げたんじゃねぇのかよ?」
由佳里「えっ……?」
銀次「おい、失礼だぞ。なら、こうしてお嬢が避難誘導しているのは何なんだ?」
男子生徒H「知るかよ。どうせヤバくなったらすぐに逃げるんだろ」
光姫「わしは最後まで残るつもりじゃ」
男子生徒H「ふん、どうだかな。どけよ、ちんたら並んでられるか」
肩を突き飛ばされる光姫。
銀次「お嬢っ!」
由佳里「光姫様!」
小柄な光姫はぐらりとバランスを崩す。
光姫「おっと……」
哲夫「大丈夫ですか?」
倒れそうになった光姫を後ろからひとりの男子生徒が支えた。
いづみ「女の子に手を出すなんてかっこわるいわね!不安なのはあなただけじゃないのよ」
男子生徒H「なっ……!」
いづみ「さっさと列に戻りなさいよ」
哲夫「ここから離れてどこに行ったって安全なところなんてない。今、僕たちが向かっている場所以外にな」
列に並んでいた生徒たちも口々に列から外れた男子生徒を非難する。
男子生徒H「う……く……」
逃げるようにして列の後ろにつく男子生徒。
光姫「ん、お主らは……」
哲夫「以前、助けて頂いたカメラマンの哲夫です」
いづみ「お久しぶりです。モデルのいづみです。あのときはどうもありがとうございました。」
光姫「ああ、お主らか。覚えて居るぞ。お主らのおかげで騒ぎが大きくならずに済んだぞ。今度はわしがお礼をいう番じゃな」
哲夫「あ、それだったらまたグラビアを……って、あいたっ!」
いづみ「今はそんなこといってる場合じゃないでしょ!」
光姫「ふふふ。事が落ち着いたらな」
ふたりは列に戻っていく。
由佳里「み、光姫様、大丈夫ですか?」
光姫は微笑みながら頷いた。
光姫「まあに、すぐに落ちつく……」
そしてツリーへと目をやるのだった。
ツリーに向かった悠たちがエヴァを打ち倒すことを信じつつ、光姫は生徒たちを誘導していた。
島の中心部に位置する発電施設から少しでも遠ざけようと、彼女は生徒たちを出来るだけ島の外縁部へ避難させようとしていた。
また同じころ、越後屋山吹も商人たちを先導、商船を流用して生徒たちの避難を助けていた。
それでも数万の生徒の避難は簡単ではなかった。
しかも剣魂の檻より放たれた未調整剣魂の襲撃は避難誘導をより一層困難なものにしていた。
避難する生徒を守るため、朱金を中心とする旧奉行所勢が防衛線を引いて戦ってはいたものの、雲霞の如き剣魂の数に苦戦を強いられていた。
ー大江戸学園:広間ー
由佳里「横四列ずつに並んですすんでくださーい」
銀次「剣魂は奉行所の連中が防いでくれてるから安心してくれ。とにかく焦らずに避難場所に向かうんだー」
由佳里「この中にー、剣徒の方がいらっしゃいましたらー、奉行所の皆さんをー、手伝ってあげてくださーい」
ヤシチ『クマー!クマー!』
銀次「お嬢、こんだけの人数だ。スケ・カクの印籠を使って、いうこと聞かせた方が早いんじゃないか?」
光姫「いや、それは出来ん。スケ・カクは剣魂の迎撃方に回しておる。呼び戻せばそこの防衛線が薄くなる。突破されでもすれば一層厄介なことになる。それに、この状況で生徒らを力で押さえつけるのは得策ではない。徒に不安を煽り、パニックをより大きくするだけじゃ」
銀次「……分かった。お嬢のいうとおりかもしれねぇ」
女子生徒D「光姫様……学園は、私達はどうなってしまうんでしょうか?」
光姫達の元に不安げな顔をした女生徒が声をかけてきた。
光姫「安心せい。今、吉音や詠美たちがツリーへと向かっておる。あやつらなら邪悪を討ち、学園に平和を取り戻してくれる。」
由佳里「こうして避難しているのはあくまで念のためです。すぐに家に戻れますからね!」
女子生徒D「は、はい!」
男子生徒H「け。戦いに行ったんじゃなくて、先に逃げたんじゃねぇのかよ?」
由佳里「えっ……?」
銀次「おい、失礼だぞ。なら、こうしてお嬢が避難誘導しているのは何なんだ?」
男子生徒H「知るかよ。どうせヤバくなったらすぐに逃げるんだろ」
光姫「わしは最後まで残るつもりじゃ」
男子生徒H「ふん、どうだかな。どけよ、ちんたら並んでられるか」
肩を突き飛ばされる光姫。
銀次「お嬢っ!」
由佳里「光姫様!」
小柄な光姫はぐらりとバランスを崩す。
光姫「おっと……」
哲夫「大丈夫ですか?」
倒れそうになった光姫を後ろからひとりの男子生徒が支えた。
いづみ「女の子に手を出すなんてかっこわるいわね!不安なのはあなただけじゃないのよ」
男子生徒H「なっ……!」
いづみ「さっさと列に戻りなさいよ」
哲夫「ここから離れてどこに行ったって安全なところなんてない。今、僕たちが向かっている場所以外にな」
列に並んでいた生徒たちも口々に列から外れた男子生徒を非難する。
男子生徒H「う……く……」
逃げるようにして列の後ろにつく男子生徒。
光姫「ん、お主らは……」
哲夫「以前、助けて頂いたカメラマンの哲夫です」
いづみ「お久しぶりです。モデルのいづみです。あのときはどうもありがとうございました。」
光姫「ああ、お主らか。覚えて居るぞ。お主らのおかげで騒ぎが大きくならずに済んだぞ。今度はわしがお礼をいう番じゃな」
哲夫「あ、それだったらまたグラビアを……って、あいたっ!」
いづみ「今はそんなこといってる場合じゃないでしょ!」
光姫「ふふふ。事が落ち着いたらな」
ふたりは列に戻っていく。
由佳里「み、光姫様、大丈夫ですか?」
光姫は微笑みながら頷いた。
光姫「まあに、すぐに落ちつく……」
そしてツリーへと目をやるのだった。