ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【10】
ー大江戸学園:執行部室ー
「た、助けてください……」
か細い声に振り返ると執行部室の入り口からこちらを覗きこんでいる人影があった。
悠「……飛鳥先生?」
自らの肩を抱き、足を引きずるようにして倒れ込んできたのは飛鳥校長代理だった。
着衣がところどころ裂けた痛痛しい姿に思わず駆け寄る。
鼎「や、柳宮さんに……やられちゃいました」
悠「師匠……に?」
鼎「刀を渡せと脅されて突然……」
詠美「刀……もしやそれは将軍の剣ですか?」
鼎「はい」
飛鳥先生はすまなそうにうなずいた。
詠美「将軍の剣は前将軍の持ちだしたものとばかり」
鼎「あの、私が保管していました……お伝えしていませんでしたっけ?」
詠美「……初耳ですが。それで刀は?」
鼎「もちろん大切な刀ですからお渡しできませんってお断りしたんです。そしたら柳宮さんは斬りかかってきて無理矢理に……」
悠「ちょっと待て、師匠は執行部に協力してたんじゃないのか?」
鼎「あの、それは……雪那さんの乱の後に柳宮さんの方から接触がありましてぇ。面倒を起こされたくなければ執行部での席を用意しろと……」
悠「師匠が?信じられない」
おれは頭を振った。
鼎「柳宮さんは大変な野望に取りつかれているようなんです。将軍の剣を手に入れたのも自ら将軍の座につくためかもしれません」
悠「……」
鼎「実は吉音さんが詠美さんを倒して将軍の座を狙っていると、私に告げ口してきたのは柳宮さんなんです」
吉音「あたしはそんなこと……」
鼎「先生わかってます!こうして詠美さんと手を取り合う姿を見てたら、全部柳宮さんの仕掛けた罠だってちゃんとわかりますから!詠美さん、吉音さん。仲直りしたふたりにお願いがあります。どうか柳宮さんの手から刀を取り戻してください。」
詠美「……」
詠美は傍らの吉音の顔を覗きこむ。
吉音「……」
吉音も不安げな表情を返す。
鼎「学園の敵、柳宮十兵衛を倒して学園の平和を取り戻してください!小鳥遊さん!小鳥遊さんからもどうかお願いしてください」
飛鳥先生はおれの手を取り、懇願する。
悠「それは……」
ヒュン!
鼎「……!?」
何かが視界を横切った。
銀次「騙されんじゃないぜ、悠ちゃん」
悠「この声、風車……銀次!」
銀次「その通り!待たせたな、銀次様が帰って来たぜ」
ヤシチ『クマー!』
悠「ヤシ……椿姫も」
銀次「飛鳥先生、さっきまで足を引きずってたってわりには随分と身が軽いねぇ」
鼎「こ、これはその、突然風車を投げつけられて驚いたから……。いっ、痛たたた……。」
悠「あれ、壬月もとい光姫さんは?」
光姫「もちろん、おるわい。でかいのがふたりも前にならんどるから見えんだけじゃ」
銀次「ぉっと、こいつは失礼、お嬢」
ヤシチ『クマ~』
光姫「しばらくぶりじゃの、悠、吉音」
ひとりと一匹の後ろから現れたのはもちろん光姫さんだった。
吉音「ミッキーだ!」
詠美「光姫さん……」
光姫「詠美も。長く執行部を空けてすまなかったの」
詠美「すみません、私は……」
光姫「よいよい」
悠「執行部の予算を横領して追われたんじゃ……」
光姫「なんじゃお前まで信じておったのか?身内に信用がないというのは悲しいのぉ」
悠「いやいや、ミッキーがそんなことするわけないのは分かってますよ。ただ追われているのに出てきて大丈夫なのか……と」
光姫「この期に及んで誰がわしを捕まえるというんじゃ?詠美、わしを捕まえるか?」
詠美「そんな……」
悠「じゃ、どうしてこのややこしい時期に身を隠したりしてどうしたんですか?」
