ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【10】

ー大江戸学園:大江戸城門前ー

朱金「くぅ……。助かったぜ、皆。あと、えーと?」

魁人「魁人です。小鳥遊くんの友人みたいなものなので味方と思ってください。あっちにいるのはバカ……じゃなくて伊万里です。」

伊万里「はあぁぁぁ!」

どういう技術なのかは不明だが大魔神を無視して木偶を次から次へと焼いたりブチ壊していっている。男をちらりと見た。

朱金「そうか。」

真留「それよりもさっきの大魔神の動きって!」

朱金「ああ……どうやら、ただのデカブツってわけじゃねぇようだな」

油断があったわけじゃない。しかし相手は所詮カラクリだと高を括っていたのも事実。

力任せの攻撃はできても、細かい動作は無理だと思いこんでいた。

輝「ふふふ!どうだいおいらの大魔神は!」

白フード「……」

朱金「そいつ本当にカラクリだろうな?中に馬鹿でかい人間が入ってるってオチはなしだぜ?」

先ほど大魔神が見せた剣技は、そんな疑いを持つには十分なほど人間味がある動きだった。

輝「大きくはないけどね。中に人間が入ってるってのは大当たりだよん。」

真留「どういうことですか?」

輝「大魔神のコアにはね、なななーんと!生きた人間が使われているのだ!」

朱金「生きた人間……だと?」

驚きに目を丸くする朱金。

輝はそんなことお構いなしに、お気に入りの玩具を自慢するかのように朗々と語る。

輝「大魔神の性能はコアの能力に左右されるからねぇ。相性のいい人間を探すのは苦労したよ」

はじめ「……つまり、さっきの剣技は」

朱金「コアになってる人間のものってか。……どうりで動きが人間くさいわけだぜ。」

輝「分かってもらえたところで!第二幕、スタート!」

真留「来ます!」

ひと息で間合いを詰めながら刀を振り抜く大魔神。四人は慌てて体勢を立て直して回避を図ろうとするが……

朱金「っぅぅぅ!」

朱金はその場にひざをついてしまう。

直撃ではなくとも大魔神の攻撃が至近で炸裂したのだ。そのダメージが朱金の動きをほんの一瞬遅らせた。

だが、その一瞬が命取り。

大魔神の刀が今まさに届こうとした瞬間……大地が揺れる。

真留「な、何ですか!地震!?」

地面が揺れ、大魔神も朱金と同じように膝をついた。

「ダイちゃんぐっじょぶ。せーの、あたーーーっく」

のんびりとした声とともに、ひとつの人影が朱金と大魔神の間に躍り出た。

声の調子とは裏腹に、その速さは神速。大魔神ですら反応できぬ速度で強烈な一撃を叩きこむ。

片膝をついていた大魔神がバランスを崩す。

そして……大魔神が尻もちをついて倒れた。

朱金「…………は?」

あり得ないものを見たかのように朱金の目が見開かれる。

自分達がどれだけ押してもビクともしなかった大魔神が、たった一撃の打ちこみで尻もちをついたのだ。

驚くなという方が無理な話しだ。

伊都「あらあら、思ったよりも大したことありませんのね。」

「「「……」」」

しかし、その偉業を成し遂げた本人は拍子抜けだというように息を吐くと、気負いもなく朱金達に振り返った。

伊都「ごきげんよう。50万円に釣られて参上。あなたの町の何でも屋、拝神夜ですわ。」

真留「拝神様!?どうしてここに!」

伊都「お人形遊びするだけで50万円もらえる楽なアルバイトがあると聞いて飛んできたのですわ」

真留「お人形遊びって……」

真留の視線が倒れたままの大魔神に向けられる。

伊都「う~ん、わたくしとしてはもうちょっと可愛いお人形がよかったのですが……ねぇダイちゃん」

真留「えーっと?」

相変わらずの伊都のペースについていけなくなった真留の変わりにはじめが歩み寄る。
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