ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【10】

ー大江戸城:城門前ー

銀次「さっきエヴァは学園を吹き飛ばすといったが、あの女が島と一緒に心中すると思うかい?」

悠「……なるほど」

銀次「あの女のことだ、すでに手を打っているはずだ」

光姫「おそらく学園の生徒を人質にして日本政府を脅迫しておる。要求は莫大な身代金と逃走用のヘリといったところじゃな」

詠美「とすれば……エヴァはヘリポートにあるツリーの屋上に?」

銀次「十中八九間違いないだろうな」

吉音「それじゃすぐにツリーへ」

悠「待て吉音。キュウビの力は見ただろ。何か手を打たなきゃ勝利の可能性はゼロだぞ」

朱金「そのキュウビってのはそんな強いのかよ?」

銀次「キュウビは莫大な金をつぎ込んで開発されたレギュレーション破りのチート剣魂だ。生半可な強さじゃない。」

真留「ヨリノブよりも、ですか?」

銀次「ヨリノブなどキュウビ開発のデータを取るためのプロトタイプに過ぎない。なんたって吉彦が横領したとされてる執行部費がほとんど突っこまれてるからな」

詠美「私たち二人に松永さんと光姫さんと銀次さんの力を合わせてもまるで相手にならなかった」

吉音「うん」

真留「ちょ、ちょっと待ってください。そんなバケモノどうやったら……」

光姫「残念じゃが、キュウビの強さはそれだけではないのじゃ」

朱金「げ……まだ何かあんのかよ?」

光姫「話はそこの瓦版屋のほうが詳しいじゃろ」

悠「輝が……?」

輝「あ、おいらの大魔神の生体コアの技術がキュウビってのに流用されてるからね」

朱金「何だと!おい、知ってることを全部話せ」

輝「ほら、大魔神のなかに酉居がいただろ?コアとして中に人を入れることでプログラムが格段にパワーアップするのさ」

悠「いつからエヴァと繋がりがあったんだ?」

輝「そのエヴァってのは大御所のことだよね?だったら剣魂システムへのクラック中に。ま、そんときはまさか正体が鼎ちゃんだったりとかは知らなかったんだけどさ」

悠「クラック?お前そんなことやってたのかよ」

輝「うん、大魔神作りのために何かデータを盗めないかと思って。で、侵入してたとこを見つかっちゃって。怒られるかなぁと思ったんだけどさぁ……協力したら見逃してくれるうえに、大魔神開発資金の援助もしてくれるっていうからさぁ」

真留「それで手を貸したんですか?」

輝「だって美味しい話だったんだもん~。そんなわけでキュウビってのにも生体コアが入ってると思うよ~ぴぽぽぽん♪」

伊都「ホントに反省の色がないですわね、あなたは」

ゴッ!
輝「あつっ!?」

伊都「魔神には葉蔵。ならキュウビにはいったい誰が?」

輝「えっと、そいつはおいらもよく知らないんだけど……」

光姫「吉彦じゃよ」

伊都「まさか将軍を……?」

光姫「ああ。コアとして治めるには申し分なかろう」

輝「あ、そか。徳河の人間をとりこんどけばシステムの生体認証も簡単にくぐれる」

詠美「しかも人質を隠すのにこれ以上とない場所……最強の牢獄」

魁人「うかつに攻撃も出来ない……ということですか?」

銀次「いや、あくまでデータである剣魂の性質上、直接キュウビの腹の中に吉彦殿がいるわけじゃない」

光姫「ツリーの地下の剣魂システムの本体、そこに囚われていることは調べがついておる。そしておそらく文の兄らも同じ場所に何禁されておるじゃろう」

光姫さんは二手に分かれてのツリー攻略を指示した。

ツリーの屋上で待ち構えているであろうエヴァの討伐に吉音に詠美、そしておれ。あと久秀と魁人、伊万里、寅と風雷コンビの豪華なおまけ付き。

またツリーの地下に囚われの前将軍の救出には鬼島さんと文を送る。

光姫さんの行動はさすがに迅速だった。彼女は養生所に前もって使いを送っていた。

そして連絡を受けた鬼島さんらはすでに行動を起こしていたという。

コアシステムには当然強力な護衛が配置されていると考えられる。だがあの二人ならきっとくぐり抜けて彼らを救いだしてくれるだろう。

ただしツリーの攻略だけに注力出来るわけではない。

エヴァの放送により島内がパニックに陥っていることが予想され。そこで光姫さん自らが生徒たちの避難誘導に当たることを申し出た。もちろん光姫さんたちだけでは数万の生徒を裁捌くのは不可能だ。

しかし既に彼女は解体されていた旧奉行所の役員を再招集していた。また剣魂の檻がひらかれたため未調整の低級剣魂が学園内に大量に放たれている。

その迎撃には長谷河さん率いる火盗に執行部直属の軍を取り込んで当たらせる。

全てが見えていたかのような鮮やかな手並みに感嘆する。

奇しくも学園最大の危機に際してようやく学園の意思がひとつにまとまり、決戦へと向かおうとしていた。
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