光姫「ちょっと調べものをな。別に遊んでいたわけではないぞ」
悠「遊んでたとは言ってないが……」
「た、助けてください……」
か細い声に振り返ると執行部室の入り口からこちらを覗きこんでいる人影があった。
悠「……飛鳥先生?」
自らの肩を抱き、足を引きずるようにして倒れ込んできたのは飛鳥校長代理だった。
着衣がところどころ裂けた痛痛しい姿に思わず駆け寄る。
鼎「や、柳宮さんに……やられちゃいました」
悠「師匠……に?」
鼎「刀を渡せと脅されて突然……」
詠美「刀……もしやそれは将軍の剣ですか?」
鼎「はい」
飛鳥先生はすまなそうにうなずいた。
詠美「将軍の剣は前将軍の持ちだしたものとばかり」
鼎「あの、私が保管していました……お伝えしていませんでしたっけ?」
詠美「……初耳ですが。それで刀は?」
鼎「もちろん大切な刀ですからお渡しできませんってお断りしたんです。そしたら柳宮さんは斬りかかってきて無理矢理に……」
悠「ちょっと待て、師匠は執行部に協力してたんじゃないのか?」
鼎「あの、それは……雪那さんの乱の後に柳宮さんの方から接触がありましてぇ。面倒を起こされたくなければ執行部での席を用意しろと……」
悠「師匠が?信じられない」
おれは頭を振った。
鼎「柳宮さんは大変な野望に取りつかれているようなんです。将軍の剣を手に入れたのも自ら将軍の座につくためかもしれません」
悠「……」
鼎「実は吉音さんが詠美さんを倒して将軍の座を狙っていると、私に告げ口してきたのは柳宮さんなんです」
吉音「あたしはそんなこと……」
鼎「先生わかってます!こうして詠美さんと手を取り合う姿を見てたら、全部柳宮さんの仕掛けた罠だってちゃんとわかりますから!詠美さん、吉音さん。仲直りしたふたりにお願いがあります。どうか柳宮さんの手から刀を取り戻してください。」
詠美「……」
詠美は傍らの吉音の顔を覗きこむ。
吉音「……」
吉音も不安げな表情を返す。
鼎「学園の敵、柳宮十兵衛を倒して学園の平和を取り戻してください!小鳥遊さん!小鳥遊さんからもどうかお願いしてください」
飛鳥先生はおれの手を取り、懇願する。
悠「それは……」
ヒュン!
鼎「……!?」
何かが視界を横切った。
銀次「騙されんじゃないぜ、悠ちゃん」
悠「この声、風車……銀次!」
銀次「その通り!待たせたな、銀次様が帰って来たぜ」
ヤシチ『クマー!』
悠「ヤシ……椿姫も」
銀次「飛鳥先生、さっきまで足を引きずってたってわりには随分と身が軽いねぇ」
鼎「こ、これはその、突然風車を投げつけられて驚いたから……。いっ、痛たたた……。」
悠「あれ、壬月もとい光姫さんは?」
光姫「もちろん、おるわい。でかいのがふたりも前にならんどるから見えんだけじゃ」
銀次「ぉっと、こいつは失礼、お嬢」
ヤシチ『クマ~』
光姫「しばらくぶりじゃの、悠、吉音」
ひとりと一匹の後ろから現れたのはもちろん光姫さんだった。
吉音「ミッキーだ!」
詠美「光姫さん……」
光姫「詠美も。長く執行部を空けてすまなかったの」
詠美「すみません、私は……」
光姫「よいよい」
悠「執行部の予算を横領して追われたんじゃ……」
光姫「なんじゃお前まで信じておったのか?身内に信用がないというのは悲しいのぉ」
悠「いやいや、ミッキーがそんなことするわけないのは分かってますよ。ただ追われているのに出てきて大丈夫なのか……と」
光姫「この期に及んで誰がわしを捕まえるというんじゃ?詠美、わしを捕まえるか?」
詠美「そんな……」
悠「じゃ、どうしてこのややこしい時期に身を隠したりしてどうしたんですか?」
光姫「ちょっと調べものをな。別に遊んでいたわけではないぞ」
悠「遊んでたとは言ってないが……」