ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【10】
ー大江戸学園:執行部室ー
触れれば切れるほどの冷気を纏う詠美。
近づくだけで燃えあがりそうな熱気を纏う吉音。
目に見えないせめぎ合い、その緊張が臨界を超え、爆発した。
詠美「はぁぁああああっ!」
吉音「てぇぇやぁぁぁああっ!!」
ふたりの剣が激突する。
大上段から渾身の力を込めて振り下ろされた吉音の太刀。
それを鋭く逆袈裟に振り上げられた詠美の太刀が受け止めた。
詠美「こうして……本気で刀をあわせるのは何年ぶりになるかしらね。つい先日の御前試合の時も、あなたは手加減をしていた……私相手に!嘘だとはいわせないわ!」
吉音「あたしは、詠美ちゃんに勝ってほしかったから……!」
詠美「誰がそんなことを望んだというの?そういう独りよがりの考えばかり持つから、それが容認されてしまうから……そんな人たちに語るような言葉は無いわ」
吉音「今はそんなの関係ないでしょ!ひとのことを悪く言ったり、人質にして罠を張ったり、それが良いことだと思ってるの!?」
詠美「それが効果的な方法であるなら、躊躇は無いわ。圧政で虐げることと、暴動で傷つけられること、どちらがより悪しきことかなんて判ずるまでもないわ」
吉音「こんなになんでもかんでも駄目駄目言われちゃ、生きていけないよっ!」
詠美「荒れ切った学園を立て直すには、多少強引でも強い力が必要なのよっ!」
ふたりは刀と同時に言葉をぶつけ、火花を散らし合う。
吉音「そうやって偉そうにしてるから、みんな怒るんじゃない!無理矢理言うこと聞かせて、それで平和だなんて、おかしいよ!」
詠美「自由にさせていればそれでいいの?どうしてここまで来てしまったのか考えなさい!」
悠「……」
将軍、吉彦さんが姿を消してから治安は悪化の一途をたどった。
その中で天狗党や五人組などが現れ、由比雪那を生みだし、混乱は学園島全土へと広がっていった。
それは確かに、誰もが認める事実だ。
事実ではあるけれど……。
詠美「誰かが統括しなければならない。出来る人がしなければ!そしてそれこそが、徳河の使命なのよ!」
詠美は、頑なに同じ主張を繰り返している。
吉音「そんなの誰が決めたの!」
詠美「誰でもないわ。学園の創設以来、ひいては危機に陥った日本が立ち直った時からそうなっているのよ。それも本来は、嫡流のあなたが率先しなければならないというのに!そうよ、最初からあなたが徳河の自覚を持っていれば、こんなに学園は腐ったりしなかった!」
吉音「そんなの知らない!勝手に決めないで!あたしはあたま悪いし、詠美ちゃんの方が似合ってる!それに詠美ちゃんだってやりたかったんでしょ?」
詠美「それでも、周囲から期待され続けたのはあなただった。その憐れみは何?何も持たない私に情けをかけているつもり?もう聞きあきたわ!」
吉音「どうしてそんなに歪めるの!そんなのあたし、望んだ事なんてない!」
詠美「それでも周囲は違ったといっているでしょう!私が認められるためには、私だけの力で、誰の目にも明らかな結果を残すしかないのよ!」
吉音「だから誰の言葉も聞かないで、いくつもひどい事を繰り返すの?おかしいよ!」
悠「……」
ふたりの戦いはまったくの互角。
身体の使い方はまったくといっていいほど違っているのに、剣筋は不思議と一致している。
吉音「徳河とか日本とかなんて関係ない!どうして皆で楽しくって考えないの!?」
詠美「関係ないなんて、よくもいえたものね。徳河一族の寵愛を一身に受けてきたあなたが!私から全てを奪っていったあなたが!」
吉音「奪った、って、なに?あたし何もしてないよ!」
詠美「突然私の家にやってきて、お父様もお母様も奪っていったでしょう!みんなあなたにばかり徳河の後取り、なんて最高の環境を与えて……私はただ添え物とばかりに、ずっとお花畑の中に押し込まれてばかりで!あなたさえ来なければ、私はこんな惨めな思いをしなくて済んだ……あなたが嫡流というだけでどうしてこんなに違うの?私のお父様と、お母様だったのに!」
吉音「詠美ちゃんも……詠美ちゃんもあたしのことわかってないよ!あたしは父様と母様だけじゃなくてお家もなにもかもなくしたのに、何でも持ってて可愛くて頭もいい詠美ちゃんがそんなこと言うなんて、贅沢だよ!あたしは……何もなくなって、詠美ちゃんの家にもらわれたとき、詠美ちゃんが居て嬉しかったのに嫌いならその時に言えばいいのに!」
詠美「嫌いでないものをどうして嫌いといえるの!?腐っても私も徳河よ。一族外からは神霊の如き特別扱いをされてきた。友人と呼べる友人なんて居なかったし、同年代との付き合いなんてないも同然だった。あなたが来たときは、姉妹ができたみたいに嬉しかったのに……!みんなみんなあなたをチヤホヤするばかりで、私には見向きもしてくり無くなった!」
吉音「あたしそんな事しなかったよ!ずっとずっと詠美ちゃんのこと大好きだっだよッ!」
