ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【10】

ー大江戸城:城門前ー

詠美「このひと達は?」

悠「ええと、こっちが魁人、あっちが伊万里、エヴァと手を組んでいるある男からおれを護衛するためにここに潜入した奴らなんですけど……」

魁人「不法侵入なのは重々承知していますが今は緊急事態なのでお目を瞑り願います」

詠美「手を組んでいる男……?」

魁人「えぇ、まぁ、説明すると長いので省きますが敵であるのは確かです」

悠「っか、いつのまにか大神さんがいるな。あとなんで酉居のやつが寝てるんだ?」

朱金「伊都は途中から助太刀してくれてな。今回の一番手柄かもな。あと酉居の奴が大魔神の中身だったんだ」

悠「中身?何かよくわからんけど……」

朱金「そっちこそ行ったときより人数が増えてんじゃねぇか。結局連れて来ちまったのかよ」

吉音「うん」

朱金「で、ふたりはしっかり話は出来たのかい?」

吉音「うん、ありがとう。みんなのおかげだよ」

朱金「そっか、そいつぁ、よかった」

詠美「いろいろ言いたいことはあるでしょうが、今は共に戦わせてくれないかしら」

朱金「かーかっかっ。この火事場でこまけぇことはいいっこなしにしようぜ」

朱金は詠美の背中をばんばんとたたいた。

詠美「あ、ありがとう」

真留「ところで。とても慌てて出てこられましたが、城内で何かあったんですか?」

そう。城門前の勝利ムードとは逆におれ達の方は完敗して逃げてきたのだ。

悠「ああ、実は……」

エヴァやキュウビの話をしようとしたそのときだった。

エヴァ『あーあー。大江戸学園生徒のみなさーん、聞こえてますかー?』

悠「なにっ!?」

全校放送のスピーカーから流れだしたのはなんとあのエヴァの声だった。

朱金「なんだ?この声は鼎ちゃんか?」

光姫「あやつは教頭ではない」

真留「え、どういうことですか?」

悠「飛鳥鼎が全ての黒幕だったんだ」

朱金「なんだと!?」

エヴァ『はーい、校長代理の飛鳥鼎先生ですよ~』

脳天気な声が学園に響く。

悠「……」

エヴァ『これから皆さんに大変重要なお話がありまーす。突然ですが、学園を吹っ飛ばしちゃうことにしました~』

伊都「カナエちゃんは一体何をいってるんですの?」

エヴァ『この学園がほんっとうに大好きでした。だからあたしのものにしちゃうつもりでした。そのためにとっても長い長い間、準備してきたんですよ?でも……邪魔をしてくる人が沢山いまして~。もうめんどくさくなっちゃったんですよね。手に入らないなら壊しちゃうことにしました。これからツリーの送電システムを暴走させちゃおうと思ってま~す♪』

朱金「え、そしたらどうなるんだ?」

詠美「島の電力管理はツリーのシステムが行っているの。それを暴走させられたら過電流状態になって火災や爆発が起こる可能性があるわ」

光姫「いいや。それだけではすまん。大江戸城の地下の地熱発電施設自体が爆発して島が沈むぞ」

悠「爆破ってバイハザかよ……」

エヴァ『プログラムを走らせれば、一時間もしないうちに爆発しちゃいます。ちなみに島には船も飛行機もありませ~ん』

朱金「なんて煽り方しやがる。やべえぞ、パニックが起こるぜ!」

エヴァ『あ、そうそう。ついでに「剣魂の檻」も解放しときましたからね♪』

銀次「何だと……」

吉音「剣魂の……檻?それは何?一体何が起こるの?」

詠美「まだ調整を受けていない剣魂のデータが収められたサーバのことよ」

銀次「結論から言えば、主を持たない低級な剣魂が学園に溢れだすことになる。知能が低くコントロールされない剣魂はたとえるなら野犬の群れだ。放たれれば見境なく生徒らを襲うぞ」

悠「いよいよ、バイハザだ…」

朱金「くそっ……どうすりゃいいんだ!」

悠「エヴァを倒さなきゃ……」

吉音「大江戸城に戻る?」

銀次「いや……エヴァならすでに移動しているはずだ」

悠「一体どこに?」

銀次「ツリーだ」

おれたちは一斉にツリーを見上げた。
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