ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【10】

ー大江戸学園:大江戸城門前ー

悠「ずぉっ?!な、なにが……?」

ずっこけるのを何とか踏みとどまって後ろに振り返る。

魁人「やぁ、遅れたね。」

伊万里「……」

悠「魁人と伊万里」

伊万里「気安く名前を呼ぶなッ!」

怒声とともに奴の近くで蠢いていた木偶が炎上した。

悠「えぇ……名前呼んだだけで怒られた」

魁人「この阿保のことは無視してくれていい。それより、コイツらは任せて君たちは行ってくれ。状況は……そういう感じなのだろう?」

悠「……すまん、助かる!」

せっかく皆が作ってくれたチャンスだ。おれたちは走り出す。

吉音「みんな頑張ってね!」

悠「一気に行くぞ!」

吉音「うん!」

輝「あらら、抜かれちゃった」

白フード「……」

朱金「へっ、残念だったな」

悠たちが城門の中へと走り抜けたのを確認し朱金が安堵の息を吐いた。

輝「まぁいいけどね。それより、ここからが本番だよ」

身長でいえばざっと三倍以上。改めてみるまでもなく、普通の人間と大魔神とではその大きさが違い過ぎる。

その大魔神が刀を抜き放ち構えをとった。

カラクリから発せられるとは思えぬほどの気迫に、全員の額から冷や汗が流れおちる。

はじめ「……凄い威圧感だ」

朱金「こっちも気合入れていくぜ」

魁人「突然の参戦ながら了解です」

真留「負けません」

誰もが息をのむ中、最初に動いたのは大魔神だった。

大魔神【……!】

朱金「来るぞ!」

振り下ろされる剛剣を潜りぬけるように回避した朱金は、先ほどと同じように大魔神の懐に入り込む。

そして先ほどと同じような一閃。

朱金「せえぇぇぇぇい!」

大魔神【……!】

ガギィィン!
朱金「なんだとっ!」

しかし結果は先ほどとは違っていた。

流れるような動作で刀を引き戻した大魔神が、朱金の一撃を受け止めたのだ。

そのまま朱金の身体を弾き飛ばす。

真留「遠山様!」

魁人「おっと!」

魁人が吹き飛んだ朱金を受け止めた。

はじめ「……まずいっ!」

しかし、バランスを崩したままの朱金と魁人に向かい、大魔神の凶刃が迫る。

真留「ガラッ八!」

伊万里「チィッ!」

ガラッ八の攻撃と伊万里の炎撃に少しだけ刀の起動が少しだけ逸れる。

その瞬間を見逃さず、仕込み杖を構えたはじめが白刃の前に躍り出た。

はじめ「しゃぁぁっ!」

切り結ぶだけでなく、居合いによって刀の横腹を打ちつける。

三人の攻撃で何とか人ふたり分逸れた大魔神の一撃が、タイル張りの地面を打ち砕く。

魁人「ぐぅっ!」

朱金「ぐわぁぁ!」

真留「ううぅぅ!」

はじめ「……っく」

直撃は避けたと言っても、四人は衝撃で吹き飛ばされて地面を転がる。
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