詠美「それが耐えられないのよっ……!あなたが望んだことではない?そんなこと百も承知よ!それでも私は、あなたを許す事なんてできないっ!」
触れれば切れるほどの冷気を纏う詠美。
近づくだけで燃えあがりそうな熱気を纏う吉音。
目に見えないせめぎ合い、その緊張が臨界を超え、爆発した。
詠美「はぁぁああああっ!」
吉音「てぇぇやぁぁぁああっ!!」
ふたりの剣が激突する。
大上段から渾身の力を込めて振り下ろされた吉音の太刀。
それを鋭く逆袈裟に振り上げられた詠美の太刀が受け止めた。
詠美「こうして……本気で刀をあわせるのは何年ぶりになるかしらね。つい先日の御前試合の時も、あなたは手加減をしていた……私相手に!嘘だとはいわせないわ!」
吉音「あたしは、詠美ちゃんに勝ってほしかったから……!」
詠美「誰がそんなことを望んだというの?そういう独りよがりの考えばかり持つから、それが容認されてしまうから……そんな人たちに語るような言葉は無いわ」
吉音「今はそんなの関係ないでしょ!ひとのことを悪く言ったり、人質にして罠を張ったり、それが良いことだと思ってるの!?」
詠美「それが効果的な方法であるなら、躊躇は無いわ。圧政で虐げることと、暴動で傷つけられること、どちらがより悪しきことかなんて判ずるまでもないわ」
吉音「こんなになんでもかんでも駄目駄目言われちゃ、生きていけないよっ!」
詠美「荒れ切った学園を立て直すには、多少強引でも強い力が必要なのよっ!」
ふたりは刀と同時に言葉をぶつけ、火花を散らし合う。
吉音「そうやって偉そうにしてるから、みんな怒るんじゃない!無理矢理言うこと聞かせて、それで平和だなんて、おかしいよ!」
詠美「自由にさせていればそれでいいの?どうしてここまで来てしまったのか考えなさい!」
悠「……」
将軍、吉彦さんが姿を消してから治安は悪化の一途をたどった。
その中で天狗党や五人組などが現れ、由比雪那を生みだし、混乱は学園島全土へと広がっていった。
それは確かに、誰もが認める事実だ。
事実ではあるけれど……。
詠美「誰かが統括しなければならない。出来る人がしなければ!そしてそれこそが、徳河の使命なのよ!」
詠美は、頑なに同じ主張を繰り返している。
吉音「そんなの誰が決めたの!」
詠美「誰でもないわ。学園の創設以来、ひいては危機に陥った日本が立ち直った時からそうなっているのよ。それも本来は、嫡流のあなたが率先しなければならないというのに!そうよ、最初からあなたが徳河の自覚を持っていれば、こんなに学園は腐ったりしなかった!」
吉音「そんなの知らない!勝手に決めないで!あたしはあたま悪いし、詠美ちゃんの方が似合ってる!それに詠美ちゃんだってやりたかったんでしょ?」
詠美「それでも、周囲から期待され続けたのはあなただった。その憐れみは何?何も持たない私に情けをかけているつもり?もう聞きあきたわ!」
吉音「どうしてそんなに歪めるの!そんなのあたし、望んだ事なんてない!」
詠美「それでも周囲は違ったといっているでしょう!私が認められるためには、私だけの力で、誰の目にも明らかな結果を残すしかないのよ!」
吉音「だから誰の言葉も聞かないで、いくつもひどい事を繰り返すの?おかしいよ!」
悠「……」
ふたりの戦いはまったくの互角。
身体の使い方はまったくといっていいほど違っているのに、剣筋は不思議と一致している。
吉音「徳河とか日本とかなんて関係ない!どうして皆で楽しくって考えないの!?」
詠美「関係ないなんて、よくもいえたものね。徳河一族の寵愛を一身に受けてきたあなたが!私から全てを奪っていったあなたが!」
吉音「奪った、って、なに?あたし何もしてないよ!」
詠美「突然私の家にやってきて、お父様もお母様も奪っていったでしょう!みんなあなたにばかり徳河の後取り、なんて最高の環境を与えて……私はただ添え物とばかりに、ずっとお花畑の中に押し込まれてばかりで!あなたさえ来なければ、私はこんな惨めな思いをしなくて済んだ……あなたが嫡流というだけでどうしてこんなに違うの?私のお父様と、お母様だったのに!」
吉音「詠美ちゃんも……詠美ちゃんもあたしのことわかってないよ!あたしは父様と母様だけじゃなくてお家もなにもかもなくしたのに、何でも持ってて可愛くて頭もいい詠美ちゃんがそんなこと言うなんて、贅沢だよ!あたしは……何もなくなって、詠美ちゃんの家にもらわれたとき、詠美ちゃんが居て嬉しかったのに嫌いならその時に言えばいいのに!」
詠美「嫌いでないものをどうして嫌いといえるの!?腐っても私も徳河よ。一族外からは神霊の如き特別扱いをされてきた。友人と呼べる友人なんて居なかったし、同年代との付き合いなんてないも同然だった。あなたが来たときは、姉妹ができたみたいに嬉しかったのに……!みんなみんなあなたをチヤホヤするばかりで、私には見向きもしてくり無くなった!」
吉音「あたしそんな事しなかったよ!ずっとずっと詠美ちゃんのこと大好きだっだよッ!」
詠美「それが耐えられないのよっ……!あなたが望んだことではない?そんなこと百も承知よ!それでも私は、あなたを許す事なんてできないっ!」