ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【10】

ー大江戸学園:かなうの養生所ー

雪那「小鳥遊さん…?」

悠「ふぁい?!なんでしょうか?」

雪那「どうしましたか?先ほどから少し様子が……あっ」

いきなり挙動不審になったおれを心配して振り返った由比さん。その視線が一点で止まる。

悠「おぅっ……申し訳ない」

羞恥より申し訳なさが先に立ち、由比さんの顔を直視できない。

雪那「いえ……ですが……」

すぐにでも大きな反応が返って切るかと思ったが、由比さんの態度はそんな淡々としたものだった。

それどころか、何かを考えるような表情で黙りこむ。

悠「あの、由比さん?」

雪那「……小鳥遊さん、失礼します」

そして、突然由比さんはおれの股間へと手を伸ばしてきた。

由比さんの動きはうまりにも予想外過ぎて、とっさに避ける事すらできなかった。

悠「由比さん!?いったいナニを!」

雪那「いえ、よく分かりませんが、こうすればお礼になるかと思いまして」

悠「お礼って……」

もしかして汗を拭いてあげたことをいってるのか?でもそれだけのためにこんなこと……。

雪那「こんな私に優しくして下さってありがとうございます。今の私にはこのくらいの事しかできませんが、ぜひともお礼をさせていただけませんか?」

一瞬身を突き放そうかとも考えたが、由比さんの瞳の奥に真剣な光を見て、身体が動かなくなってしまう。

悠「由比さん……お願いしても、いいですか?」

雪那「ええ」

おれが提案を受け入れたことに、由比さんの表情が少しだけ綻んだ気がした。





ー新宿:茶屋小鳥遊堂ー

左近「ここが小鳥遊さんのお店ですよ」

魁人「へぇ、小ぢんまりしてるけど趣があるお店ですね。」

左近「しかし、どうどうと尋ねてよかたんですかい?」

魁人「顔が割れてるわけでもないし、一応どんな人なのか見てみたかったんだけど……」

左近「閉まってますねぇ。」

魁人「定休日?」

左近「いいえ、ここは年中無休……ってこともないですね。酷い時は三、四日連続で店閉めてうろうろしてるときもあるみたいだし」

魁人「お店としてどうなのソレ」

左近「どうなんでしょうねぇ」

魁人「中にもいないのかな。」

「いないぞ」

左近「おや?」

寅「もう何があっても驚かないと思ったが……まさか、アンタらがつるんでるとは驚きだ」

魁人「あぁ、若寅君」

左近「わかとら?」

寅「……あんたこんなところで何してるんだ。ここの生徒じゃないだろ」

魁人「ちょっとわけありでね。左近君に頼んで侵入させてもらったんだ。」

左近「いやいや、私はただ荷物の船を手配しただけなんで。それにまさか侵入者がいたなんて思わないじゃないですか」

寅「そんな台詞はいてもお前が手引きしてるのはバレバレだからな」

左近「なんのことやら」

寅「……こんなところで顔を合わせたってことは、目的は悠か」

魁人「半分はそうかな」

寅「もう半分は?」

魁人「んー……世界平和のため、かな」

寅「あん?」

「その話しもう少し詳しく聞かせてもらおうかしら」

左近「おやおや、アナタもご一緒でしたかぁ」

魁人「彼女は?」

久秀「松永久秀。小鳥遊悠の主人かしら」

魁人「ほう」

寅「おいおい……」
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