ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【10】
ー大江戸学園:かなうの養生所ー
一夜明けた次の日、店の店を開けてしばらくぼーっとしていたが吉音は顔を出さなかった。
多分、遅くても数日内には動くことだろう。その時が来るまでおれはおれのできることをしておこうと思って、かなうさんの養生所を訪ねた。
目的は由比雪那のお見舞いだ。敵対したとはいっても、話しを聞けば由比さんも被害者のようなものだ。一応、顔を出しておくのが礼儀だろう。
かなう「奥の部屋だついてきな」
そういって奥の部屋に向かうかなうさんの後について行く。
布団がひとつ床に敷かれた養生所の奥の間。彼女はひとりとこについている。
悠「由比さん?」
呼びかけに答えはない。どうやら眠っているようだ。
寝息に時折苦しそうな喘ぎが混じって聞こえている。
かなう「ひと通り治療はしたが、とにかく体力が落ちてるからな。まだ自分ひとりじゃ満足に動けもしない状態だ」
眠る由比さんの手首を取り脈を計るかなうさんの表情はやや暗い。
悠「……」
かなう「だが、問題は身体じゃないんだ。心が弱り切っちまってる」
悠「心……」
かなう「ああ。眠るたびにこうやって魘されてやがる。どうにかしてやりたいが、こればっかりはな……それで、どうする?起こすか?」
悠「いや、寝かせておいてあげましょう」
かなう「いいのか?」
悠「今、無理をさせてもしょうがないですしね」
見舞いついでに何か聞ければと思ってはいたものの、この憔悴しきった姿を見たらさすがにな。
かなう「そうか。しばらくしたら目を覚ますかも知れんしな。私まだ仕事が残ってるから
ここを離れるが。なんかあったら呼んでくれ」
悠「あ、はい。分かりました」
一緒に出ても良かったんだけど、何となく残ってしまった。
かなうさんの背中を見送りながらおれは由比さんの隣に腰を降ろした。
改めて近くで見る由比さんの顔は思った以上に弱弱しく、あの凛とした由比さんの面影はない。
雪那「ぅっ……ううっ…………っ」
眉根を寄せ苦しそうな表情。額には大粒の汗が浮かんでいた。
悠「由比さん……」
見かねて枕元の手拭いで額の汗をぬぐう。
雪那「……っ」
その瞬間、由比さんの目がぱちりと開いた。
身を乗り出していたせいで正面から見つめ合う形になってしまう。
悠「……」
雪那「…………小鳥遊、さん?」
悠「あー……汗をかいてたから」
雪那「…………」
手に持った手拭いをぱたつかせて取り繕うおれを表情もなく見上げている由比さん。
悠「こ、こんにちは」
雪那「あ、あの私……今起きたばかりなんですが……」
悠「じゃ、じゃあ、おはようございます?」
雪那「あの、小鳥遊さん……近いです、少し離れていただけますか?」
悠「あっ、すみません!」
慌てて身体を離す。気分的になんとなく正座してしまう。
その間、雪那さんは枕元にある眼鏡を取ろうと上体を起こしかけたのだが……。
雪那「く……っ」
それは叶わずへなへなと布団の上にくずおれてしまう。
一夜明けた次の日、店の店を開けてしばらくぼーっとしていたが吉音は顔を出さなかった。
多分、遅くても数日内には動くことだろう。その時が来るまでおれはおれのできることをしておこうと思って、かなうさんの養生所を訪ねた。
目的は由比雪那のお見舞いだ。敵対したとはいっても、話しを聞けば由比さんも被害者のようなものだ。一応、顔を出しておくのが礼儀だろう。
かなう「奥の部屋だついてきな」
そういって奥の部屋に向かうかなうさんの後について行く。
布団がひとつ床に敷かれた養生所の奥の間。彼女はひとりとこについている。
悠「由比さん?」
呼びかけに答えはない。どうやら眠っているようだ。
寝息に時折苦しそうな喘ぎが混じって聞こえている。
かなう「ひと通り治療はしたが、とにかく体力が落ちてるからな。まだ自分ひとりじゃ満足に動けもしない状態だ」
眠る由比さんの手首を取り脈を計るかなうさんの表情はやや暗い。
悠「……」
かなう「だが、問題は身体じゃないんだ。心が弱り切っちまってる」
悠「心……」
かなう「ああ。眠るたびにこうやって魘されてやがる。どうにかしてやりたいが、こればっかりはな……それで、どうする?起こすか?」
悠「いや、寝かせておいてあげましょう」
かなう「いいのか?」
悠「今、無理をさせてもしょうがないですしね」
見舞いついでに何か聞ければと思ってはいたものの、この憔悴しきった姿を見たらさすがにな。
かなう「そうか。しばらくしたら目を覚ますかも知れんしな。私まだ仕事が残ってるから
ここを離れるが。なんかあったら呼んでくれ」
悠「あ、はい。分かりました」
一緒に出ても良かったんだけど、何となく残ってしまった。
かなうさんの背中を見送りながらおれは由比さんの隣に腰を降ろした。
改めて近くで見る由比さんの顔は思った以上に弱弱しく、あの凛とした由比さんの面影はない。
雪那「ぅっ……ううっ…………っ」
眉根を寄せ苦しそうな表情。額には大粒の汗が浮かんでいた。
悠「由比さん……」
見かねて枕元の手拭いで額の汗をぬぐう。
雪那「……っ」
その瞬間、由比さんの目がぱちりと開いた。
身を乗り出していたせいで正面から見つめ合う形になってしまう。
悠「……」
雪那「…………小鳥遊、さん?」
悠「あー……汗をかいてたから」
雪那「…………」
手に持った手拭いをぱたつかせて取り繕うおれを表情もなく見上げている由比さん。
悠「こ、こんにちは」
雪那「あ、あの私……今起きたばかりなんですが……」
悠「じゃ、じゃあ、おはようございます?」
雪那「あの、小鳥遊さん……近いです、少し離れていただけますか?」
悠「あっ、すみません!」
慌てて身体を離す。気分的になんとなく正座してしまう。
その間、雪那さんは枕元にある眼鏡を取ろうと上体を起こしかけたのだが……。
雪那「く……っ」
それは叶わずへなへなと布団の上にくずおれてしまう。