ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【10】

ー大江戸学園:かなうの養生所ー

雪那「……ごめんなさい」

悠「わかった、お拭きしますよ。おれでよければ……」

雪那「ああ……ありがとうございます」

悠「……」

雪那「そ、それでは……よろしくお願いします。」

悠「いやー、こちらこそ。失礼します」

手ぬぐいを持って由比さんの背後に回る。

着物がびしょびしょになるほとせ汗をかいているはずなのに、由比さんの身体からはほのかにいい香りがした。

女の人特有の甘くて痺れるような……

雪那「小鳥遊さん?どうかしましたか?」

悠「あー、いや、色が白くて綺麗だったんで見惚れてました」

雪那「っ……や、やめてください、そんなお世辞」

んー、本気だったんだが。

でも、下手な事をいって余計参らせてもダメだな。

悠「……それじゃ由比さん、いきますよ」

最初は首筋へと手を伸ばす。

雪那「……んっ」

手拭いが肌に触れると由比さんの身体が一瞬ぴくっと跳ねあがった。

悠「力加減、こんな感じで大丈夫ですか?」

雪那「んっ……はい、問題ありません」

悠「それはよかった……じゃあ続けますね」

いやーこういうのも楽しいなぁ……じゃなくて、由比さんが気持よさそうでよかった。

首筋から汗を拭っていく。

雪那「んぁ……ふぅ、……んっ……っひゃう!」

不意に由比さんが甲高い声をあげた。

悠「あ、えと……すんません。」

慌てて由比さんから手を離す。

雪那「い、いえ!少しくすぐったかっただけですから……」

普段の冷静な声色からは想像もつかないはかなげな声だった。

悠「……」

雪那「私、首筋が弱くて……ですから、あの、……気にしないでください」

由比さんの横顔は控え目にいって真っ赤に染まっていた。

普段涼しげな表情が多い分ギャップが凄い。

悠「ゴクッ」

雪那「続きを……お願いします」

悠「……分かりました」

おれの返事を受けて由比さんは自分から着物をはだけた。

背中は大きく開かれ、肩を完全に露出していた。

その名に恥じぬ雪のような白さの由比さんの肌。舐めたい……もとい、見とれてしまう。

おれは、ガラス細工でも扱うかのような慎重さで由比さんの背中に手を伸ばした。

雪那「んぅ……はぁ、ふぁ……んぅ……」

由比さんの背中に触れてみると、その華奢さに驚いた。

塾の先生として、乙級の生徒たちに勉強を教える由比さん。

学園の改革を訴え、幕府に反旗を翻した由比さん。

この小さな背中でいったいどれほどのものを背負ってきたんだろうか。

そうだよな、由比さんだっておれ達とそう歳も変わらない女の子なんだよな……。

そんな当たり前の事実に気が着いた時、目のまえの背中を直視するのがたまらなくなってしまった。

悠「あの……くすぐったくないですか?」

雪那「ええ、ちょうどいいですよ……んっ、気持いいです、ふふ」

悠「……」

肩越しに淡く微笑む由比さんの横顔に心臓が跳ねあがる。

弱っているがゆえの艶っぽいしぐさに、ふしだらな欲望が湧きあがってくる。

滾る欲望は確かな熱を持って身体の一部へと集まっていく。
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