ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました

ー養成所ー

悠「仕方ない。今日は…」

英恵「あ……」

悠「アンタも見舞いか?」

英恵「はい。昨晩はお世話になりました。」

新「大変だったね。どう、永太くんの様子は?」

英恵「今は少し眠っています。起こしたほうがいいでしょうか?」

悠「いや、いいよ。休ませてやってくれ。(さっき、かなうさんに怒られたところだし。)怪我の状態は?」

英恵「おかげさまで。刀舟斎先生がよく視てくださったので」

かなう「医者が出来る治療は全部終わっている。あとは安静にしておくことだ。」

英恵「はい」

かなう「なのにあいつらときたら……」

新「ねぇねぇ、永太君はどうして仲間だった天狗党からあんな目にあわされちゃったの?」

英恵「わたしのせいなんです」

悠「どうゆうことだ?」

英恵「永太さんは真面目で正義感の強い人なんです。天狗党に入党したのだって本当に世直しが出来るって信じていたから。でもわたしには学園に火をつけるような人たちが世の中をよくしてくれるなんて思えませんでした。だからわたしは永太さんに天狗党をやめるようにお願いしました。」

悠「でも彼は聞かなかった。」

英恵「せめて罪を犯す前にと奉行所に相談しようとしたんですが…」

新「それがばれちゃったんだね。」

英恵「はい」

悠「以前、うちの店に二人で来てくれたことがあったよな」

英恵「はい」

悠「そのとき彼がいい暮らしをさせてやるとかなんとかいってなかったか?盗み聞きするつもりは無かったんだけど客がいなくてひっそりしてたもんだからつい」

英恵「はい、天狗党の首領がやんごとなき身分の方で世直しが成功した暁には、自分も役職に取り立ててもらえるんだって永太さんはいってました」

悠「やんごとなき身分?」

かなう「この大江戸学園でやんごとなき身分といえば決まってるだろう」

悠「どういうことだ?」

かなう「はぁ?徳河家に決まってるだろう」

新「っ……」

悠「徳河ってここじゃそんなに力があるのか?」

かなう「なんだ、お前さん、余所者か?」

悠「まぁ、最近いろいろあって来たばかりだ。」

かなう「生徒外か珍しいな。…一応公立とはなっているが、事実上大江戸学園は創始者一族である徳河家の支配下にある。実際、学園の代表者である将軍職には学園創始以来徳河家以外の者がついたことはない」

悠「へえ」

かなう「学園の常識だぞ。なぁ?」

新「え、あ、うん、そうだね」

かなう「つまり永太のいってることが本当ならちっとばかし厄介な話になるってことだ。とにかく、うかつにゃ手出しが……おっと、患者が呼んでるようだな。」

悠「じゃ、おれたちもおいとまするか」

英恵「あの…今日はありがとうございました」

悠「永太によろしく」

新「お大事にね」

英恵「はい!」
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