ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【10】

ー大江戸学園:執行部室ー

光姫「今はそれよりも片付けねばならぬことがあるのう、校長代理?」

鼎「水都さん……あなた、今頃どうして?」

光姫「どうして、とは心外じゃな。用向きが済んだから戻ってきただけじゃ。目障りなわしを上手く追い出したつもりだったんじゃろうがな。追い出されるのはお前の方じゃ」

鼎「な、何をいってるんですか、光姫さん?い、今は柳宮十兵衛に奪われた将軍の刀を……」

光姫「ええい、見苦しいぞ!もう全て調べがついておるのじゃ」

鼎「い、一体何のことだか、先生全然分かりませんけど?」

光姫「ふふん。大した演技力じゃな、校長代理?」

鼎「え、演技?何をいってるんですか?」

光姫「飛鳥鼎……もう、その名前で呼ぶ必要もないじゃろう」

悠「どういうことですか?」

光姫「どうということもこうということも、こやつは飛鳥鼎ではないということじゃ」

吉音「飛鳥先生が飛鳥先生じゃない?ますます分かんないよ、ミッキー」

光姫「本物の飛鳥鼎は10年前に死亡しておる。こやつは入れ替わった偽物じゃ」

詠美「そんな……」

光姫「卒業名簿を調べたのじゃデータ化されたものは既に改ざんされておったが、旧史料室には紙媒体の名簿が残っておったのじゃよ。ファイルは膨大じゃったが、わしには由佳里がおるからの。よく似せてはおるが、貴様は卒業生の飛鳥鼎とは別人じゃ」

銀次「本物の飛鳥鼎は貧乳でな」

鼎「せ、成長したんです!」

銀次「もちろんそれだけで甘えが飛鳥鼎の偽物だなんて言っているわけじゃない。毛髪のDNA鑑定も済ませてあるんだよ」

鼎「くっ……」

銀次「鑑定の結果はもちろん完全に別人。日本人ですらない」

悠「なんだって!」

光姫「もうこれ以上しらばくれることは出来んぞ。いい加減に観念して白状してはどうじゃ?さまざまな事件の糸を操り、混乱を引き起こし、その隙に乗じて執行部を裏から操り、その実権を握ろうとした全ての黒幕、大御所。」

鼎「ふふっ……ふふふふ」

追いつめられた飛鳥鼎……とかつて呼ばれていた女は含み笑いを漏らす。

悠「……」

鼎「あははははっ!大御所のこともバレてるんですねぇ。さすが水都さん、頭がおよろしいです~」

光姫「ふん。わしには仲間も居るのでな」

鼎「お仲間、ですかぁ?」

光姫「そうじゃ。お主が吉音らと戦わせようとした柳宮十兵衛。やつはわしと志を同じくする無二の友じゃ」

悠「光姫さんと師匠が?」

確か犬猿の仲と噂されていたはずだ。

光姫「うむ。奴の行動は全てわしの耳にも届いておるし、逆もしかり。わしとやつは全て同じ目的で動いておったのじゃ」

詠美「同じ目的?」

光姫「わしらは初代生徒大将軍徳川出雲の命を受け、学園に入り込んだ邪悪の正体を追っておったのじゃ」

悠「その邪悪がこの……」

おれ達は一斉に飛鳥鼎だった女を見る。

光姫「…………」

光姫さんは無言に頷く。

鼎「どうやら水都さんのおっしゃる通り、これ以上は隠せ通せないようですねぇ。あ~あ、計画はここまで完璧だったのになぁ」

吉音「飛鳥先生……あなたは一体だれ?」

光姫「飛鳥鼎の名を語り、学園引いては日本を狙うオランダからの侵略者……エヴァ・ヨーステン!」

エヴァ「あはははははっっ!!!それで、私のことをどうするおつもりでしょう?」

飛鳥鼎、いやエヴァ・ヨーステンは嘲笑した。

銀次「もちろん詰みを償ってもらうぜ。学園の校則ではなく、外の世界の法律でな」

光姫「観念するんじゃな」

エヴァ「ふふ……ふふふ」

銀次「何がおかしい?」

エヴァ「私のことを捕まえられるおつもりなんですねぇ♪いいですよ、やってみたらいかがでしょうか?」

光姫「見苦しいぞ、エヴァ・ヨーステン。刀も持たずにこれだけの人数を相手に出来るとも思わんが?」

吉音や詠美も頷き、剣へと手をかける。

急にエヴァ・ヨーステンは眼鏡を投げ捨て、首元のネクタイを緩め始めた。

ネクタイを抜きとると、エヴァは大胆に襟を開いて豊満な胸の谷間をあらわにした。
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